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「いわてんど」に行ってきました

渋谷ヒカリエShinQs クラフトビューローで3月20日(水)まで開催中の、Holzさん&raumさんの期間限定ショップ「いわてんど」に行ってきました。「てんど」とは方言で「手作業、手際」というような意味だそう。岩手を中心とした東北地方の手仕事がぎゅぎゅっと集まる空間を、店主の平山貴士さんが案内してくれました。

まずはHolzさんオリジナルの家型ペーパーウエイト。

 

南部鉄器や真鍮、漆、木工などの作家さんと共につくられています。形はシンプルですが、かなりの手間と技術が必要で、ひとつひとつ神経を使う製造工程なのだそう。手にしてみるとどれも見た目よりずっしりと重いです。そして気になったのが、入口にあるこの馬。

 

「忍び駒」といって、花巻地方で古くから縁結びや子孫繁栄、五穀豊穣などの祈願の使い駒として円万寺観音に伝えられている藁の馬人形だそうで、本当は赤、黒、黄色のドイツカラーを纏わせたり鈴をつけたりして飾り付けるのだそうですが、こちらは、布と紐のシンプル衣装のHolzさんバージョン。また、福島の郷土玩具「赤べこ」も、Antique Showさんの手でちょっとモダンな「グレベコ」に。

 

緻密で繊細な藤澤康さんの木箱、美しい縞と軽さが使いやすそうな関口憲孝さんの器、思わず手に取って握ってしまう高橋大益さんの南部鉄器のクルミ型ペーパーウエイトや、柔らかい曲線を生かした田代淳さんの漆の器とブローチ、伊香英恵さんのシックで春らしいストール…など、伝統と新しさがセンス良く組み合わさった「てんどのいいもの」が並びます。

 

 

 

 

 

 

『てくり』も発見。眺めるだけで、ほんわかのんびりしてくる地元愛溢れるミニコミ誌。

 各地方に訪ねるたびにこういういい本を発見する機会が増えている気がします。創る側もとても楽しんでいて、取材や撮影をされる側も写真の笑顔がすごくリラックスしていて。その土地に生まれ育って(または移り住んで)毎日のように目にする出来事や風景でも、ちゃんと伝えたい残しておきたいと思う、自慢のモノ・コト・ヒト。そういう作り手の熱が入っていて、本から鼓動や体温が伝わってくるようで、いいなぁと思う。地元の方のレシピや、作家さんを集めた本など、てくりさんによるbookletもイイのです。

そして、この日なんと偶然、平山さんのお兄様であるヒマラヤデザインさんがいらしてました。DMのよさが光っていた今回の「いわてんど」。

こちらのDMデザインをはじめ、宮古名物いかせんべいのはかたやさんのパッケージデザインも手がけられています。このジャケ買い必至!の可愛いパッケージを囲んで、貴重な兄弟ツーショットしていただきました。

 

後半は奥様であるraumさんとお店番をバトンタッチされるそう。お店をされながらの長丁場の出店、大変です。この日は残念ながらなかったのですが、大人気の宮古のソウルフード「相馬屋」さんのパンの入荷もあるそう。気になります。ぜひ、自分だけの「いわてんど」を見つけに行かれてみてください。 今後も各地で開催されるそうなので、どうぞイベント情報をお見逃しなく♪

 


第1回 チルチンびと住宅建築賞 授賞式

第1回チルチンびと住宅建築賞の授賞式が、主催者の風土社で行われた。

まずは風土社代表・山下武秀氏の挨拶。「この賞は日本の住まいをより豊かにするため、そして地域からの住まいのデザイン、すなわち地域工務店のデザイン力が向上し、職人の仕事の活性化や林業の再生を目指し、競合に負けず、家づくりに関わることをもっと楽しむため、今年度から創設した賞です」とのお話。

続いて審査委員長の建築家・泉幸甫氏より「20軒ちかくの家を地域工務店とつくってきた、その経験からしても、やはりデザインができないとこれからは厳しい。とにかく図面を描くことが大切。今回3つも受賞した安成工務店にはいろいろな理由があるだろうが、社長に聞くと設計が非常に好きで、とても時間をかけている・・・・設計者に対する賞というのがこれまであまりなかったけれど、こんな風に人の目に触れていくことで励みになる。設計者の育成は今後の家づくりにおいて非常に大切、そして設計者のプライドを育てるためにも賞の創設にはとても意義がある」とのお話。

