2019年7月 の記事一覧

「ポーの一族展」 熱視線

萩尾望都  ポーの一族展

『萩尾望都  ポーの一族展』(松屋銀座 8階イペントスクエア、8月6日まで)に行く。

〈「ポーの一族」を中心に半世紀の軌跡をたどる原画展  〉であり、
〈  少女マンガに革新をもたらした萩尾望都さんの代表作「ポーの一族」。バンパネラ(吸血鬼)の一族に加えられ、少年の姿のまま永遠の旅を続ける主人公・エドガーの哀しみを描いたこの作品は、1972年の第1作から多くの読者を魅了してきました。 …… 〉と、パンフレットの紹介。原画あり、宝塚公演のときの衣装あり

観客の99%が女性であり、その99%が中年である、ということは、べつに不思議ではないが、その熱視線には、やはり驚かされる

 


素朴絵の味

『日本の素朴絵』展

『日本の素朴絵』展

 

『日本の素朴絵』展(三井記念美術館、9月1日まで)に行く。「ゆるい、かわいい、楽しい美術」というサブタイトル。そして、パンフレットには、こういう説明。

〈 ……  本展覧会では、ゆるく味わいのある表現で描かれたこのような絵画を「素朴絵」と表現し、様々な時代・形式の素朴絵を紹介することで、新しい美術の楽しみ方をご提供します。……〉

立体に見る素朴  埴輪 / 素朴な異界  地獄絵 / 絵巻と絵本 / 庶民の素朴絵  大津絵 /  知識人の素朴絵    俳人・茶人・旦那  などなど。
帰りに、ショップで、大津絵煎餅を買う。素朴な味。

 


『マシーネンクリーガー』と空想世界

『マシーネンクリーガー』と空想世界

横山宏 のマシーネンクリーガー展

 

『横山宏 のマシーネンクリーガー展』(八王子市夢美術館、9月1日まで)に行く。「立体造形でみせる空想世界」というサブタイトル。

〈 『マシーネンクリーガー』は模型からつくる異色のSF作品として、誕生から37年を経た現在も国内外を問わず根強い人気を得ています。その原作者である横山宏は、1956年に北九州市に生まれ、幼い頃から少年雑誌に描かれた戦車や軍艦、架空のロボットに心踊らせ、その模型づくりに熱中する少年でした。……〉と、会場の紹介は始まっている。そして、……

〈本展では、代表作『マシーネンクリーガー』を中心に立体作品、イラストレーション、制作過程でのスケッチ、オリジナルの道具などを一堂に集めて紹介し、氏の創作活動の全貌に迫る初の試みです。〉とのこと。

少年の夢の軌跡。

 

 

 


みんな、ミュシャ

みんなの  ミュシャ  ー  ミュシャから漫画へ   線の魔術 ー  展

 

 

『みんなのミュシャ ーミュシャから漫画へ 線の魔術 ー 展』( Bunkamura  ザ・ミュージアム、9月29日まで )に行く。
〈没後80年。時代を超えて、今もミュシャは生きている〉と、パンフレットの文字。さらに〈 ……「線の魔術」ともいえる繊細で華やかな作品は人々を魅了し、ミュシャ様式と呼ばれるそのスタイルは、後世のアーティストに影響をあたえてきました。…… 〉

ミュシャの幼少期の作品。工芸品、ポスター、なども。そして、ミュシャから影響を受けた日本の漫画家の作品まで。
帰りに、ショップで、おみやげを買う。ペコちゃんのサブレも、カリントウも、みんな、ミュシャ。

 


坂本繁二郎の絵葉書

坂本繁二郎展

坂本繁二郎展

 

『坂本繁二郎展』(練馬区立美術館、9月16日まで)に行く。没後50年ということである。

この展覧会の目録の初めに、坂本繁二郎について、主催者の文章がある。

〈…… その目標とは、日本人にしか描けない絵を描くことであり、「絵の深み」を表現することでした。そのために彼は、牛から馬、やがて身の回りの野菜や果物、さらに能面や箱、植木鉢などに題材を求めるようになり、ついに「描き度いものは目の前にいくらでもある」という境地に達します。最晩年に描かれた月雲のシリーズは、この画家の充実した人生を象徴しているかのようです。…… 〉

帰り、ショップで、絵葉書を二枚、買った。


日日是アート!

