takeko

再び引っ越し

 

前回から1年を待たずして、GWは引っ越しだった。夫の仕事の都合で京都に住むことになったからだ。羨ましい。ほとんどの人にそう言われる。逆の立場だったら私も同じ反応をしたと思う。旅行や出張で訪ねるたびにいつかこんなところに住みたい、もしくは学生時代をこんな場所で過ごしたかった、と思ってきた。ただ、実際に暮らすとなるとなんだか敷居が高そうに思えるし、第一私は「はんなり」もしていないし・・・憧れと畏れが入り交じる、自分にとって少し遠い場所だった。ところがこんなに突然、こういう日が来るのだから、人生わかりません。

 

物件めぐりには1日半しか時間がなく、猛スピードで12軒ほど見せてもらったのだが、楽しかった。一戸建て、築年数不明。というのがたくさんあった。床は傾いているけど棚や欄間が最高に恰好好い物件だとか、体育座りしてもギリギリなぐらいお風呂が狭いけど畳が広々として抜けのいい町屋だとか、お隣さんが外国人アーティストらしき長屋だとか。京都に住むんだったら、ぜひそんな町屋造りの一軒家に住んでみたいではないか。そして“小さな「和」”“古き美を愛おしむ暮らし”をしたいではないか。土間に火鉢を置いたり掛け軸を飾ったり、洋画や映画のポスターでも意外に合うかも、とか。ひとつ見せてもらう度に夢のように妄想が膨らんでいたのだが、生まれも育ちも京都人の不動産屋Hさんが、「Gをはじめとするいろんな虫の出没率の高さ」と「ロシア人も音を上げた寒さ」について教えてくれ(年下の方だったけど、親心だと思う)、最初の威勢はどこへやら。己のヤワな育ち方を恥じつつ「町屋はいつかまた・・・」と、すんなりハードルを下げた。

 

それでも、マンション暮らしを選ぶのは自分に負けた気がして悔しいので、小さいけれど感じのよい一軒家に決めた。少し歩けば哲学の道という、緑に溢れた素晴らしいロケーション。住み始めてまだ数日だけれど、正直、日々歩くたびに顔がゆるみホレボレ、デレデレしてしまうぐらいいいところ。但し、山に近い=虫にも近い。狭い庭があるのだが、2mほどの草がボウボウに生い茂り、夫が草を刈ると大ミミズが出た。「いい土の証拠だよ」とブドウ農家育ちの強さを発揮している。洗濯物をそのスペースへ干すしかないので頻繁に庭に出るのだが、大きなヤモリみたいなトカゲみたいなのとかアリとか蚊とか確かにいろいろいる。昨日は赤いダニのような形をした小さい虫がいっぱいいたので調べてみたら「タカラダニ」というのだそうだ。この時期出て、自然に7月には消えていなくなるという。噂に聞くムカデには、まだ出会っていない。真剣になぜあんなに小さな虫が怖いのかを考え、大きい! と感じるものでも私のほうが何千倍も大きく、あちらのほうが怖いに決まってる。と自分に言い聞かせても克服できず。自然と共生できないダメ人間のように情けなく感じる日々である。

 

ほんの少しくらいは、近づきたい。

 

 

 

 

 


オリジナル徳利、届きました。

 

先日の多治見出張の際に成宝園にてつくっていただいた徳利が焼き上がり、届きました!

 

きゅっとしまった首、なだらかな肩の線。つやっつやの胴体。いい具合です。

「とくりとくり」という、酒を注ぐ音が徳利の語源だという説があるらしい。ポン、と栓を抜く時の小気味いい音も心をくすぐります。夏に向け、冷たいお酒をきゅーっと一杯。くーっしみるねぇ・・・と、徳利を見ているだけで妄想が広がります。


見た目と、音と、味。器によって、お酒の愉しみもいっそう広がるものですね。

 


東海道中記 その2(四日市~伊賀~名古屋 編)

お会いしたばかりの京野桂さんに先月末、「東海方面出張に行きます!」とメールしたところ、なんと本当に泊めてくださることになったのだ。amcoさんから京野さんの手料理の美味しさやお住まいの感じを伺って、この訪問がますます楽しみになっていた。後半の2日間運転してくれたのはvigoの元同僚、タバタ君。貴重な週末を潰してつきあってくれました。

 

まずは、名古屋からスタート。昨日コンテナが到着したばかりというfavorに寄る。大ぶりの家具や、Lisa Larsonの置物や、生活用品が広々とした店内にたくさん並べられていて、入口の緑も気持ちいい。パントリコで道中の腹ごしらえ用おやつを購入し、斜め向かいのcoffee Kajita へ。コーヒーを淹れる時、一つ一つ香りを嗅ぐ姿がとてもストイックな感じで格好良い。グラスや氷の形もすべて、ドストライクなアイスコーヒーでした。近くで偶然見つけたミュシカでvigoの血が騒ぎだす。こちらは北欧アンティークの店。HPにもあるとおり“世界の果てから流れ着いた詩的なモノ”に囲まれた、古きものの良さ、洗練、非日常を感じる。

