2015年2月 の記事一覧

「準と早織のディス古」に行ってきました

 

一昨年、Routes*Rootsでお会いした奥田早織さんは、古布を生かした作品づくりやアトリエづくりのお話をとても楽しそうにしていたのが頭に残っていて、またお話を聞いてみたいと思っていた。今回‘大森準平X奥田早織 「考える古 伝える古」展’に先駆け「準と早織のディス古」という、何やら変わった名前のトークイベントが開催されるというので行ってきた。会場となる恵文社コテージには本物の縄文土器(大森さん私物)と、超合金ロボットみたいなカラフルな大森さん作の火焔式土器が並び、ミラーボールがキラキラし、DJ大爆笑さんのかけるプリミティブな音のBGMが流れる、不思議なムードが漂う。

学生時代、縄文土器を研究するうちに、火焔式土器に興味が沸いたのを機に、どんどん作品作りが進化して現在のようなポップな火焔式土器を作るようになった大森さんと、古道具屋さんをしながら、古布を使った服やカバンの制作をしている奥田さんは、作風は全く違うけれど、学生時代からの長い付き合いで、よくお互いの作品と人柄を理解している雰囲気だった。


大森さんは、建築家であるお父様が作った、当時はかなりモダンで斬新なデザインだったという家にいまどき珍しい4世代同居スタイルで暮らしている。好奇心旺盛で少々エキセントリックな父を大らかに見守る元気のいい祖母が一家を明るく照らす存在であったという。とにかく家族みんながポジティブだったそうで、確かにそんな雰囲気が作品にも表れている。奥田さんは、祖母が和裁洋裁となんでもこなし、たいていのものは作ってくれる人で、それを見て育ったことがいまの作品づくりの根っこにあるという。家族や生活環境が、意識せずとも作風に影響を及ぼすことが、話を聞いているとよくわかる。

奥田さんは古いモノを心から愛しんでいる。理屈ではなく「なんか良い」んだそうだ。戦争をくぐりぬけて残った古いものは運が良いという話を聞いて、とても納得したとお話していた。けれど、彼女の創る服は、「古さ」を超えて進化している。シンプルで着心地が良く、心に余裕が出てくるような安心感と力強さがある。ものづくりを始めた当初、お金が本当にない時期に苦しみつつも、妥協なくいいものをつくることと豊かな生活をすることの両立を、知恵と行動力を駆使して実践してきた。その発想や技術を、誰でもできるよ、と惜しみなく周囲に分け与える感じも清々しい。

彼女は祖母から学んだ「なんでも自分でやってみる」という姿勢が今の仕事や生活に非常に役立っているので、ワークショップを通じてそのことを伝えていきたいという。逆にワークショップで子供たちから学ぶことも多い。大量の情報に浸されてすぐに器用で効率的なやり方を選びがちな大人たちが、決してやらないことを、子供たちは思いつきですぐにやる。頭で考えずにぱっと手を動かしてやりたいことをやるから、面白いものが生まれるという。古いものに新しい命をそそぎこんで洗練を感じる作品へと蘇らせる、ものすごいパワーの源は彼女の「暮らし力」にありそうだ。

全く異なる個性の二人を、「古」というキーワードで結んだRoutes*Rootsのご店主安井くまのさんのセンスと、ご主人で建築家の安井正さんが、ご自身の古材を取り入れた家づくりのお話を踏まえつつ二人の魅力を引き出す話術も素晴らしく、あっという間の二時間だった。

 

大森準平X奥田早織 「考える古 伝える古」展は、3月1日(日)までRoutes*Rootsで開催中です。

 

 

 

 


クルミのハチミツ漬け

 

ローストしたクルミをハチミツに漬けてみた。

ブルーチーズに添えていただくことを想像しながら、

食べごろまで、静かに待つ時間もたのしい。

寒暖が繰り返されるこの季節。

今日の東京は予想最高気温17℃と春の香りが漂った。

 


春の訪れ

まだまだ寒い日が続きますが

太鼓の稽古の時

境内にちょこんと咲く

梅の花を発見♪

梅の花

梅の花

一歩一歩春が やってきているのですね☆

 

梅の次は桜かなぁ?

可愛らしいお花が出迎えてくれるので

キツイ稽古へ行くのも

ちょっと楽しみになった

amedio( *´艸`)でした♪


「変奇館、その後 ー 雑木林の庭」公開中!

