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北陸めぐり ~富山・前半編~

 今回の北陸出張、初日は富山。9月1日の宿、どこも満室。いったい富山になにが!?と思って聞いてみると「おわら風の盆」という有名なお祭りの初日だそうだ。3日間でなんと20万人もの人が集まるらしい。すわ、寝袋か!?と思いきや、vigoの友人夫婦が泊めてくれることになりました。生まれてまもない赤ちゃんがいるというのに。持つべきものは友ですね。ほんとにお世話になりました。

 

 当日は朝出発し、夕方富山着。最初に訪れたのは「junblendファーム」さん。パルプ工場が目の前にある、なかなかシュールな眺め。汚染物質を流さないクリーンな工場だからこそ、こんな近くで無農薬の畑ができているのだそうだ。オーナーjunさんは30歳という若さながら、もう4年も西洋野菜の畑をつくっている。西洋野菜というのが面白い。確かにイタリアのトマト、大好きなのだけどなかなか手に入らない。黒キャベツというわさびみたいな風貌のキャベツもあった。7月にはレストランをオープンさせたばかりの、パワフルでキュートな女性でした。そういえば、こんな人もいる、あんな人もいる、といろんな人に電話をかけて紹介してくれて、ここからまたいい出会いが生まれる予感がする。人のつながりってすごいんだなと思う。

 

 そんなこんなで、「FUTAGAMI」さんに着いたのは夜8時。こちらはvigoがLINEさんで買った、真鍮の箸置きから見つけてきた工房。展示会にむけて、コツコツ制作をしている二上さん、お忙しいのに作業用のゴーグルをぶら下げながら一生懸命話してくださった。仏具という伝統を守りながらも柔軟な発想で新しいデザインを取り入れ、信念はぶれず。すごいなと思う。私などは不惑も近いのに全国行脚でいろんな人に会うたびに、こんな人生も、あんな人生もいいなとぶれまくっております。

 

 締めくくりに訪ねたのは、チーズとワインのお店「能作」さん。ちょっとずつ、とびきり美味しいチーズを、いろんな器でちょこちょこと出してくれてどんどんワインが進んでしまいますこと。オーナーはほわんとして気さくで、可愛くておもしろい女性。アーこんな大人の女性になりたい。近くにあったら間違いなく週3で通ってしまいたくなる。教えたい、けど教えたくない!そんなお店でした。本当にまったり楽しいひとときを、ありがとうございました。

 

 

富山後半編につづく。


高円寺阿波おどり

 

今年は節電対策のため、夕方に開催時間をずらしての「高円寺阿波おどり」。55年の歴史の中で初の昼間の開催だったそう。家から近いこともあり、自転車で行ってみた。雨もあがって、涼しくて、踊り手にも観客にもいい気候。といっても商店街は熱気むんむん!どのお店も明るいうちから威勢のいい声で呼び込みをかけていて、お祭り気分満載でした。

 

阿波踊りは「連」というのが一つのグループの単位で、「~連」と書いた提灯を持った先頭の人の後から、おなじみ浴衣に編み笠、下駄姿の「女踊り」隊がきて、はっぴにねじり鉢巻き姿でうちわや扇子、提灯などをひらひらさせながら踊る「男踊り」隊、そして三味線、太鼓、笛の「鳴り物隊」が後からくっついてくる。男踊り隊(といっても半分ぐらい女性)は、かなり自由に動きまわっていて、女踊り隊と鳴りもの隊の間に入って行ったり・・・その構成や振り付けや着物も「連」ごとそれぞれに違って面白い。ヤットサー!ヤットヤット!って掛け声も、笛や太鼓の音色も、いかにも日本の夏!という感じがして、いいもんです。阿波踊り。本場徳島のも生で見てみたい。

 

でも、踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら・・・たしかに踊ったほうがおトクかも!女踊りの格好もちょっとしてみたいけど、暑そうだなぁ。下駄でずっとつま先立ちっていうのも、つんのめりそう。。自分でやるなら裸足にはっぴで、威勢よく「男踊り」で行こうと思います。

 

 

 


コナス成長期その3

コナスの実が成りました。みっつ。

花はもっとたくさんついていたのだけれど、どんどん落ちたりして、

この日差しの強さで1日家を空けただけでしょぼんとしおれたりして、

もうダメか!?と思う日もありました。でも頑張って乗り越えてくれて、やっと三つ。

コナスにしては、もうじゅうぶんに肥えてるんではないか?

