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暮らしを再生する、古民家の力

チルチンびと 別冊72号 民家の再生と創造⑥

 

「チルチンびと 別冊72号 民家の再生と創造⑥」では、全国各地で再生された古民家の数々を通して、地域の風景と暮らしをつなぎ直す取り組みを紹介しています。川越市の「ちゃぶだいGuesthouse, Cafe & Bar」や「結家-MUSUBIYA-」など、歴史ある建物を現代のライフスタイルに寄り添う場として蘇らせた事例は必見です。

特集「古民家の再生」では9事例を掲載。改修を担った建築家や職人たちの繊細な手仕事が、土間や梁、木組みといった古民家の魅力を現代に伝えています。

「民家の創造」では伝統工法「石場建て」を用いた3事例を掲載。神奈川県や埼玉県川越市などに実在する石場建ての家では、自然と共生し、地震に柔軟に対応する構造が高く評価されています。現代住宅では忘れられがちな「自然との距離感」や「素材の呼吸」が、この工法により見事に蘇えります。

今号では再生された古民家の美しさや、石場建ての技術、左官の魅力を深掘りしていきます。家づくりに関心のある方、伝統建築や地域再生に興味のある方は、ぜひ一度お読みください。

『チルチンびと』別冊72号「民家の再生と創造⑥」は10月29日発売です。

 

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逍遥する華道家・道念邦子さん

ランドスケープをつくる  お庭を逍遥する

「ランドスケープをつくる お庭を逍遥する」
メインビジュアル

 

卓上のひとはな」は、華道家・道念邦子さんの大胆な生花と街を見る視点の面白さがとても楽しみな連載コラムでした。編集を担当した彗星倶楽部・中森あかねさんが、昨春に編んだ道念さんの作品集『花』の冒頭の文章は、読む瞬間瞬間でだんだん理解が深まっていくような忘れられない言葉です。

わたしはよく歩く
歩かないとわからないことがあるから
歩いても歩いても
わたしはわたしと気がついた時に
わたくしのいけばなが咲くようだ

初めてご本人にお会いできたのは昨年の秋、「消えつつ生まれつつあるところ」展の空き家ツアーに参加した時のこと。道念さんをはじめ国内外のアーティストが、その家に眠る魂を悼み蘇らせる儀式のような作品を巡り、最後に参加者皆でちゃぶ台を囲んで刺繍をしながら子供時代を語り合う時間がありました。道念さんが話を始めると、昔話なのに現役少女の雰囲気があってなんとも可愛くユニークで場が和んでいました。なのに、同時に金沢21世紀美術館「すべてのものとダンスを踊って―共感のエコロジー」展に展示されていた竹のキューブの作品の、まるごと竹を使った力強くシンプルなのにこれまで見たこともないような作品に触れると、やはり前衛華道家なのだ!と感じました。

先日、再び中森さんにご案内をいただいて、東京都庭園美術館の正門横スペースで開催中の特別展示「ランドスケープをつくる お庭を逍遥する」のトークイベントに参加してきました。こちらは館長の妹島和世さんが就任以来、新たに取り組んでこられた「建物と庭園を回遊できるランドスケープづくり」の一環として行われている企画。今回は、道念さんが植物と通じ合い生まれたドローイングを壁面にコラージュすることで、そこから広がる宇宙をランドスケープとして構築する試み、だそうです。

道念さんは「お庭を逍遥する」という今回のテーマに、直感的に親しみを感じたといいます。いつも花を求めて歩くけど、求めているものは大体見つからない。でも花に呼ばれるような出会いがある。”逍遥”という言葉は、澁澤龍彦氏の『フローラ逍遥』を見つけて、その装丁と図版の美しさ、花との出会いを綴る文章に感動して以来、ずっと心に残っていてついにご自身の展示のタイトルにしたのだとか。