変奇館、その後

“広場” コラム所載の「変奇館、その後 」(山口正介)は、第2回「雑木林の庭」です。前衛建築の家が誕生した。では、庭はどうなる。そのあたりのイキサツが、今回のテーマです。ところで、その庭に植える木を仲間の方たちと山へ採りに行く話を、『男性自身・山へ行く』で、山口瞳さんも書いています。

………

四月のはじめに、馬鹿に暑い日が続いたのをご承知だろう。空は青く晴れて、遠い眼下の多摩川も青かった。満開の桜と巴旦杏の花が見おろせた。
ジュニアが、ぶったおれて寝た。私も隣に寝た。林のなかから、森本とアオヤギの声がする。カニカンが椿の根を切る力強い音がする。ドストエフスキーが、こっそりと蘭を掘っている姿が見える。虻の羽音。
私は、この瞬間に、死んでもいいと思った。

………

この最後の1行は、シビれる。

「変奇館、その後 ー 山口瞳の文化遺産」は、コチラからごらんいただけます。

 


幸運の名刺

中村活字

中村活字の社長・中村明久さんにお目にかかって、いろいろな話をした。たとえば、近頃は、いい誤植がなくなった、ということである。誤植を辞書でひくと、……  印刷で、植字の誤りなどによる、文字、符号の誤り。(『新潮現代國語辞典』)とある。活版でなくなったいま、全盛をきわめるのは、変換違いだ。全盛が前世だったり、変換が返還だったりする、あれだ。

そんな話をしているときも、ひっきりなしに、お客さんが、店を訪れる。中村活字でつくった名刺で仕事をすると、うまくいく、という噂があるという。いかがですか。ためしてみては。名刺は、片面スミ一色、100 枚、8000 円から、とのことです。

 

(中村明久さん「活字ここにあり」は、この “広場”の 「話の名店街」でごらんいただけます)

 


春の香りのする茶会

みたてさんで展示中の、全日根さんの器を使った茶会に伺いました。

 

全日根さんの作品は川口美術さんで拝見したのが始まりで、窯見学にもご一緒させていただいたり、その後も数回の回顧展に伺い、観るたびに新たな魅力を発見して惹きこまれていく作家さんです。今回のみたてさんでは花入れと人形を中心に、また全さんの未知なる魅力が引き出された素晴らしい展示をされています(~2月15日まで)。

会期中のイベントとして陶々舎の中山福太朗さんが選んだお抹茶椀で、川口美術の川口滋郎さんのお話を伺い、みたてさんが花入れにお花を活けるのを眺めるという趣向の一日限りのお茶会。全さんの器とお茶とお花を存分に楽しめて、ド素人の私でも冷や汗をかかずにすむような、気楽で遊び心たっぷりのお茶席をつくっていただきました。

 

待合では梅の枝にお湯を注いで、ふんわりと梅の爽やかな香りたつ白湯をいただきつつ春の山野草を眺めます。お茶席に入ると、まずお菓子が配られますが、その前に今回は、楊枝用になんと本物の黒文字の枝を自分で伐ります。枝を持って帰ってもいいということで少し大きめに。本日のお茶菓子はふきのとうの入ったお味噌を包んだもっちりとしたクレープのようで、フキの香りが漂う季節感あふれるもの。

お抹茶椀は、一人一人全然違うもので、骨董のようにも、モダンなものにも見え、どこかしら可愛らしくお茶目で、空にも海にも大陸の景色のようでもあり、アジアやアフリカの香りがしたり、描かれた生き物たちが踊り出しそうであったり。どれも亡くなられたとは未だ思えない躍動感が作品に宿っています。飯椀かお抹茶椀か、どちらだろう?と少し考えるような形のものもあり、その形式にこだわらない自由な解釈や豊かな表情に惹きつけられ、どれを持ってこようか迷った。とお話されていた福太朗さんも、普段の暮らしにもっとお茶を取り入れたいと、自由なお茶席を提案し続けている方。品が良いのに少しとぼけた味わいがあって、使うこちらを緊張させない全さんの器と、とても相性がいいのも納得です。

 

 

長年、全さんとお付き合いのある川口さんはもちろん、生前には面識のなかった福太朗さんとみたてさんからも、器を通して感じられる全さん像が様々に浮かび上がり、それを聞きながらいまだ星山窯にいらっしゃって作品が生まれ続けているような気がしました。誰かを偲ぶことにも様々な形があるけれど、こうしてその人を愛する人たちとともに魅力を語り継ぐことは、ほんとうに心慰められるものがありました。

ひと足早く、爽やかな春を感じるような朝の豊かな時間を、楽しませていただきました。

 


川村記念美術館

念願の「川村記念美術館」に行ってきた。

 

今回はコレクション展示中で、レンブラントの『広つば帽を被った男』、モネの『睡蓮』、ルノワールの『水浴する女』などの有名な作品の他、前衛的な作品も観ることができた。