 

詩的なミュシカさんの空間

四日市へ向かい、ゆるりでランチ。こちらは築85年の古民家を改築した、石窯パンとカフェのお店。その改修と石窯づくりの様子はブログでも拝見することができます。戸にはめこまれたステンドグラスも、ゆったりおかれた薪ストーブも、トイレのタイルも、根菜のグラタンや、手作りのピザも、すべていい味。文字通り、ゆるり。と過ごせるお店でした。その後、少し走ってトウジキトンヤへ。こちらはいいものを少しでも多くの方に知ってもらい、実際使ってもらいたい、使う人つくる人を繋げたいという思いから、東海地方を中心とした腕のいい職人さんに現代の家族や住まい、食卓に合った器をつくってもらい、卸している問屋さん。家を建てるとき地元の棟梁さんに『チルチンびと』を配られたから、雑誌はよく知ってたよ。と。そんな風に知らないところで支えられているんですね。ありがたいです。

ゆるりのランチ。根菜のグラタン

ゆるり。落ち着きます

トウジキトンヤの草深さん(左)と片山さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いよいよ伊賀へ。四日市から亀山のあたりは朝と夕方、激混みと聞いて下を走っていたのだが、途中京野さんのアドバイス通り高速に乗ったら意外にもスムーズ。インターを降りて農業屋(ここがすごい!苗の種類がすごい。ありとあらゆる種類の野菜。耕運機もある。ホームセンターと思いきや玄人向け)で待ち合わせ。ここからは迎えにきてくれた京野さんの後を走る。どんどん走る。ずんずん走る。カーブを曲がって、もうそろそろかな?と思ったらまだまだ走る。予想を何度も裏切られながら辿り着いたのは。大~きな古民家。

奥様が、初対面の緊張をまったく感じさせないようなふわーーとした雰囲気で迎えてくれ、離れの客人用のお部屋に案内してくださる。離れといっても大人3人、男女部屋別で広々泊まれる。もちろん家はもっとずっと大きく、広~い土間の扉をがらりとあけると、すでに京野さんが台所に立っている。早い。手際の良さが野菜を洗う音でもわかる。そして宴が始まった。お手製チャーシューにお手製茹で鶏、自作のパクチーと一緒に海苔やレタスに巻いて食べる!うまいッ!!スープ、春巻、クラゲの和え物、鯛のサラダ、そしてプロもビックリの花巻にイカと菜の花の炒め物。素人とは思えない。何者。そしてまた、このご夫婦がなんとも、いい。ボケているようでつっこんでいる奥様と、大将っぽいわりに突っ込まれ役の京野さんのやりとりが、たまらない。お二人の出会いや、陶芸を始めたきっかけに始まり食べ物の話、酒の話、焼き物の話・・・と話が弾み、気づけば夜の2時でした・・・。

翌朝、待っていたのは、畑で採れたアスパラや、玉葱の葉(初めて食べたが美味しい。見た目は完全葱なのに臭みはなく甘い)、菜の花。採れたての緑が眩しい!味噌汁も単なる手作りじゃない、なんと大豆を育てるところから始まっている超本格派味噌汁なのだ。しあわせな朝ごはんだった。食後、畑を見に行く。アスパラ、トマト、たまねぎ、にんにく、レタス、パクチーにブルーベリー。もぐらのトンネルの跡もあったりして。里山の空気を思う存分吸い込んだ。

 

お手製料理で団らん中。律儀にカメラに目を向けてくださる奥様

京野家の美しい朝食。野菜も、味噌の大豆も自分の畑で採れたもの

里山の風景が広がります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

京野さんの案内で、amcoさんの瓶の展示でお会いした井崎智子さんの御宅にお邪魔する。さすが、瓶だらけ。パートナーの尾花友久さんも作家さん、瓶でないものはだいたい尾花さんの作品だ。お二人が在籍していた陶芸の森のアートインレジデンスのお話しや、そこで出会った友人の家を訪ねたインド旅の話など。このお二人が、また京野さん夫婦に負けず劣らずな、いい組み合わせ。おっとりした京都弁が醸すゆるっとした雰囲気に、時を忘れそうになる。人って、出会うべくして出会ってるのだなあと思う。

 