近頃の道念さんの行動半径は、自宅から1〜2キロほどの小さな範囲。けれど、そのなかで豊かな出会いがたくさんあって、どこか遠くへ出かけなくても満たされるのだそう。近所のお店の一輪挿しに生けられた花、そこに通ってくる男の子ゆうくん、その子のおばあちゃんとの出会い。神社にある石で、ひとやすみして苔を眺めるのが大好き。誰かの家の見事なバラや酔芙蓉を愛でる嬉しさ。そんな日々の小さな発見やできごとを、一つ一つ大事に宝物のように語る姿はやはり少女のようでした。散歩の途中、偶然に出会った野の花に、新しい命を吹き込んで作品へと昇華する道念さんのいけばなこそ、とらわれなくつれづれに歩いて心身を解き放ち、世界との関係を再構築する“逍遥”の本質を表している、と感じました。展示は10月13日までです。ぜひお出かけください。

 

特別展示 「ランドスケープをつくる お庭を逍遥する」
2025年9月9日(火)~10月13日(月・祝)
10:00-18:00 月曜休(10月13日は開館)
東京都庭園美術館 正門横スペース 
入場無料

 

壁面にコラージュされた道念さんのドローイング

 

一緒に参加したモザイクタイル職人の荒木智子さんは、壁面にコラージュされた道念さんのドローイングを観て「パラボラアンテナみたいだ」と一言。町中のアンテナがこうなっていたら楽しそうです。

編みの作品。材料は紙でできた糸。一つ一つの編み目が確かに花びらに見えてきます。

編みの作品。材料は紙でできた糸。一つ一つの編み目が確かに花びらに見えてきます。

トークイベントで行われた生花体験。私が手に持っているのは白式部。妹島和世館長作の大きな器に、参加者皆さんで秋の花を生け込みました。

金沢の内灘海岸での蓮の作品について語る道念さん。蓮の葉が、天から何かを受け取る手のひらに見えたそう。

金沢の内灘海岸での蓮の作品について語る道念さん。蓮の葉が、天から何かを受け取る手のひらに見えたそう。

植物の写生とメモ、ドローイングの素描に心が躍ります。

トークイベントで公開された植物の写生とメモ、ドローイングの素描に心が躍ります。

歓談の時間振る舞われた菊茶。道念さんのドローイングがコースターになっています。

歓談の時間振る舞われた菊茶。道念さんのドローイングがコースターになっています。

 

※チルチンびと「今月のプレゼント」は華道家・道念邦子さんの作品集です。ぜひご応募ください。


『チルチンびと』125号「作庭家とつくる庭」

チルチンびと125号「作庭家とつくる庭」

 

自然と暮らしをつなぐ、庭という舞台

今号の『チルチンびと』は、「作庭家とつくる庭」をテーマに、住まいと庭の関係を改めて見つめ直す一冊です。

日本の民家と庭の関係性を、建築史家・森本英裕氏の論考からはじめ、住まい手の暮らしに寄り添う多彩な庭の事例を紹介しています。古民家再生の敷地に生まれた新しい庭、街なかの小さな雑木林のような庭、時と共に育まれていく自邸の庭──それぞれの場所に根ざした庭づくりに、作庭家と建築家がどのように寄り添い、空間をかたちづくってきたのか。見た目の美しさだけでなく、暮らしのリズムや風景へのまなざしが感じられる庭を丹念に追っています。

監修に菊池好己氏を迎えた「草花図鑑」は、イラストとともに草木の魅力をやさしく伝え、庭づくりにとどまらない、植物との日常的なつながりを感じさせてくれます。

さらに連載企画では、料理家・こてらみやさんの住まいを訪ねた「あのひとの住まいへ」や、栃木県市貝町で地域とつながる営みを続ける「わたね」など、多様な暮らしの実践を紹介。

第2特集では、「首都圏の移住と別荘」と題し、八ヶ岳・南アルプス・栃木・房総などへの移住事例を紹介。自然と文化にふれる暮らしや、地元工務店との協働による家づくりを通して、都市と地方をつなぐ新たな住まい方のヒントをお届けします。