審査委員の建築家・田中敏溥氏の「安成工務店設計者・三浦和さんの言葉 “ 家族の暮らしがまちにこぼれるような家 ” という表現がいい。家族間はもちろん、隣近所や街や道路とも仲の良い家ということが表れており、とてもいい家」という講評。同じく審査員の建築家・松本直子氏の「私は昔は手描きで図面を引いていて途中からCADになったのだけれど、手描きだと一本の線に根拠がないと引けない。その一本の線の意味をCADを最初から使うようになった今の設計者にも大切にしてもらいたい」という言葉。印象的だった。

泉審査委員長は「家のデザインというのは、設計だけでなく家族のありかたのデザイン、また個々人の人生のデザイン、景観が周囲に馴染んでいるか、人が出入りし集まる活動拠点として地域に溶け込んでいるか、などなどさまざまな事柄を含んでいる、そういう統合力が必要。今回、第1回にしてはレベルが高いけれども、まだまだこれから。回を重ねて一層素晴らしい家が出てくることを期待している」とお話されていた。受賞された設計者の方々の言葉からも、それぞれの住まいが家族の理想を汲みながらも流されず、子や孫の代、環境や地域との関係性をていねいに考え、非常に苦労しながら完成されたことを感じた。

 

こちらの受賞住宅事例と受賞者及び審査員の言葉、次回の応募要項など、詳しくは3月11日(月)発売の75号チルチンびとp158~173に掲載されています。これからの家づくりや暮らしについて、何かしらのヒントが得られると思います。どうぞご覧ください。

 

 


奈良からの贈り物

いつもこちらで心を癒してくださる奈良町宿「紀寺の家」さんも出展されているということで、昨日まで松屋銀座にて開催されていた「T・E・I・B・A・N japan classic 奈良展」に月曜の夕方お伺いしました。残念ながらちょうどご不在でお会いすることができなかったのですが、他にも興味を引かれるものをイロイロ発見。

まずはPonte de pie!さんの靴下。

 

靴下はつま先の方などとても工程が多いのだそう。職人さんが一台一台機械の調子を読みながら編み進め、快適な履き心のために部分部分で糸を変え、さらに手洗いして自然乾燥させるというていねいな作り方のため量産ができないそう。vigoは早速ハイソックスを購入して履いており、実際とても快適だそうです。もうひとつ気になったのが、ブースにいらした田中さんの足が、非常に細い! もしやこれはこの靴下のせいなのでは? と回し者でもなんでもないのですが、勝手に読んでます・・・vigoの足の変化を観察したいと思います。

TSUJIMURAさんの葛菓子の美しさにも目をひかれます。初め落雁かと思ったら、もっと薄甘く繊細で、ほろりと優しい口どけです。色も自然のものだそうで、「森の中へ」「星とダンス」という名前も、パッケージもすべてが詩的で、風雅なお菓子。

 

「森との関係」の山本さんが案内してくれた和蜜石鹸は、とても泡立ちがきめ細かくなめらかだそう。ヒノキと杉のアロマオイルの香りで、心が静まります。帰りにヒノキチップを少しわけてくださり、これを嗅ぎながら(怪しいですが)乗ると、不思議。満員電車にもイライラしません。

 

他にも、くるみの木さんや、お茶のinokuraさん、奈良筆の管城さんなど、小さな白いスペースに奈良の心が集結し、異なるお店が数々集まっていると思えないほど統一感と気品があって、どれも贈り物にしても喜ばれそうなものばかり。さすが古都の風格でした。

 


建築・建材展2013に行ってきました

本日より東京ビッグサイトでスタートした「建築・建材展2013」へ行ってきました。こちらは「日経メッセ 街づくり・店づくり総合展」のひとつとして開催されているもので、すべて合わせるとかなり大規模な展示のため、朝から結構人出が多いです。タイルびとがワークショップをしているということでTNコーポレーションさんのタイルブース「TILE PARK」を訪ねてみました。

 

にぎわっています。

ワークショップ風景

ワークショップは、好きな形を選び、土を型に入れて、好きな色を選ぶと後日焼いておくってくれるというもの。8日までの期間中いつでも受け付けているそうです。

そのタイルブースでお会いした八幡工業さんのいらっしゃるイケダコーポレーションさんのブースにもお邪魔してきました。天然漆喰が、落ち着いたムードを醸し出しています。

国産材のコーナー、飛騨産業さんのブースに『飛騨』を発見。牧野伊三夫さんが飛騨産業さんとともにつくった雑誌です。この本を見るだけでもモノづくりを愛し、伝えたいという心意気が伝わってきます。