焼き物やインドの旅の話など

次に案内してくれたのは伊賀焼伝統産業会館。ここでは穴窯を見学したり、さまざまな種類の伊賀焼作品や、歴史や工程を教えてくれるビデオを見たりと伊賀焼のイロハを知ることができる。その後、ギャラリーやまほんさんへご挨拶。思ったよりもずっと大きい建物で、現在展示中の「千皿展」(~6/2)は圧巻です。質も量も。陶器、鉄、ガラス、木と色々。これだけの作家さんが集まるギャラリー展示も他にないのでは。器好きの方、ぜひぜひお見逃しなく。名残惜しみつつ、ここで京野さんとはお別れ。ほんとうに、お世話になりました。

圧巻の「千皿展」@ギャラリーやまほん

 

途中、Jikonka でちょっと一休みし、関宿の重伝建地区を見学して、名古屋へ。金子國義さんの絵や、実際に欧米で使われていた義眼セットや、古い本、などちょっと不思議で怖くて強い存在感を感じるものが揃っているantique Salon さんと、うつわ[hase:ハーゼ]さんにご挨拶。haseさんではちょうど長谷川焼菓子店一日出店の日。お土産にいただいたシフォンとクッキーは甘さも口当たりも完璧な、絶品焼菓子。ごちそうさまでした! 開催中の山本亮平展(4/22に終了)では、清潔感、洗練、暖かさ、深み、など白い色の持つさまざまな可能性を感じさせられる器が並ぶ。

山本亮平展@うつわhase

その後、トロワプリュスを探していると、同ビル内にギャラリーフィールゼロも発見。6月に愛知県で開催されるしょうぶ学園イベントDMも置いてあり、このビルは感度高そうです。

最後に訪ねたのは、pas a pas 。本物の遊びを知り尽くしていそうなオーナーさんから、久しぶりに服を着せていただく。最近服を買いに店に行く機会が減っているので新鮮だった。コワモテな私に丸襟のブラウス!? と思いきや、着てみると甘さの中に辛さがプラスされ、少女と大人の中間、みたいな、いい雰囲気に見えるではないか。真逆のタイプのvigoが着てもさらに似合う、この不思議。気楽だけれど品が良く、遊び心があって文学的な香りもする「tashi」の服。ほかにも、靴や、ガラスの器、ホーローのボウルなど、酸いも甘いも噛み分けた、大人の余裕を感じさせる品揃え。帰りには、「今度来るときは東京に負けない美味しい店教えてあげるよ」と、雨の中外まで出て見送ってくださる、ダンディー。

「tashi」の服。ここにもダンディズム感じます

 

旅も終わり。今回運転を引き受けてくれたタバタ君は、少年が大志を抱く某大学建築学科卒の秀才ながら、チャンチャン焼きを50人前作ったり、体長70cmもの鮭を釣り上げて、そのお腹のイクラを醤油漬けをつくってしまう(相当おいしそう)生粋の札幌男児。現在は名古屋支社勤務のため毎週末、岐阜の山へ愛車スバルでスキーに繰り出すアクティブ派、そしてこんな(運転手にとっては)ハードな旅に快く付き合ってくれる、心優しきナイスガイ(独身←宣伝です笑)でした。本当におつかれさまでした。

そして4日間の東海道中出会った皆様、本当にありがとうございました。

 


東海道中記 その1(多治見~名古屋~岐阜~関 編)

高蔵の田立社長とは昨年「小梅の家」の見学会でお話しして、その面白キャラにすっかりハマってしまい(ちょっと文章では伝えきれないので、いつか動画でご紹介を・・・)訪ねる機会をうかがってきた。さらに7月発売予定の『チルチンびと 別冊東海版』も控え、白木建設 さんからもお誘いいただき、先日は伊賀の京野桂さんとの出会いもあり、今がチャンスと東海方面へ。今回も社長に運転手をお願いする我々!一日お休みをとっていただくことになり大変図々しいことではあるのですが、この予定をあけるためにかえって仕事が捗ったり(ご本人談です)、たまには違う観点から家づくりや暮らしの情報に触れられて発見があったり(ご本人談です?)と、いいこともあるさと言ってくださる。我々も普段見られない素顔が見られたり、地元のいろいろなことを教えていただいて、とってもありがたいのです。今後とも、全国の地域主義工務店の皆様、どうぞよろしくお願いいたします(礼)

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まずは田立社長の従弟の方が3代目を務める、創業明治30年の老舗窯元「成宝園」へ。こちらではなんと一週間で3千個の徳利を作られているというから驚いていたら、とくに多くはない、とのこと。お酒の銘柄を描いたものが多く、酒屋さんに卸すのだそう。vigoと私、絵付けならぬ字付けをさせてもらった。鉄を溶かした釉薬はもったりとして慣れるまで結構難しい。オリジナルで名前やイラストを入れられるので、お祝いや引き出物などにもよく使われるそう。好きな文字を頼めば、4合徳利、2000円(送料別)で作ってくれます。ご興味あるかた、ぜひお電話してみてくださいね!