巻末では「地域主義工務店の会」の定例会レポートや、山から始まる家づくりなど、地域と向き合う工務店たちの実践も掲載。

庭と家、暮らしと風土──そのつながりの中にある豊かさを見つめ直す一冊。ぜひご一読ください。


『チルチンびと』125号「作庭家とつくる庭」は9月11日発売です。

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『チルチンびと』124号「夏涼しい家のつくり方」

『チルチンびと』124号「夏涼しい家のつくり方」

 

『チルチンびと』124号「夏涼しい家のつくり方-UA値と体感値-」では、「夏を快適に過ごせる家」の工夫や知恵を、多角的に特集しています。UA値(外皮平均熱貫流率)などの住宅性能指標と、人が実際に感じる“涼しさ”=体感値の両面から、夏を心地よく過ごす家づくりを解説。断熱性能の高い家、自然素材を活かした省エネ住宅、風や緑を取り込む設計の実例など、これからの家づくりに役立つ情報が満載です。

特集では、気候風土に適応した設計、付加断熱や土壁工法による高断熱住宅、雨水や植栽を使ったパッシブクーリングの手法を紹介。また、真夏と真冬に実測した室温データをもとに、自然素材住宅の快適性や省エネルギー性能を科学的に分析します。

暮らしの読み物も充実。『暮らしの手帖』元編集長の北川史織さんによる新連載「あのひとの住まいへ」ささめや ゆき氏の住まい紹介や、涼を呼ぶ京簾、再生ガラス工房など、日本の四季に寄り添う丁寧な暮らしを紹介します。

夏の暑さに悩む方、自然素材で家を建てたい方、断熱・気密性の高いエコハウスを考えている方におすすめの一冊です。「夏に強い家づくり」のヒントがここにあります。

 

『チルチンびと』124号「夏涼しい家のつくり方」は6月11日発売予定です。

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建築家・吉村順三の鞄持ち

建築家・吉村順三の鞄持ち

 

『建築家・吉村順三の鞄持ち』藤井章 著 本日、7月10日発売

日本を代表する建築家であり、東京藝術大学名誉教授であった故・吉村順三氏。その愛弟子である建築家・藤井章氏による、吉村順三との思い出を語るエッセイ。一番近くで仕事をする中で、吉村順三の人柄や設計において大事にしていることなど藤井章氏が見てきたエピソードを綴っています。


160頁 A5版
本体価格 2,000円+税

目次:
スミソニアン紀行
続・スミソニアン紀行
恩師を想う1 DNA
恩師を想う2 ニューホープ
恩師を想う3 レイモンド夫妻
恩師を想う4 新宮殿
恩師を想う5 吉村別荘
結びに

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「池上秀畝 -高精細画人- 生誕150年」展へのご案内

池上秀畝 -高精細画人- 生誕150年

 

池上秀畝は、長野県上伊那郡高遠町に生まれ、明治22年、本格的に絵を学ぶため上京した。同じ長野県の出身で同い年の菱田春草らが牽引した「新派」の日本画に比べ秀畝らの「旧派」と呼ばれる作品は、近年展覧会等で取り上げられることはほとんどなくその知名度は、限られたものに過ぎませんでした。-と、展覧会のパンフレットに説明されている。その秀畝の作品展が、練馬区立美術館で開かれている。

『東京新聞』4月1日の夕刊の文化欄に「伝統の中に生かした近代性」というタイトルで、この展覧会が、紹介されている。その一節から-。
〈-会場には、従来の日本画で重要表現だった輪郭線を描かず、はけで色をぼかす描法で「朦朧体」と呼ばれた春草の作品も展示されており、伝統的な絵画様式に基づいた秀畝の作品との対比は興味深い。-〉

この展覧会は、4月21日まで、練馬区立美術館で開かれている。


「版画の青春 小野忠重と版画運動」展へのご案内

版画の青春 小野忠重と版画運動

 

激動の1930~40年代を版画に刻んだ若者たち - というサブタイトルが  添えてある。
その内容は、-昭和期に活躍した版画家であり、版画史研究者でもあった小野忠重を中心に1932年に結成したグループ「新版画集団」、そしてその発展的グループとして1937年に結成され、戦後1950年代まで活動が続いた「造形版画協会」、この2つの集団の版画運動の歴史的、美術史的意義を検証する展示会です。-

そして、見どころとして、知られざる1930~40年代の創作版画を、なんと約300点展示!、とある。

この展覧会は、町田市立国際版画美術館で5月19日まで、公開中です。


芝生蚤の市に参加します

 

芝生蚤の市

 

3月31日(日)に吉祥寺パルコ屋上で開催される『芝生蚤の市』に「チルチンびと」も参加します。

〈古道具・アート&クラフト〉〈訳アリもの市〉〈ワークショップ&ライブ〉〈フード〉が大集合!