杉はナラなどに比べて柔らかく、そのままでは椅子の部品などに使用するのが難しいので、圧縮し、堅い材にしてから加工するそう。

左の4枚は、同じ杉を圧縮率を上げていったもの。当然ながら、薄いものほどどんどん堅くなります

杉家具は山に関する関心が高く、国産材を使おうという気持ちのある方などを除いては、意外にもまだそれほど定着していないそう。地元飛騨杉をもっと広め、使ってもらう。そのために世の中のニーズや興味を惹きつけるような創意工夫を、耐えず重ねていらっしゃる飛騨産業さん。HPに、杉の話や匠の話なども詳しく載っているのでご興味のあるかたはぜひ。

一般建材はもちろん、省エネ、耐震、光触媒、国産材などさまざまなテーマのブースが用意され、300社近くもの方々出展されています。ご興味のある方、お話聞いてみたい方、この機会にお出かけされてみてください。

 


ドライフルーツの変身術

シマシマヤトーキョーさんが発行するZINE「シマシマヤ文庫」の第1弾「うきは百姓組 くだものやさい献立帖」の刊行を記念して、fogさんで行われたイベントにお邪魔してきました。

 

こちらはシマシマヤトーキョー代表ヒロミさんのご出身地でもある福岡の農家3代目集団うきは百姓組さんがつくる美味しい果物や野菜をさらに美味しく食べるため、人気料理家さんたちによって生み出されたレシピを集めたもの。 レシピブックといえばたいていは一人で監修されてるようだけれど、いろいろなタイプの方がそれぞれの得意分野で勝負されているのでジャンルも使う材料もバラエティ豊か。

今回のイベントはこの本にもある、料理家・瀬戸口しおりさんによる、うきは百姓組さんのドライフルーツを使ったレシピ2品「ドライいちじく(※今回は季節柄、柿を使用)と骨付き鶏もも肉の中近東風煮込み」「蛸とドライトマトの炊き込みご飯」をデモンストレーション形式で教わるというもの。

 

 

 

 

 

 

さりげなく贅沢な感じがして、おもてなしにもぴったり。 彩りも美しく、うまみが凝縮されているし、余分な水分を程よく吸ってくれていい歯応えになるし、果実の成分が他の素材を柔らかくしたりまろやかにしてくれたり・・・ドライフルーツをお砂糖代わりに料理に使うメリットはあまりに大きい。 食後に豆腐とゴマで合えたものを出していただき、これもデザートとおかずの中間のような新食感。 クリームチーズやヨーグルトと合えても相性抜群と聞いて、なるほど。応用範囲が広がります。

そしてイベントの終盤、うきは百姓組さんが登場!

 

旬をたいせつに、人間の出荷の都合ではなく、“くだものまかせ”で一番おいしい時期に出荷するというお話が印象的。口で言うのは簡単だけど実行するにはものすごい覚悟が必要だと素人でもわかる。 ドライフルーツにしても、ドライ用にする果物の選別から、ひとつひとつ手で皮を剝きスライスし、種類によって変色を防いだり、食感を調節するため風の当て方や温度を研究し、とたいへんな試行錯誤と手間暇のもとにつくられている。 ドライのトマト、桃、苺、梨などの試食もさせてもらったけれど、甘すぎず、ほどよい酸味が残り、フレッシュな香りと風味が凝縮されていて、噛むほどに元の果物の美味しさがじんわりと再現されてきて後を引く。 パッケージのロゴマークにもなっている耳納連山、その山がちの水はけのよい地域に果物は最適! と胸を張るうきは百姓組のみなさん。日中の忙しい農作業が終わると、ドライフルーツづくりやイベントなど休みなしで活動されている。 自分たちが育てた農作物、そして地元と農業への強い愛情を感じます。

 

こちらのフルーツを使ってベーグルを作っているベジキッチンさんにもお会いでき、いい野菜を求め、いい商品をつくるためのこだわりなど伺う。 写真からも伝わってくる野菜の瑞々しさ、かわいらしさ、美味しさは、仕事への飽くなき情熱の表れなのでした。

 

新しい野菜の美味しさに目覚め、生産者の方とお話もできる充実のイベントでした。主催者、参加者の皆様、ありがとうございました!