絵付け中

右から高蔵 田立社長、成宝園 三代目成瀬寛さんと久恵さん

『チルチンびと』の徳利、つくっていただきました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらから車ですぐの「ギャルリももぐさ」は残念ながら休廊日。新緑の木立の中の外観だけ楽しんで、mekuriさんにご挨拶。同じ敷地内にある「カトリエム」を見学し、なぜ多治見にきてパスタなんじゃー。と言われつつ「hosizumipasta」で新鮮な野菜と山菜、魚介のパスタでランチ。美味。「市之倉さかづき美術館」内にある「ギャラリー宙」では、現在展示中のすずきあきこさんの絵本のような器が新鮮だった。 多治見を離れ名古屋に向かう。家具なども制作されている古道具さん「綯交」、昭和初期の建物が上手に生かされている着物と器のお店「月日荘」(2階にあるAnarogue lifeさんは残念ながらこの日お休み)、独特の本揃え「on Leading」、お隣のギャラリー「TAiGA」、こちらと同オーナー兼作家さんの、タルトとキッシュの店「metsa」、フランス人シェフの本格的パン&焼き菓子のお店「Le Plaisir du pain」・・・など市内をぐるり。
途中、お茶のときはココ! と田立さんおすすめの覚王山の「ザラメ」に立ち寄ったけれどドーナツは大人気で売り切れ。お向かいの「えいこく屋」のカレーにも心惹かれましたが、結局定番「コメダ」でちょっと休憩。名古屋の人は餡子がどれだけ好きかみたいな話を聞く。夜は手羽先!「風来坊」へ連れて行ってもらいました。意外とさっぱりしていていくつでもいける!ビールが進みます。

手羽先3人前!追加もしました♪

翌朝、岐阜へは名古屋から電車で20分。あまりの近さに乗り過ごしてしまった。戻ってみると駅も駅前ロータリーもかなり広い。天気がいいので金の銅像がトロフィーみたいにキラキラとしているが、かなり遠くに見えて詳細がわからないぐらい広い。(あとで白木社長に伺って信長像と判明)

ツバメヤさんもある「柳ケ瀬商店街」では、お昼をいただいた「ミツバチ食堂」、古いビルに様々なお店がひしめき合う「やながせ倉庫」、「アラスカ文具店」などこちらの商店街のメンバーを中心に“ハロー!やながせ”というプロジェクトが立ち上がっている。現在は4月30日まで「本とまち」をテーマにイベントが開催中。すぐそばの美殿町にも「まちでつくるビル」まちでつくるビルと銘打ったクリエイターが集まるビルがあり、まちづくり熱がじわじわと広がっているようです。駅の方に戻って、nutaさんとpandさんにご挨拶。どちらも静かで、ゆったりして、凛として、清潔。長く使えるいいものがきちんとそろっているとても感じのいいお店でした。

お店の歴史やおススメがよくわかるリトルプレス『柳ケ瀬BOOK』

岐阜駅から二つめ、朝乗り過ごした穂積という駅まで迎えに来ていただいて、白木建設さんにお邪魔する。広い材木置き場の一角には、子どもたちがワークショップでつくっている小屋がある。土間と柱、茅葺屋根まではできていて、これから竹木舞をつくり、土壁を塗る。小学生でもこんな風に土間からつくる本格的な家づくりが体験できるなんて、楽しそう!

白木建設さんから車ですぐのピネル工房は、こぢんまりとした小屋の中に本格的な機械が並び、椅子やテーブルなど大物から、スプーンなどの小物まで作られているそう。「うちに材木たくさんあるから、よかったら遊びに来てください」という白木社長の言葉に満面の笑みが広がるピネル工房の福田さん。池田山麓クラフト展 (4月20日に終了)や、フェアトレードデイ垂井(5月26日開催)など、年々大きくなってきているという地元イベントを教えて頂きました。

ナマステポーズのピネル工房福田さんと白木社長

その後、電気屋さんのご主人のお店の片隅で好きなものを集めて並べて16年、いつしかほとんどが雑貨屋さんスペースになってしまったという老舗雑貨店「ユーカリ」、オーナーが山梨で二号店を開かれるそうで、よく『チルチンびと』を参考にしていただいたというパン屋さん 「PAYSAN」を最後に、関名物鰻屋さんに連れて行っていただく。関の名産といえば刃物だけれど、鰻もかなり有名なのだそうで、美しい川に挟まれた土地ならではという感じ。大の鰻好き白木社長の一押し「みよし亭」、二押し「孫六」に振られ、もう一軒お薦めの「角丸」へ。皮がカリッカリで少し濃いめの味付け。一気に旅の疲れが吹き飛ぶ美味しさでした!