日日是アート   ニューヨーク、依田家の50年

日日是アート   ニューヨーク、依田家の50年

 

『日日是アート ニューヨーク、依田家の50年』(三鷹市美術ギャラリー、9月8日まで)に行く。

〈1966年、26歳の依田寿久は横浜から2週間の船旅を終えてロサンゼルスに着きました。荷物は画材の詰まったトランクふたつ。そこで八ヶ月間働いて、本来の目的のニューヨークに向かいます。〉 …… と、展覧会の案内の文章は始まっている。
そして、そのあとを追うようにして、順子さんが、ニューヨークへ。そして、二人の間に、洋一朗さんが、誕生。ふたたび、案内の文章。
〈今、彼ら3人は、ニューヨークのローアーマンハッタンにある5階建てビルの4階ワンフロアを自宅兼アトリエとして、日々制作に励んでいます。
彼らにとって日常とアートを分けるものはなんでしょうか。そもそもそこに境界はあるのでしょうか。……〉

3人の画家の50年、それぞれの人生。

 


高畑勲の遺したもの

高畑勲展

高畑勲展

 

『高畑勲展』(東京国立近代美術館、10月6日まで)に行く。「日本のアニメーションに遺したもの」というサブタイトル。創作ノート、絵コンテ、その他、作品にまつわるいろいろが、たくさん展示されている。

〈 「太陽の王子  ホルスの大冒険」は、ぼくたちの青春の一時期の   すべてを注ぎ込んだともいえる  たいへんに思い出深い作品です。〉
〈子どもの心を解放し、生き生きさせるような本格的なアニメシリーズを作るためには、どうしなきゃいけないのかということを一生懸命考えた。〉
〈 日本人が日本のアニメーションを作る、とはどういうことか、いつも考えていました。〉
などなどの言葉が、パンフレットに見られる。

帰りに、ショップで、クリアファイルを買う。いろいろな作品のものがある中で、やっぱり『火垂るの墓』ですね。

 


『三国志』と正岡子規

三国志

三国志

 

『三国志』展(東京国立博物館、9月16日 まで)に行く。途中、入ったカフェで読んだ『うえの』というタウン誌(7月号)に、「三国志」にふれた文章がある。筆者は、市元  塁さん(東京国立博物館主任研究員)。

〈……  正岡子規が根岸にいて日刊紙『日本』に連載をしていた時のことです。病床にあって術後の痛みに苦しむ子規は、それを読書で紛らわすとして、三国志の英将・関羽を引き合いに出したのでした。(『墨汁一滴』より)。子供の頃に見た関羽が兵書を読む場面の絵と、関羽が碁を打ちながら腕の手術を受けた『三国志演義』の逸話からの連想のようです。なお、子規は「長き夜や孔明死する三国志」という句も詠んでいます。…… 〉

そして、子規にとっての『三国志』は、痛みや苦しみを乗り越える糧だった、というよりも、日々を豊かにする引き出しの一つであった、といえると書いている。

 


安西水丸さんの想い出

『安西水丸 1本の水平線』展

『安西水丸 1本の水平線』展

 

『安西水丸1本の水平線』展(ノエビア銀座ギャラリー、8月23日まで)に行く。このギャラリーは、並木通り、最中の空也の少し先にある。お久しぶりです。あの線、色、形、文字、みんな懐かしい。安西さんの文章には、哀感が漂っていて、千倉、母親、海が出てくる場面が好きだ。たとえば、花畑でのある日。
………

  海が銀色に光っていたのだ。ぼくがいつも海水浴をしている入江も銀色だった。水平線にはカモメの大群が飛んでいた。
「お母さん、海が光ってるよ」
「何でしょう」
ぼくたちは花を摘む手をとめて海岸へと向かった。そこに見たのはイワシの大群だったのだ。ぼくは母といっしょに両手で掬うようにしてイワシを獲った。
 土地の人に聞くと、それは「イワシが上る」といった現象でめったにないことらしい。(『a  day  in  the  life』「花のある生活、きれいな言葉だ」   安西水丸著・風土社刊)


メスキータ とエッシャー

メスキータ

 

『「メスキータ」ー エッシャーが命懸けで守った男 』(東京ステーションギャラリー、8月18日まで)に行く。メスキータは、19世紀末から20世紀はじめに、オランダで活躍した画家、版画家、デザイナー。美術学校で多くの学生を指導。その教え子の1人に、エッシャーがいた。そして…… 

〈…… ユダヤ人であったメスキータは家族もろともゲシュタポに逮捕され、ほどなくしてアウシュヴィッツで亡くなりました。アトリエに残された膨大な作品の一部は、エッシャーや友人たちが決死の思いで救い出し、戦争中も命懸けで守り抜きます。……〉と、 展覧会のパンフレットに書かれている。

今年、没後75年であるという。