と最初の1個を収穫してしまったのですが、

 

初収穫した最初のひとつ

 

そういえばパッケージには、もっと大きな実の写真が載っていたことに気付いた!

形がかわいいので、もうすこしキッチンに飾って眺めようと思います。

 

 


ムーミンと仲間たち―作家トーベ・ヤンソンからの贈り物―

お盆は夫の実家に帰省。その間、山梨県立美術館に行ってきました。

夏休みということで親子向けの特別展「ムーミンと仲間たち―作家トーベ・ヤンソンからの贈り物―」というのをやっていた。ここにあるミレーの作品もとてもいいので何気なく立ち寄ったのが、これがなかなかどうして大人向けの内容だった。原画を元にした、130点余りのデジタルリトグラフ、小粒でもスパイスの効いた作品ばかりが集まっていて見ごたえがある。登場人物の誰もがそれぞれに独特で、変な癖があったり、何か気になる興味深いキャラクターばかり。自然の描写力もすごい。海の大波の迫力とか、ムーミン谷の季節ごとの景色、ムーミン一家の家の間取り図の細かさにいたるまでどこにも手を抜かない。カラーの作品も、初版絵本の表紙も全部欲しくなる、食べたくなるような絶妙の色合い!まさしく神は細部に宿るのだ!

作者本人がムーミンの世界に夢中になっているのがよくわかる、愛情を感じる絵ばかりだった。世界の多くのファンを虜にしてしまう秘密はそこかもしれない。往年のファンには常識なのだろうけど、私は作者のトーベ・ヤンソンを女性だったことすら知らなかった。若いころから「グラム」という風刺雑誌の表紙で、ヒトラーやスターリンの風刺画を描いていたらしい。風刺画の片隅に小さな小さなムーミントロールが顔をのぞかせている絵もあった。深い人間に対する洞察力があるからこそ生まれた鋭い政治批評と、愛すべきムーミン一家が暮らす理想郷、ムーミン谷の世界。

つらいことから目をそむけず批判精神も持ちつつ、いつもユーモアと愛情も忘れないで。というトーベ・ヤンソンからのメッセージを感じた。親子連れやファンの人たち以外にもぜひ知ってほしいこの世界。彼女の書いた小説も読んでみたいのです。

 


神保町で「版十展」

 10数年前、ぴかぴかの社会人1年生だった私の勤務先は神保町。気づけばその魅力にどっぷりはまり、6年後、会社の移転とほぼ同時に転職を決めたときには会社が移転するから辞めるんだろうと疑われたものです。その後、色々な場所に勤務したけれど、神保町以上の街はめったにないです。昨年「チルチンびと」編集部との出会いを機に、再びこの神保町を訪れる機会が増えました。ここは一週間、いや一か月でも毎日違う店で美味しいカレーが食べられる、カレー天国。老舗の素敵な喫茶店もたくさん。かつて私(の胃袋)を支えてくれた街。そして膨大な古本屋がひしめく、知的好奇心をも満たしてくれる街。