がっついて写真撮り忘れ。お店にあったフリーペーパーより

 

昨夜、田立社長の車にパソコン置き忘れたvigo・・・わざわざ犬山駅まで持ってきていただいたのでPAYSANで購入したお土産を渡すと「なんじゃ、餡パンくれるの?」と嬉しそう。「普通の餡パンやないわ。天然酵母!」と普段ジェントルマンな雰囲気の白木さんがつっこむ・・・そんな素敵なお二人に、最後の最後まで大変お世話になりました。 田立社長、白木社長、ありがとうございました!

 

(四日市~伊賀~名古屋編に続く)


かわいい江戸絵画

「かわいい」の語源は、「恥ずかしい」という意味をもった中世からの言葉 「かほはゆし(顔映ゆし)」 なのだと、今回の展示の図録にあった。

 

たしかに「恥ずかしい」という感情は不意打ちのようにやってくるもので、その瞬間、人は無防備で隙だらけ。その人らしさや本音が思いっきり露出する・・・そんな姿を見られるのは本人にとっては死ぬほど恥ずかしくても、他人からみるとかわいらしかったりする。また、赤ちゃんのように無条件なかわいさもあれば、拙さや未熟さを揶揄したかわいい、もある。アイドルみたいな狙ったかわいさもあれば、鬼や化け物など、怖くて面妖なもの、ヘンテコで可笑しなものの中にふとかわいさが垣間見えることがある。「かわいい」の範囲は、広くて深い。「かわいい」の乱用っぷりを嘆く向きもあるけれど、それは乱用せずにはいられないほど、さまざまな心の動きを代弁してくれる言葉でもある証拠なのかも。

 

そんな「かわいい」表現が、最初に絵画に現れ始めたのは、江戸の頃。それまで絵画に求められていたものとはまったく違う「おかしみ」「たのしさ」「遊び心」を追求し、テキトーな線を書いているようでいて恐ろしく鋭い観察眼と描写力を感じる。中村芳中の「蝦蟇鉄拐図」や仙厓義梵の「猫に紙袋図」など、茶目っ気たっぷりで笑ってしまった。美術館の中でこれほど話し声や笑い声がよく聞こえるのも珍しかった。楽しい展示に心がほぐれました。図録も秀逸。おすすめです。

 

 

「春の江戸絵画まつり  かわいい江戸絵画」展は府中市美術館にて、5月6日(月・祝)まで。常設の牛島憲之記念館も素晴らしいです。


connect取材、そして進化する完成見学会へ

週末、ノイ・フランク アトリエ那須を訪ねた。自給自足で有機農業を実践するアジア学院の豚をつかったハムや、ポトフに入れて煮込めば閉じ込められた何種類ものスパイスが広がるソーセージ、優しい醤油味のゼラチンが引き締まった淡泊な鶏肉を包むチキンローフ・・・など、どれもあっさりと甘みのある脂で後に残らず、塩分が少なくてしっかりとお肉の旨みと歯応えを味わえるものばかり。作家さんでもある店主の小出英夫さんのソーセージづくりへの情熱とこだわりについてのお話は、connect栃木(来週アップ予定)をご覧ください。

 

さて毎度のことながらペーパードライバーのvigoと私。今回は無垢杢工房㈱イケダ(以下、無垢杢工房)の池田光一社長に、恐れ多くも運転をしていただきました・・・せっかく那須まできたので「面白いところがあるんだよー」と数あるお店の中でも池田社長お気に入りの「創造の森」へ案内していただく。保育園も併設だそうなのだ。残念ながら時間が遅くて締まっていたけれど、なんともいえない複雑なブルーの壁と立体的な屋根は目を引く。これからの季節、外でお茶をしたらとても気持ちがいいと思う。ぜひ今度那須に来たら寄ってみたい場所。

 

宇都宮に戻り、池田社長が運営されているただおみ温泉へ。こちらのお湯は、さらっさらの源泉かけ流し。ぴかぴかに掃除が行き届き、澄んでチリひとつ浮いていない。個人的に茶色い色のついたのとか、乳白色とか、あんまりトロミがあるのとか、硫黄の臭いとかがやや苦手なので温泉ツウではない私だけれど、不思議に疲れがスーッと抜けていくお湯。41度と湯加減もベスト!ぜひ、お近くにお立ち寄りの際は、寄ってみてくださいね、ただおみ温泉。

 

