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サヨナラ La Cage

La Cage

 

一通の手紙か。届いた。
La Cage  波田野さんからだった。

西荻窪駅の南口を出て線路側の道を荻窪方面に向かって歩いてすぐ  、ミドリの滴る店がある。そこが波田野さんのアンティークショップだ。
中に入ると、大きなしゃれた鳥かごが、下がっている。そして、たくさんのアクセサリー、服など、並ぶ商品の奥に、ミシンを前にして波田野さんは座っている。そうして、一日中、服の繕いなどをしながら、お客さんを待っている。
五年前、インタビューをした。「お休みの日は?」と聞くと「休みはありません」という返事。この店を始めるとき、ある方から「店を始めたら、3年間は休んではダメですよ」というアドバイスを受け、それを守ってきた結果だという。「だって私、ここにきて座っているだけですもの、元日でも開けています」。
不景気風が吹いてきていることは、聞いていた。その手紙には、……体力、気力のあるうちにと、2月を目処に閉店することにしました。長いような短いような27年間でした。……   とあった。お疲れさまでした。

 


シス書店、企画展 101!

網代幸介「霧の中で」展

網代幸介「霧の中で」展

 

JR 恵比寿駅を降りて、ダラダラ坂道をのぼり、シス書店へ行く。以前は、もう少し先の 古びたビルの一室だった。あれもなかなかよかった、と、歩きながら、そんなことを思い出すのは、今回の企画展が、記念すべき101回目と聞いたからだ。このギャラリーは「広場」とも、けっこう長いお付き合いになる。
101回目企画展は、網代幸介「霧の中で」。
1回目の企画展は、野中ユリ「夢の結晶力」であったという。それが2010年のこと。
「あっという間に、13年」と、店主のSさんは、唄うように言った。Sさん、あいかわらず、明るく元気だが、やはり、コロナの影響はきびしく。お客さんの数も減少、年齢層にも変化があり、さて、これからどう運営、展開していったらいいか、思案の最中だという。
早く、霧の晴れることを祈ります。

網代幸介「霧の中で」展は、10月23日まで。

 


サヨナラ ぬりえ美術館

ぬりえ美術館

 

東京・町屋にある「ぬりえ美術館」が、10月30日で閉館するという。昭和20年ころから、少女たちに親しまれてきたぬりえ文化を、伝えてきた。この「広場」でも、お仲間として、ご紹介してきた。さみしい。日本のぬりえの第一人者として、活躍した蔦谷喜一さんへの生前のインタビューを、掲載して、お別れとしたい。(中公新書『商売繁盛』から)

〈   ……  えーと、だいぶ前のことなので、そのたびに思いださないといけない…… 昭和15年、でしたかねえ、画の学生だったんですけど、アルバイトみたいのを探してまして、友人が描いてみないかと、自分にはあわない、君なら、あうと言われましてね。なんでしたっけねえ、藤娘なんかを描きましたかねえ。それ“ きいち”という名前じゃなくて、漱石の『虞美人草』から“ふじお”にしました。それで、戦争で、一時中止になって徴用に行ったりなんかして、戦争が終わりまして、また描きはじめたんです。昭和22年に“きいち”という本名で、こんどは、印刷もやって自分で自転車につけて、蔵前におろして歩きましたよ。「おとぎ絵」というタイトルをつけて、外国のおとぎ話の絵を描いたりいたしましてね。なにがよかったんだか、「きいち」、「きいち」と騒がれて、なにがよかったのかって、自分ではギモンなんですけどね。……〉        (つづく〉


『版画×写真 1839~1900』展のご案内

町田市立国際版画美術館『版画×写真 1839~1900』展

 


〈19世紀に登場した写真は世界を大きく変えました。とりわけ大きな影響を受けたのが、イメージを写し伝えるという同じ役割を担っていた版画です。この時代の版画と写真の関係は、これまで対立ばかりが語られてきました。しかし初期の写真の技術はまだまだ不十分で、両者は補い合う関係でもありました。……本展ではヨーロッパを中心に、版画と写真に加え、カメラや撮影機材をはじめとする関連資料180点により、その表裏一体の関係を探ります。〉
というのが、パンフレットに書かれた趣旨である。
その横のコピーが わかりやすい。

「支えあい、競いあった   二つの芸術」

この『版画×写真  1839~1900』展は、町田市立国際版画美術館で、10月8日から12月11日まで 開かれる予定です。

 


『アーツ・アンド・クラフツとデザイン』展へご案内

アーツ・アンド・クラフツとデザイン

 

ウィリアム・モリスからフランク・ロイド・ライトまで - というサブタイトル。展覧会のパンフレットに、いう。

〈   モダンデザインの父 - ウィリアム・モリスは、こう呼ばれています。しかし、彼の代名詞ともいえる草花や小鳥をモチーフにした文様や中世を思わせる重厚なデザインは、その呼び名におよそ似つかわしくないように思えます。ではなぜ、モリスが「モダンデザインの父」なのでしょうか?
モリスの生きた19世紀のイギリスは、大英帝国の絶頂期。近代化も著しく進んだ時代です。多くの人がそれを謳歌する一方で急速な近代化に危機感を抱く人々もいました。例えば、評論家のラスキンは職人の手仕事に支えられた中世の建築を賛美し、ラファエル前派の画家たちはラファエロ以前の古風な描き方を目指します。そんな思潮が高まる中、モリスが見つけたのは室内装飾の道でした。…… 〉