 

自然散策が楽しめる敷地内の庭園はゆったりとして、四季をたのしむことができる。

レストランからの眺めもすばらしい。

 

ワークショップも開催されているようなので、次回はぜひ参加したい。

 

時間が許せば、できるだけ長く滞在したい美術館だ。

 

 


神保町の「キッコロ」

神保町の「キッコロ」

 

オミヤゲは、神保町交差点わきの「神田達磨」で、タイヤキを買った。この“広場”でおなじみ、木の小物を楽しくつくる「キッコロ」が、三省堂の「いちのいち」でお店をだしているのだ。いちのいちは、三省堂を入って左手、書籍売り場の反対側にある。


「あ、どーも。今日から来週月曜日(9日)まで、一週間やるんですよ。やっぱりココは、屋外の手づくり市などとは、お客さんのカンジが、違いますね。動くものも、違います。時計とか、大きなものが、動いたり。外の市だと、1000円、2000円台の、一輪挿しとか赤ちゃんのガラガラとか、小物が、多いですけど。お客さんには、どういう木ですか、とよく訊かれます。あ、コレは、ヨーロッパのブナ。あと、ウオールナツト、チェリー……  電動糸ノコで一つひとつ切り抜いて、つくっていきます。ウイークデーにつくり、週末に出店するというペースですが、今度みたいに一週間出店するとなると、直前まで、つくりっぱなしでしたよ。暮れも、31日まで出店、お正月はひたすら寝ていましたね。あっ、お客さま…… どうぞ手にとって、ごらんくださーい」。

 


家具から生まれる、豊かな暮らし

 

第13回の彩工房 暮らしと住まいのセミナー「山の家具工房」田路宏一さんを迎えて、家具作りや家具の選び方、お手入れ方法、家具との暮らしなど、多方面からの家具のお話をうかがった。

田路さんは京都市旧京北町というところで無垢の木を使って家具や木の道具を作られている。庭には大きな栗の木があり、大きなヤギが3匹いて、工場跡地のような広い建物の中に工房と自宅があり、自宅内装はご自身の手による木のぬくもりが感じられるとてもすてきなお住まい。仕事の合間を縫って少しずつ変化しながら完成中だ。工房には木をストックしたり加工するための場所と道具が揃っていて、たいていのことはお願いすればできるような理想的な環境で制作をされている。(詳しくは田路さんのブログから)

そんな田路さんがつくる家具は、洗練されたフォルムを持ちながら、触ってみると柔らかく、素朴さ、強さ、温かさが感じられて、どれも使ってみたくなる。椅子の心地のよさと扱いやすい軽さ、テーブルの角の部分、足の部分のカーブや天板の裏に設置された反り止めなど匠の技が目立たぬようさりげなく生かされていて、見えないところまで美しく機能的。眺めているだけで家具が本来持つ意味を教えてくれるような作りになっている。木は生き物なので、必ずしも人間の思い通りにはならない、そのことを十分理解し木の命に尊敬を払った家具作りは、手間や時間がうんとかかるけれど、その木が本来持つ強さ、しなやかさや色合い、木目の美しさ、など性質が生かされ長持ちする。

それは木の家づくりとまったく同じ、と彩工房の森本さんも頷く。速さや安さを求める世の中の流れは止められないとしても、置いてきてしまったものは大きい。無垢の木の家や家具は使うほどに味わいと美しさが出て、壊れても直して使えるし、暮らし方の変化に合わせてリメイクやリフォームがしやすい。大切に育てていくという楽しみ方がある。まずはお気に入りの家具をひとつ探して使ってみることから、無垢の木のある生活をはじめてみるのがいいかもしれない。お二人からはそんな共通の課題や提案が出ていた。それもハードルが高そうだったら、器など生活雑貨から取り入れて、お手入れの仕方や木の特性を知るのも楽しいと思う。

修行時代にシェーカー家具の師匠のところで教わった、美しいチェストをひとつ持ち、その中に納まるものだけで生活していく、という話は田路さんにとても影響を与えたという。家具作りだけでなく、そこから生まれるシンプルな暮らし方を教わったことは、いまの田路さんご一家の暮らし方とご自身の家具作りに繋がっているそうだ。それでも、独立したてのころは、自分の好きなものを作っていていいのか、お客さんの希望はなんでも叶えてあげるべきなのじゃないかと迷うこともあった。いまは自分の作りたいものがわかってきた。信念を持って好きなものを作っているとそれが形に表れ、しっかり言葉にできるようになるし、相手にも伝わる。大切な家具ひとつ持って、そこから始まる暮らしがあってもいい。というお話が心に残った。