翌日は「暮らしのdresser(ドレッセ)」へ。こちらは室内で予約制の料理をいただきながら行う新しいタイプの住宅見学会。会場となる「畦道の家」の設計担当、無垢杢工房の高山さんは、これまでも「ユカリノミチシルベ」で見学会の新しいスタイルを切り開いてきており、今回は第三弾ともいえるイベント。「ドレッセ」とは、フランス語で盛り付けるという意味。タイトルのドレッセは、盛付け・味付けというメッセージを込めた造語だそうで、どんな盛付けと味付けをされた見学会になるのか、予告を聞いたときから楽しみだった。「畦道の家」は、30数坪とは思えない広々した印象で、庭ありテラスあり薪ストーブあり和室あり、二階は将来子どもたちが成長したら仕切れるようになっている広々とした空間+隠れ小部屋(小屋裏収納)と、コンパクトながら暮らし充実・快適度数のかなり高い家。過不足なく、奇をてらうことをせず、和は和でも軽やかで、若い家族にぴったり。

 

野菜をふんだんにとりいれた「mikumari」の美しい料理が、明るいキッチンやダイニングに華と彩を添え、これから住まわれる建て主さん、また家を建てようとしている見学者さんたちのイメージはぐんと広がったのではないでしょうか。

こちらの見学会が実現したのは、イベントでいつも室内外のディスプレイを手掛けている夫婦で営む古道具店と雑貨店「古道具あらい」「アトリエジュウハチバン」のお客さまの自邸。荒井さんと建て主さんが「見学会をするならディスプレイを」と高山さんの知らないところで話が持ち上がり、そこから今回のような前代未聞の新しい見学会が生まれることとなったのだそう。これはもう、建て主さん、設計と施工をする側、ディスプレイを手掛ける側、料理を担当する側の感性がぴったりと一致し、なおかつ相当な連携プレーが必要。運営側もかなり大変なイベントだったと思うけれど、見学に来られる方たちの雰囲気や、食事を心から楽しんでいる様子や、真剣に高山さんに質問を繰り返す姿を見ていると、価値観を共有できる人が自然と集まってくるものだなぁと感じられて、何事もチャレンジって必要。と改めて感じたのでした。

帰り際、「古道具あらい」「アトリエジュウハチバン」に立ち寄り、vigoは鏡を購入。私も1点お取り置きしていただいてます。しばらく来ぬうちに、敷地内にフレンチレストラン「Le Poulailler」がopenしており、こちらもまたさらに魅力を増しています。

最後まで我々に振り回され大変だった池田社長、そしてノイフランク小出さん、高山さん、ありがとうございました!

 

 


「京野桂 陶展」「近正匡治 ムシャムシャ武者展 2013」へ

 

京野桂さんが伊賀からいらしているというので、根津のギャラリー汐花さんを訪ねた。日常的に使ってほしい、という京野さんの器。土は畑の下から採ったものだそうで、そのせいもあるのかどうなのか、大地の恵みを乗せるのにぴったりの温かみのある器ばかり。食卓に並んだ時の様子がすぐにイメージできて使いやすそう。卵色、桃色、水色など淡く控えめな色化粧をした器、厚みがあって柔らかい感じにしても、お名前の雰囲気からしても、勝手に女性だろうと思っていたので、ご本人に会ってびっくり、イメージと全然違う。

大将! っていう感じの京野桂さん

でも、お話ししているうちに、人あたりの柔らかさとか面倒見のいい感じやふくふくとした手の感じとか、やはり器と作家さんは似ている。汐花の店主さんや同時開催の近正さんのことも紹介してくださったり、細やかな心遣い。その人の好さにつけこんで、伊賀訪問時には、周辺を一緒に巡ってくださるという約束をちゃっかりとりつけるvigoと私でした。

話し込む京野さんとvigo

 

同時開催のもう御一方、近正匡治さんの作品は、一度見たら忘れられないインパクトある彫刻。

ちょっと憮然とした子どもたちの表情、たまりません

 

桜餅の香合です。微妙に違うユニークな顔

汐花の店主ご夫婦もいらっしゃいました

 

立体の絵本を見ているよう。どこからこの発想が湧くのか聞いてみると「これ結構普通ですよね」と・・・そう!? 桜餅の顔が香合になるとは、結構飛んでる感じがしましたが。薄い桜の葉とか、繊細極まる技の賜物。なのにペロッと一枚何気なく乗っかっているようなさりげなさに、よけい凄みを感じます。

 

近松匡治さん。ムシャ人形とともに

  

「京野桂 陶展」「近正匡治 ムシャムシャ武者展 2013」は、3月31日(日)まで。30日、31日の週末は、お二方ともに在廊日。お話を聞けるチャンスです。お花見の途中に、立ち寄られてみてはいかがでしょう。  

 

 

京野さんの器でアヒージョを作成。直火にかけても取っ手が熱くならない優れものでした

 

 