 そんな愛すべき神保町の老舗文房具屋&ギャラリー「文房堂」にて、友人の節風歩(せつ かざほ)さんから版画展をしているとお便りをいただいたので、観に行ってきました。せつさんには以前お仕事でイラストを描いていただいたことがあり、「思いっきり変な怪人みたいなキャラクター」をオーダーしましたが、どこかぽわんとして、可愛くてとぼけていて、思わず笑ってしまうゆるーい独特の世界。淡い色が重なり合ったところに、ワンポイントがくっきりと浮かび上がる感じなどは版画ならではの味わいなんだろうと勝手に想像してますが、そのせつさんらしさは変わらず、とても素敵な作品でした。

グループ展なので個性の違う作品を色々観られるのも面白いです。10人の女性による「版十展」は8月13日(土)まで。ノスタルジックな夏の版画展で、涼しい気持ちになれますよ。 神保町散策がてらに立ち寄られてみてはいかがでしょうか。

 


日本の美に気づく

 

「風の旅人」という雑誌の編集長のブログ、7月30日の「物事が変わる節目」にちょっと感動してしまった。この中に「現在の日本に覆い被さっている西欧の形式だけを借りたようなシステムが、日本人本来の良さに蓋をしてしまう結果になっているのではないか」という記述があった。ここ、チルチンびと広場の「古道具屋の西洋見聞録」でも、著者の塩見さんは日本人と西洋人のメンタリティや習慣が違うのに、外見だけとりいれることに疑問を感じている。岡倉天心は100年も前に「諸君は心の落ちつきを失ってまで膨張発展を遂げた。われわれは侵略に対しては弱い調和を創造した。諸君は信じることができますか、東洋はある点で西洋にまさっているということを!」と言っている。

昨年、夏の終わりに京都旅行をした際、聴竹居を訪ねた。モダンな中にも日本的情緒をたっぷり残した外観。室内に流れる静謐で凛とした空気。単なるシンプルとも違う、飾り立てるのとも違う、細やかな視点での「美しい無駄」がところどころに散りばめられている。暮らしやすさを工夫した設計には発見がたくさんあって面白い。ことさらに「和」と「モダン」をうまくコラボレーションしました!みたいなアピールがなく無理のない美しさを追い求めていったらここにたどり着いたという自然体。折り目正しく誇り高い中にも、謙虚さも可愛らしさもあって・・・日本人が本来持っているはずの美意識が確認できるような、効率化を追い求めて忘れてきたものを立ち止まって思い出させてくれるような、静かで美しい場所だった。

 

本日発売の68号「チルチンびと  花の庭、花のしつらえ」の特集「響きあう花と“聴竹居”」では、むやみな西洋の模倣を滑稽と感じ、現代を生きる日本人の理想の住まいを作ろうとした建築家・藤井厚二が、今の日本に語りかけるものとはなにか、をこちらの保存活用の第一人者である松隈章氏が解説しています。花とともに撮った「聴竹居」の美しい佇まいが印象的。ぜひご覧いただきたい、素敵なページになっています。

 

 

 

 

 


群馬県縦断!

本日は川場村~渋川市~前橋市~高崎市~太田市と周ってきました。川場村の築200年になるという古民家を移築してつくったという悠湯里庵は、建物だけでも一見の価値ありです。泊ってもみたいし、日帰り温泉を楽しんでから近くのティア・ツリーさんで自家製農園のメニューを堪能するというコースもよさそう。オオガネホームさんにご紹介いただいたTEA HOUSE SPARROWSも美しい庭を眺めながら、木の香りのする広々とした空間で美味しい紅茶を優雅に楽しめる素敵な場所でした。そのほかにも色々なお店に出会えました。チルチンびと広場上にてご紹介していきますのでお楽しみに。