「暮らしのデザインのはじまり」というコピーも、読める。

『アーツ・アンド・クラフツとデザイン』展は、府中市美術館で開かれている。12月4日まで。


竹は厄介者ではない

『チルチンびと』113号「竹を厄介者にしてはいけない」

山口瞳


『チルチンびと』113号「竹を厄介者にしてはいけない」(鳥居厚志)という記事を読んだ。その部分を抜粋させていただく。……

モウソウチクは、江戸時代以降に株分けによって各地に植え拡げられたと考えられますが、その多くは明治以降、さらに言えば食糧増産のために昭和時代に多く植栽されたようです。ところが、1970年代に外国から安価な筍が輸入されるようになり、筍の生産竹林は次第に放置されるようになりました。生産を放置しても竹自体は消滅するわけではありません。しかも、果樹など他の作物と違い、竹は地下茎を四方八方に伸ばして節から筍を出して分布を拡げるという雑草のようだ性質があります。……このように、放置された竹が勝手に分布を拡大し周囲の植物を枯らす現象が観察される……というのである。

竹が厄介者になる仕組みを読んでいるうちに、『萬葉集』大伴家持の歌か浮かんできた。この歌は、山口瞳さんの作品にも登場。そうしたご縁でか、山口さんは色紙にも書かれている。

わが宿のいささ群竹吹く風の音のかそけきこの夕べかも

竹が、厄介者であるはずがない。

 

『チルチンびと』秋  113号

『チルチンびと』秋113号は、好評発売中です。お早めに書店へ !


残暑の折、「小笠原からの手紙」をお届けします

小笠原からの手紙

 

9月、とはいえ、まだまだ 暑さも厳しい。磯の話題など、いかが。『チルチンびと』秋 113号から、「小笠原で海藻ウオッチング」(新行内  博)をご紹介。こんな書き出しで、始まる。
〈  小笠原の磯で「海藻を見ています」と言うと、よく「食べられますか?」と聞かれます。答えにくいのですが、「食べられないことはないけれども、美味しくなさそうなので私は食べません」というのが正直なところです。海がきれいなのは言い換えれば貧栄養ということで、海藻がそれほど大きくはなりません。小さいので、摘んで食べればどうしても岩への付着部分が残ります。加えて体内に石灰を含む種類が多いので、あまり食べたくありません。見ている方が好きです。〉
そして、つぎつぎと海の中で見える“  海藻風景  ”  を教えてくれる。涼味満点。

『チルチンびと』秋  113号


『チルチンびと』秋  113号は、特集「庭」、特集「首都圏の移住」。9月9日から全国書店で好評発売中。


新版画は、いかが

「新版画」展

 

川瀬巴水・吉田博・伊東深水  -世界を魅了した木版画   というサブタイトルが、ある。。そして、展覧会のパンフレットに、こういう解説も。
〈 新版画とは、江戸時代に目覚ましい進化を遂げた浮世絵版画の技と美意識を継承すべく、大正初年から昭和のはじめにかけて興隆したジャンルです。伝統的な彫りや刷りの技術に、同時代の画家による清新な表現を合わせようとした版元・渡邊庄三郎〈1885~1962)の試みに始まりますが、昭和に入っていくつもの版元が参入し、大きな流れとなりました。〉
ということである。
進化系  UKIYOE  の美 というコピーも見える。

この「新版画」展は、千葉市美術館で、9月14日から  11月3日まで、開かれる予定です。

 


庭という天国

ベニシアと正 2

 

以前からの ベニシアさんファンで『ベニシアと正 2』も、早速、購入。とっくに読み終えたというひとに会った。本に散りばめられたベニシアさんの言葉が、かわいかったという。たとえば? 「 庭は天国に一番近い場所。この言葉は、作者不詳、とありますが、いやいやベニシアさんの実感でしょ」
別れて帰って、『ベニシアと正 2』の110ページを開いてみた。
〈 今も私は毎日、静寂の時間を作っている。庭に行って目を閉じて、深呼吸をする。頭の中から考えごとを追い払い、一瞬のときをそのまま感じ取り、果てしない美しさと生きている奇跡に感謝する。〉
という文章がある。
夏草の繁った大原の庭が、こちらの頭の中にもひろがってくる。

………

『ベニシアと正 2 -青春、インド、そして今-』(風土社刊)は、好評発売中! お早めに書店へ!

 

ベニシアと正 2 -青春、インド、そして今-


ベニシアさんの指輪

『チルチンびと』夏 112号「ベニシアと正」

 

『チルチンびと』夏 112号の「ベニシアと正」は、「きつい指輪を外してあげよう」という、話題だった。左手の薬指に一つ、右手の中指に二つ。これが、痛いので外してほしいというベニシアさんの要求に、梶山さんが奮闘する。この話は、「ベニシアと正 2』にも、顔を出す。その記事に、指輪外しには消防署がいい、と書いてあった。それで、思い出した。以前、指輪切ります、という話を消防署に取材したことがあった。そのときの話を、メモから……。

〈ほとんどの人が、結婚とか婚約とかの、大事な指輪なんですね。ですから、リングカッターで切るのですが、切ってもいいんですかと、再度確認をして切るわけです。もう、苦痛に耐えられないから切ってくださいと、ハッキリおっしゃいます。こちらも、切るとなると厳粛な気持ちですね。人それぞれ、思いのこもっているのを、切ること自体、胸が痛みます。取れなくなった原因をうかがいますと、自然に太ってしまったとか、出産前後のムクミ、友だちのをハメてみた、突き指してハレてしまった、転んで指を骨折して取れなくなった……こういう状況が多いようですね。……〉

ベニシアさんの場合は、どうだったのだろう。

…………

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『チルチンびと』夏  112号

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