「九州ちくご元気計画 SPECIAL EXHIBITION」

ヤブクグリでお会いした江副直樹さんからお知らせをいただいていたのを思い出し、「九州ちくご元気計画 SPECIAL EXHIBITION」にお邪魔してきました。

ブースには、私とvigoにとってはもうおなじみ、うきは百姓組さんのドライフルーツや夜明茶屋さんのむつごろうラーメン、他にも江戸時代からの製法を守りつくられる内野樟脳さん、元気の出そうな山の神工房さんの黒にんにく醤油漬け、翔工房さんの紡ぎ独楽・・・と、気になるモノがいろいろ並んでいます。

「ちくご元気計画」は厚生労働省の雇用創出プロジェクトだけれど、一般的なワードやエクセルの習得などハード面のサポートと一味違って、こちらは「商品の力だめし講座」「ネットで活用写真講座」「おふくろの味郷土料理研修」「おもしろ海産物開発研修」・・・など具体的で、面白そう。講師陣にはべジキッチンさんもいらっしゃいます。こういう魅力的な商品づくりのプロたちの視点でアドバイスを受け、つくり手たちが自力で創意工夫を重ねて魅力的な商品を育てていくことが、このプロジェクトの目的。プロジェクトが終了しても、ものづくりは終わらないから、講師陣もスタッフもつくり手と一緒にものづくりの現場に密着し、支え、ていねいなコミュニケーションを繰り返しながら自立を促す。それは、伝統を守りつつも大きな改革でもあり障壁の連続だけれど、その苦労を引き受ける人たちが相当数集まって一丸となって、大きな子育てをするように取り組んでいらっしゃる。すごいことです。課題は何年後何十年後のさらに先まで、これをどう持続していくか。例えば「元気計画」出身の「うなぎの寝床」さんたちが選んだのは、そうやって生み出された商品を世に出す空間を、地元につくることでした。また、元気な地元のお母さんのいるところは伝える力がものすごくて半端ないのだそう。女は強いのです。さらに注目すべきは、柔軟で吸収力があってアイデアと行動力いっぱいの3代目。たしかにこの世代、山形の森の家さんや、和歌山の高田耕造商店さんも頑張ってらっしゃいます。

これからも、どんどん魅力的なものが出てくるので、待っていてください。とブースでずっとご案内くださった「ちくご元気計画」主任推進員の加藤晃一さん。興味深いお話しをたくさん、ありがとうございました。今後何が登場するのか、とても楽しみです。

 

こちらのイベントは3月24日(日)で渋谷ヒカリエ8F aiiimaで開催中。期間終了間際ではありますが、明日23日(土)には、地方の現在と未来を掘り下げる『いまローカルを考える』というトークセッション(無料・要事前予約)も行われます。ちくごの元気を感じに、ぜひ、行かれてみてください。

 


早起きは三文の得!

昨年の秋におうかがいした「おいしい週末ライオン市」。食材、雑貨、植物、食堂・・・どれも魅力的なshopばかりが浅草の昭和初期築のライオンビルに集い、充実のイベントだった。主宰者の柴山ミカさんは、編集ライター兼プランニングディレクター。生来の食いしん坊と朝市めぐり好きが高じて、とうとう自分で食の市を企画運営するようになったという、素晴らしい行動力の持ち主なのだ。柴山さんの口から聞く市の話は、たとえとても小さな市でもなんだか面白そうに思えて、行ってみたくなる。この伝染力、逃すまじ! ぜひ市の魅力を伝えて欲しいとおねがいした。

 

その柴山さんから「朝市、一緒にいってみますか?」というお誘いがあり「行きます行きます」と二つ返事で、前から気になりつつ今回が初訪問という朝市に同行させてもらう。この日は、とある神社の朝市。土曜の朝九時。海辺の街に降り立てば、潮の香りが漂う。日差しがまぶしい。いつもの休日ならまだまだ寝ている時間のはずで、のっけから非日常な感じ。市には、採れたての野菜や海草、美味しい珈琲やさん、ドーナツやスコーン(あっというまに売り切れて食べそびれた)、手ぬぐいや雑貨が並び、青空の下、ついついお店の人とも会話は弾み、財布の紐も緩み、買い物袋はどんどん膨らむ・・・柴山さんは、さすが朝市の達人で、いつのまにか周辺の新たな市情報を仕入れたりしている。

 

お店の方からいろいろな話を引き出す柴山さん

 

 

たっぷり市巡りを堪能しても、まだ正午。そろそろお腹が空いてきた。「映画の観られるすごくいいカフェがあるんです。前に行った時は、映画に出てきたメニューを食べられて、野菜がすごく美味しくて・・・」と案内してもらったのは、 CINEMA AMIGO さん。静かな住宅街に、ガラス張りの木造りの建物が見えてきた。

 