茅葺屋根の古民家を移築した、風情ある温泉

取材の終わりごろに訪ねた太陽百年建設さん、突然の訪問だったにもかかわらず、しかも朝から茨城まで木を見に行かれていたにもかかわらず、さらにさらに、豪雨に打たれて全身びしょ濡れだったにもかかわらず!快く迎えてくださいました。そして工房内にひしめく材木、木を加工する機械の数々について嬉しそうに説明をしてくださいました。工房はずいぶんと広くて横に長ーくなっているなとは思ったのですが、ガレージに入りきらずどんどんアメーバのように増殖していったそうです・・・大工歴45年という櫻井さん、たゆまぬ好奇心と探究心で各地の木に出会いに行く、本物の「木オタク」です!印象的だったのは「今日は何もないかなと思っても、出かけてみるとなにか面白い人や物事に必ず出会う、だからじっとしていないで出かける」「期待されているな、と思うとそれ以上のことをしてあげようかなと思う」という言葉。

 

見学の後は「馬鈴薯」さんというお気に入りのレストランに連れて行ってくださいました。「ぜったいに口にいれても安心といわれるものを出したいから野菜も果物もすべて無農薬で手作り」「ソースは三日かけてつくるから体調のいいときでないとつくらない」と語る料理一筋30年のご主人は、根っからの職人肌、でもとても温和な雰囲気の方。サーブしてくださる奥様との息もぴったり、アットホームで暖かい雰囲気のお店です。店内のいたるところにものづくりびとの心意気を感じるご主人手作りの木工細工がちらほらとならんでいるのもキュートです。自家製野菜のサラダ、とろけるようなシチューがたっぷりと詰まったパングラタン、ほっぺがキューッとなるぐらい酸味のしっかり残った自家製ラズベリーのタルト。何をいただいても、濃厚な素材の風味が身体に沁みわたりました。

 

見えないところに手を抜かないで、アクティブに仕事を楽しむ姿勢、それを何十年も続けてらっしゃるお二人はとても波長が合うみたい。聞いていてこちらも背筋の伸びる思いがしました。「チルチンびと広場」も見習いたいです。日本の若者もがんばらないといかんですよ。元気いただきました。丸一日慣れない土地を運転してくれたわが社のコーデナー、a-vanもそんな出会いのあった初出張を楽しんでくれたようです。おつかれさまでした!

 

パングラタン美味!

ご主人てづくり子犬

ご主人てづくりポスト

ご主人てづくり引出し

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「SCUGNIZZO」さんにいってきました

 

タイルびとやvigoと共にパウル・クレー展を見に行った後、場所がちょうど近かったこともあってルーラルカプリ農場さんのチーズが食べられるという「SCUGNIZZO」さんへ行ってきました。
材料は北海道、北陸、北関東・・・さまざまな場所から厳選して仕入れられたフレッシュなものばかり。今回われわれの一番のお目当てはこれです。

「岡山ルーラルカプリ農場山羊フロマージュブランと群馬 『湯あがり娘』枝豆のクリームソース‘カサレッチェ’」


濃厚でクリーミィなのに後味がさっぱりしているルーラルさんのフロマージュブランと普通の枝豆よりもずっと大きく、色も鮮やか、味もぐっと濃い「湯あがり娘」の絶妙なハーモニー!どちらの材料も主役級の存在感のあるソースが溝のあるショートパスタ、「カサレッチェ」にとってもよく合っていて、夏にふさわしい爽やかなクリーム系パスタでした。しかし湯上り娘とは色っぽい名前をつけましたねーいったいどこが湯上りなんでしょう?お肌つるつるっていう意味かな?あやかりたいものです。。。

前菜でいただいたカプレーゼのトマトも信じられないくらい甘い!メインでいただいた白子にハムを巻いてソテーしたのも甘みがあって癖がなくてふわっとして、、、添えられたレンズ豆の煮込みとディルの風味が最高に合っていて贅沢なお味。食後のラズベリーソルベにもルーラルさんのフロマージュブランが使われているということでした。ちょっとコクがでてリッチな味わいになるんですね。

ワインもお料理も、すべてリーズナブル美味しく、こぢんまりとした入口からは想像がつかないくらいゆったりとした店内です。少人数でも大勢でもよさそう。事務所からも近いしまた絶対行っちゃいます!

