2011年5月2 の記事一覧

金子國義さんの表紙

higurashi

 『チルチンびと』を 発行している風土社から、歩いて90秒ほどのところの路地に、小さな店がある。そのたたずまいから、カフェかケーキ屋のような。しかし、昼間はいつも仕舞っていて、わからない。ところが、ある夕方、入り口が開いていた。
 オヤッ。
 誘われるように中にはいる。そこは、なんとも懐かしい世界だった。目の大きな少女。こちらを見ているウサギ。黒い服に身を包んだ男。なにか挑発するような女。あれは、「不思議の国のアリス」じゃないか。 ここは、画家・金子國義さんのギャラリー・美術倶楽部ひぐらし だった。
 金子さんが、女性誌の表紙を描いていたことがある。私は、その担当だった。初めて、ご挨拶にうかがうとき、それは四谷のアパートだったが、「うちは、扉が赤いから、すぐわかりますよ」といわれた。行ってみると、アパートのいくつか並んでいるドアの、金子さんの部屋だけが、赤かった。そのドアを開けると、中は真っ暗だった。
 担当者になると、月に何回か、うかがうことになる。まず、絵の受け取りがある。いつも、作品はギリギリにできあがる。暗い部屋の中は、絵の具の匂いに満ちていた。絵はまだ乾いていない。それに汚れやキズがつかないように、運ぶための箱を特注でつくらせたりした。
 しばらくして、四谷から大井へ引っ越すことになった。直接、つぎの家に移ると、いいことがないという卦から、いったん海外へ行くという。帰国したころ、新居を訪ねた。部屋には大きなテーブルがあり、その天板の部分は鏡だった。
<この項つづく>

路地裏のアリス展路地裏のアリス展 5月8日(日)まで
神田神保町1丁目の路地裏、同じ十字路を挟んで位置するアリスと縁の深い3店舗(美術倶楽部ひぐらし・SPIN Gallery・古書たなごころ)とカフェクルークが、「不思議の国のアリス」をモチーフにした展示を行ないます。路地裏のアート散歩に、ぜひおでかけください。

美術倶楽部ひぐらし 千代田区神田神保町1‐26
℡:03(3219)2250