CINEMA AMIGO外観。ワクワクさせる風情

ランチタイムはスクリーンは下りていないのだが、大きなスピーカーがあったり、いろんな形の椅子や机が全部、前方を向いているので、確かに映画館らしい。アンティークなムードの中に、赤い壁の喫煙室があったりして洒落ている。ランチを待つ間店内を探索しながら、ふと顔を上げると、キッチンカウンターに見覚えのあるスパイラルパーマの人が・・・なんと、3~4年前に定期的にお仕事をご一緒していたフードコーディネーターの上樂由美子さんがいるではないか!!! 一瞬目が合い、お互いしばらく絶句の後、「えーっ!!どうしてここに!?」と同時に叫ぶ。聞けば、2年ほど前に逗子に移住されたのだそう。こちらのシェフは日によって替わるのだが、たまたまこの日のデイリィシェフが上樂さんだった。すごい偶然! 呼ばれた! という感じ。

 

キッチンの中の上樂さん。変わらない頭部のシルエット

 

そういえば当時から都会に住みながら週末だけ田んぼを借りて農業をされていたり、アフリカで観た皆既日食の話をしてくれたり、ナチュラルでファンキーで素敵な人だったけれど、一層その雰囲気に磨きがかかって、すっかり逗子の住人になっていた。いまは広告の仕事を少しずつ減らし、レシピ提案、ケータリングやお料理教室にシフトしているんだそう。とても自然な流れだと思う。彼女のつくるご飯は、見た目が美しいだけじゃなくて心から満足のゆく味わいだ。

バンズもお肉もしっかり真面目。ポテトは甘く、ピクルスのひとつひとつまで、絶品

地野菜のサラダ、デリ3種、蕪とセロリのポタージュ、キッシュ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

映画のラインナップも、小粒ながらもキラリと光る良質の作品や、これは観ておいて! というこだわりが伝わってくるよう。映画だけじゃなく、上樂さんを含む「AMIGO KITCHEN」というフードクリエイター集団が交替でシェフを務め、映画に合わせたメニューを出したり、ライブイベントなど、ここはいろいろな人が集まってくる逗子の“情報発信基地”なのだ。プロデュースしているのは館長の長島源さん。すらりと長身で、穏やかな感じの方。スタッフの女性も、ジュリーアンドリュースみたいなワンピースを着ていて、スタッフ皆さんの雰囲気ごと、空間ぜんぶが映画みたい。ゆるゆると過したい休日にはぴったりの場所です。日田リベルテさんでも感じたけれど、大好きなミニシアターが次々に姿を消すのがさみしい昨今、地元愛に満ち、新しい文化を生み出すこんな映画館が、もっともっと増えてほしいなあと心から思う。

 

そろそろ帰ろうかと時計をみるとまだ14時過ぎ。これから帰ってもまだ一日はたっぷり残っている。なんて有意義な一日の過ごし方だろう。嬉しい再会もあり。早起きの甲斐がありました。朝市巡り、ハマりそう。そんな市の魅力をたっぷり教えてくれる、柴山ミカさんのコラムは、来月スタートです。どうぞお楽しみに。

 


「よるとおどろう」

 

ミロコマチコさんの絵は、やぶさいそうすけさんのところではじめて出会い、そのパワーとスケールの大きさ、自由で無垢な感じ、子どものころの感覚、はじめてなにかに出会った時のドキドキ、ワクワク、面白い、怖い、不思議・・・みたいな感覚がそのまま思い出せるような絵に惹きつけられてしまった。 昨年出された絵本『オオカミがとぶひ』も動物たちや夜の迫りくる感じ、迫力でしたが、今回の“ミロコマチコの世界 「よるとおどろう」展”もまた、夜の闇が踊り子や動物たちの躍動感をよけいに引き立てて、サーカスに紛れ込んだような夢の中みたいな不思議な世界が広がって、ミロコワールド炸裂です。

ワニ使い 「よるとおどろう」展 JIKE STUDIO

 会場となるJIKE STUDIOさんは、のどかな田園風景が広がる寺家(じけ)ふるさと村の山里の中の一軒家。ミロコさんの世界にふさわしい場所でした。

 

真ん中にはどどーんと先日のワークショップ「でっかいクジラがやってきた」で、子どもたちと描いた大きな大きな鯨の絵が置いてあります。色・色・色の洪水!エネルギーがほとばしっていました。ギャラリー奥の、動物シリーズも迫力。大きなムササビ、いつか連れて帰りたいです。何度もぐるぐる見て回り。

 

3月17日(日)の14:00~と17:00~には『オオカミがとぶひ』の人形劇(予約制)も。ミロコさんご本人も出演されます。「よるとおどろう」展は、3月25日(月)まで開催されています。よると、どうぶつたちと、踊れます。

ヒヒ君、ラマ君、ヤマガメ君・・・たちを連れ帰りました