2011年5月20 の記事一覧

5月20日

 「サツキさよなら」 という新聞記事を見た。大地震の日、カバは驚きでからだが、動かず、足をネンザ。体重2.5トンもある動物は、自分の足で立てないと内臓が圧迫され、死に至ったという。 上野動物園に行ってみよう、と思った。
 以前、動物園の獣医さんに話を聞いたことがある。カバには上顎の犬歯が入る刀のサヤのような窪みが、下顎にある。ワラなどのエサが、その窪みにつまって、炎症を起こすことがある。そのときは、人間の歯痛と同じように、寝そべってフーフーいっている、というのである。歯の痛みにはソクラテスも泣いた、といいますからねえ、と二人で笑った。カバとソクラテス !
 動物園に行くと、オリの脇に献花台があった。死んだカバの名前はサツキ。5月20日が誕生日だから、その名がついたのだろう。39歳だった。
 地震の日、風土社のあるビルも、弄ばれるように揺れた。ビルの前の小学校も公園も、避難の人であふれた。まだ、寒い日だった。あれから、サクラが咲き、ツツジが咲き、いま公園は緑である。あの地震の時、カバは、なにを思ったのだろう。それは、わからない。
 わかるのは、やがて夏がくる、ということだ。

カバのサツキ