ムーミンと仲間たち―作家トーベ・ヤンソンからの贈り物―

お盆は夫の実家に帰省。その間、山梨県立美術館に行ってきました。

夏休みということで親子向けの特別展「ムーミンと仲間たち―作家トーベ・ヤンソンからの贈り物―」というのをやっていた。ここにあるミレーの作品もとてもいいので何気なく立ち寄ったのが、これがなかなかどうして大人向けの内容だった。原画を元にした、130点余りのデジタルリトグラフ、小粒でもスパイスの効いた作品ばかりが集まっていて見ごたえがある。登場人物の誰もがそれぞれに独特で、変な癖があったり、何か気になる興味深いキャラクターばかり。自然の描写力もすごい。海の大波の迫力とか、ムーミン谷の季節ごとの景色、ムーミン一家の家の間取り図の細かさにいたるまでどこにも手を抜かない。カラーの作品も、初版絵本の表紙も全部欲しくなる、食べたくなるような絶妙の色合い!まさしく神は細部に宿るのだ!

作者本人がムーミンの世界に夢中になっているのがよくわかる、愛情を感じる絵ばかりだった。世界の多くのファンを虜にしてしまう秘密はそこかもしれない。往年のファンには常識なのだろうけど、私は作者のトーベ・ヤンソンを女性だったことすら知らなかった。若いころから「グラム」という風刺雑誌の表紙で、ヒトラーやスターリンの風刺画を描いていたらしい。風刺画の片隅に小さな小さなムーミントロールが顔をのぞかせている絵もあった。深い人間に対する洞察力があるからこそ生まれた鋭い政治批評と、愛すべきムーミン一家が暮らす理想郷、ムーミン谷の世界。

つらいことから目をそむけず批判精神も持ちつつ、いつもユーモアと愛情も忘れないで。というトーベ・ヤンソンからのメッセージを感じた。親子連れやファンの人たち以外にもぜひ知ってほしいこの世界。彼女の書いた小説も読んでみたいのです。