 

パウル・クレー展は、「おわらないアトリエ」というだけあって見ても見ても終わらない迷路のような展示。時代順に見てもいいし、好きなところから見ても構わない感じが自由でよかった。知っている作品はほとんど登場しておらず、そのかわり新しい発見がたくさん。素描と色づけされたものを同時に見られたり、切断された作品の元を見ることができたり…創作の秘密を覗き込んだ気がしました。糊絵具をつかって紙がくしゅっとなった質感や、額縁もふくめたバランスなど、ツボ過ぎる!!というのもいくつか。画集などでは絶対に再現できないので記憶にとどめるしかないですね。所蔵作品展「近代日本の美術」+緊急企画「特集 東北を思う」、小企画の「路上」もとてもよかった。7月31日までです。



 


フェアプレイ!

 

なでしこジャパン、おめでとう!!!からはじまった朝。

試合に勝ったことはもちろんものすごいことで万歳!なのだけれど、あきらめずに地道な努力を続ければ、思い描いた場所に到達できると証明してくれたことが、スポーツというジャンルも日本という枠も越えて世界の老若男女に力を与えた記憶に残る試合。トロフィーよりも輝いている、宝物みたいな選手たちでした。長い年月をかけて好きな事を追いかけてきた信念は、淡々として強くて、どんな大きな障壁にも絶対に潰されない。その感じが最高にかっこよかった。

 

土曜日、「森林を守る」の著者、滝口先生にお声をかけていただいて、ウッドマイルズフォーラム2011にお邪魔してきた。

LIFE311という活動を通して地元産の木材を活用しながら岩手県住田市に木造仮設住宅を建設してきたモア・トゥリーズの水谷さん、震災の直後からペレットストーブ支援を実施し、今後は地元の大工さんらと宮城県登米市に共生住宅を建設中の栗駒木材の大場さん、震災後の廃材を再利用した「復興ボード」を復興建築物に利用するべく開発を進めている岩手県立大学の内田先生、学生による生活復興支援プロジェクトとして地元の人たちの協力を得ながら、岩手県大船渡市と宮城県石巻市に木造仮設公民館を建設した東海大学の親松さんと下田さん。

震災の直後から木造仮設住宅を計画し、現場と密接に寄り添ってきた4つのリアルな現場報告は、実際にその建物に住む地元の人々の声や、制度との戦いなど整理しきれていない未解決部分も含めて、行動がそのまま率直な言葉となった、非常にわかりやすい内容だった。

融通の利かない制度が復興のスピードを妨げることは本末転倒。住民の声を素早く聞いて動こうとする個人やNPO、民間企業の地道な支援のほうが、小さな動きであったとしてもずっと速く支えになっている。でもやはりスピードに限界があって、本来ならそこを助けるのが制度なはず。むしろ状況よりも先を読んで、柔軟に変化してくれるものと、利用する側は期待している。なのに現実は・・・な話ばかりだ。報告のあった4組の活動やその他全国で行われている無数の有形無形の支援を、ひとつでも無駄にしたらもったいなすぎるのだ。

 

最後に聞いたオーストリアのバイオマス事情の話も興味深かった。バイオマスが、自然エネルギーの60%近くを占めるオーストリアよりも、日本はもっと森林資源の潜在力が高いそう。午前中に別の勉強会では偶然メタンハイドレートの実現化へ向けてのビデオを見せてもらった。同じ日に続けてそんな話を聞いて、日本が案外エネルギー資源の宝庫であることを知った。それも、第二次世界大戦が終わっても国民投票で原発廃止を決め、自然エネルギーの問題点の改良に努めたオーストリアの信念と、バブル真っ盛りの中批判を受けてもめげずにメタンハイドレートの研究を続けた東大増田教授の信念の賜物。

 