「チルチンびと」は展示販売とワークショップを予定しています。

 

■展示販売(能登・金沢のもの)

輪島塗・九谷焼(古道具・器 きりゅう
九谷焼(wonderspace金沢駅
陶器(岩崎晴彦)
着物をリメイクした古着(道念邦子)
南無阿弥陀仏手ぬぐい(長谷川琢士
ポストカード(ヒトノト
古書(高橋麻帆書店
写真集「のと鉄道」(湯浅啓
書籍・雑誌チルチンびとバックナンバー(チルチンびと)
能登ヒバ・ヒノキの匂い袋(チルチンびと)

■ワークショップ

かんなで削った木くずのポンポンづくり・絵本の読み聞かせ(ますいいリビングカンパニー
木のストラップづくり・積み木コーナー(大丸建設

※売上の一部は能登復興支援のために寄付いたします。

 

芝生蚤の市 ’24 Spring
2024年3月31日(日)10:00-16:00
前売り 300円(当日 500円)
会場 吉祥寺PARCO屋上
主催 芝生 GALLERY SHIBAFU/ユーリアンドデザイン

 

素敵なものいっぱいの芝生蚤の市、詳しくはオフィシャルサイトをご覧ください。
是非、遊びに来てください! お待ちしています。

 


『鳥文斎栄之展』へのご案内

鳥文斎栄之展

 

いま、千葉市美術館で開かれている『鳥文斎栄之展』のサブタイトルは、〈 サムライ、浮世絵師になる !〉だ。
そして、この展覧会のパンフレットを読むと、こんな大きめの文字が踊っている。
世界初開催!  武士に生まれ  浮世に生きる-
将軍の絵具方から浮世絵師へ
隅田川の絵師誕生
歌麿に拮抗-もうひとりの青楼画家
色彩の雅-紅嫌い
門人たちの活躍
美の極み-肉筆浮世絵

いかがですか。そして、さらにプロフィールには、
鳥文斎栄之は、1756~1829。熊本出身。美人画のみならず幅広い画題で人気を得た浮世絵師。浮世絵の黄金期とも称される天明から寛政期に、同時代の喜多川歌麿と拮抗して活躍しました。
- と、ある。
この展覧会は、3月3日まで、千葉市美術館で開かれている。


『古賀忠雄 塑造(像)の楽しみ』展へのお誘い

古賀忠雄 塑造(像)の楽しみ

 

佐賀県佐賀市に生まれた古賀は、高等科を卒業後佐賀県立有田工業高校図案絵画科に入学。教師であった日本画家・腹巻丹丘に才能を認められました。1926年には東京美術学校彫刻科塑像部本科に入学。古賀はロダンやプールデル、北村西望等の影響を受け、写実の中にやや誇張した表現を取り入れながら、安定した形態を持つ人体や動物を多く制作しています。

本展ではこうした古賀の活動の中から「塑造〈像〉」に注目します。明治期以降、立体制作に対しては「彫刻」という言葉がほぼ定着して来ました。古賀の肩書きも「彫刻家」ですが、技法としては塑造を用いた作家です。木や石を彫り刻む技法に対し、粘土などを足し引きし形を生み出す「塑造」で作られる塑像は、作品の制作過程や作家の姿勢に、他ジャンルとは少々異なるポイントがあります。塑造〈像〕には美術館に所蔵され飾られるオリジナルの絵画等とは異なる視野があるのです

『生誕120年 古賀忠雄展』は、練馬区立美術館で、2月25日まで公開中。観覧無料です。