コレ!という将来への理想を思い描いたら、めんどくさがらず、あきらめず、地道にコツコツと進む。そんな時代の先駆者たちが気づいたら増えている。年齢もさまざま、経験もあまり関係なく、ある日ある事に気づき、その日から行動してただひたすらに信じて続けるというシンプルさが、かっこいい。

 


「工悦邑」の夏

先週の木曜。仕事が終わってから出発して、東京から約8時間。
岡山に着いたのは丑三つ時もとっくに過ぎたころだった。
車のライトを消すともう真っ暗。ゴウェーーッ。ゴウェーーッ。
という重低音がするので「この音何?エンジン切ったのに?」
と聞くと、ウシガエルの鳴き声だという。カエルといっても
ゲコゲコとかケロケロなんてものじゃない。グエーーーッ。
ゾワっと不快な重低音があたりに不気味に響く。
正直、着いた瞬間に帰りたくなった…「それでもチルチンびとか」
とつっこまれる。ホントに情けないのですが虫も爬虫類も怖い。
窓にヤモリがいる。ヒャー。というと、能登育ちのvigoが
「ヤモリは家を守るんだから嫌うとバチが当たるんだからね。」
とおばあちゃんの知恵袋のようなことを言う。

前途多難かと思われた岡山滞在だが、翌朝の気持ち良さといったら…

晴れた空、済んだ空気、きらめくような若草色や濃い緑の木々。鳥の声。
マイナスイオン浴びまくりの世界なのだ。

 

今回の岡山・広島訪問では、タイルびとのご両親である
陶芸家の白石斉さんとイコン画家の白石孝子さんが暮らす
「工悦邑」という、芸術村に滞在させていただいた。
20年前からこちらで創作活動をしているそうだ。
すごいところだとは聞いていたけれども、想像を超えていた・・・
高速を降りてしばらく走り、住宅街を抜けて、山中に入っていく。
鬱蒼とした草のトンネル抜けたところにその村はある。
全国80か所もまわって「ここだ!」って思ったみたい。
どうすると「ここだ!」って思えるのだ??というほど
ものすごい山の中だ。初めは本当に何もなくて、
背の高さほどもある草をかきわけて進んでいたらしい。

お宅は、高い天井と独特のアーチを描く漆喰の壁。
玄関を開けると等身大のイコン画が迎えてくれる。ここはもう日本ではない。
リビングには陶器が並ぶ。ブルーを基調にした器や、タイルのような作品。
陶芸工房は別にあり、こちらは木造で風が気持ちよく抜ける。
昔制作したというレトロなタイルの一部分や、もう絶版になっているような画集、
100年前のペルシャのタイルなど、お宝が無造作に転がっている。
何時間でも過ごせそうな居心地のいい工房だった。

朝ごはんには自家製の味の濃い野菜のサラダをいただく。
シンプルにオリーブオイルとワインビネガーだけでとても美味しい。
朝ごはんを食べながら、例のウシガエルやヌートリアといった
戦時中持ち込まれた外来種がこのあたりの生態系を崩したり
植物を食べてしまう話という話を聞く。
やはりウシガエル、悪いヤツだった。。

他にも岡山のクラフトマン事情や伝統文化を教えていただいたり、
若手の方が新しい作家さんを発掘していくような気鋭のギャラリー
を紹介してくださったり、ルーラルカプリ農場さんにも
連れて行ってくださったりと、短いけれど濃い時間が過ごせた。
アーティストって全然歳をとらないんだな。と改めて思う。

同行してくださった福富建設の田林さん、瑞々しい好奇心で
一緒に周れて楽しかった。工房でろくろを回すイメトレ姿もなかなか
サマになっていて…新進気鋭陶芸家の卵が誕生する日も近そう!

いつもながらの東京時間を引きずるびっしり行程だったけれど、
広島でも岡山でもゆっくりと流れる時間を所々で過ごせたので、
あまり疲れを感じなかったどころか、なんだかまだまだ元気。

工悦邑のマイナスイオンを持ち帰ってきたのかもしれない。