 

シマシマヤトーキョーのヒロミさん(左)と瀬戸口しおりさん

 

 

 


竹細工に挑戦してきました

「あの竹この竹」の筆者、竹工家の初田徹さんが、荻窪6次元さんで開催している「竹 33のかたち」のワークショップ「六つ目編みの平かご作り」に参加しました。

 

竹細工に挑戦するのは初めてだけど、出来上がり図を見たところ、うん、これならわりと簡単にできそう!・・・と思っていたら甘かった。単純な竹ヒゴの重なりの繰り返しに見えますが、くぐらせるヒゴがどっち向きなのか、上下左右どっちの何本目にくぐらすのか迷子になったり、平行が崩れないように編み終わった部分を片方の手で固定しながら新しいヒゴを追加していったり、幅を均等にして綺麗な三角形、六角形ができるようにとか、いろんなことに神経を使う。

 

最初の網目

コツを教えてもらいます

編み終わりの図

 

 

 

 

 

 

 

 

コツを掴んだと思った瞬間、あれ?やっぱり掴んでなかった。となったり。意外に難しいのです。皆「こっちが上で、こっちが下で、、、あれ?」とか「なんか汗かいてきちゃったな」などと独り言を口走りながらかなりの集中モードでした。テープで止めたり、水をつけて竹ヒゴを摩擦で動きづらくして固定させたり、いろんなポイントを教えてもらい、助け舟も多々出してもらいながら、約2時間かかってようやく完成!

初心者向けに扱いやすく薄めのヒゴを用意していただいていたけれど、出来上がりのしっかり加減が見た目よりもずっと強い。指で網目をぐいぐいっと押さえてみると、竹のしなやかさと強靭さが伝わってきます。今回のものは、元は野菜などこれに乗せて鍋に入れ、茹であがったらこのまま引き上げて水を切るための「煮ザル」というものだったらしいのです。懐紙を乗せて天ぷらを盛ったりしてもよさそう。

会場には初田さんの作品が展示されています。コラムに登場した作品も。竹が織りなす繊細な幾何学模様と陰影、その自然で優雅なかたちに、日本独特の美意識を感じました。

 

 

会場の6次元さんは、次から次へと面白いイベントを夜な夜な開催されていて、いつも気になる存在です。落ち着いた空間に魅力的な本がたくさん置いてあって、ぼーっと時間を過ごすもよし、ちょこっと書き物をしたり、打ち合わせするにも想像力もらえそうな、静かだけれど熱い場所なのです。

 

思わず読みたくなる本ばかり。6次元さんの本棚

 

「竹33のかたち」は明日24日まで開催しています。


水戸芸術館に行ってきました

気になっていたのに気づけば最終日ギリギリで「高嶺格のクールジャパン」を観にいった。いくつかの部屋を進んでいく構成になっていて、「敗訴の部屋」では、昔から最近までの反原発運動の敗訴の見出しが大きく印刷されたものが突き出ている。「我慢の部屋」では、「我慢しなさい」「我慢しなさい」という声が聞こえてくる。「標語の部屋」ではいかにも明るく健全な標語の電光掲示板が回っている。どの部屋でも真ん中に寒そうに佇む人物の塑像がある。いわゆる経産省のじゃなくて“高嶺格の”クールジャパンの意味がだんだんわかってくる。

「ジャパンシンドロームの部屋」では、制作スタッフが鮮魚店や花屋、飲食店、釣り人などと放射能の影響について実際に交わした会話を寸劇にした映像作品が流れる。山口、関西、水戸バージョンがあり、地域やお店やその人の性格や、立場によって発する言葉は違う。やりきれなくなるような会話、居心地の悪い会話、思わず笑ってしまう会話、などどれもまったく脚色がなくリアルで、だからこそすっきりとした着地点がない。皆戸惑ったり、苛立ったり、あきらめたり、開き直ったりしている。

高嶺さんは私より少し年上で、「核・家族の部屋」での核実験の歴史(戦争直後から約2000回も繰り返されてきている)とご自身の家族のアルバムを重ねた年表は、自分が育ってきた風景と重なる部分も多い。何も考えずのほほんと暮してきた子ども時代、学生時代の背景にはこういうことがあったんだよな、と思い知らされる。

ちゃんと見てこなかった、また見ていない現実を突きつけられることこの上ない展示だった。放射能って? 景気って? 政治って? クールジャパンって? 日本人って? 自分って? ・・・見てから数日経っても、太字になった疑問符が頭から離れない。

 

近くの偕楽園では、これから梅も見頃です


九州に行ってきました 長崎編

長崎は今日も雨だった。と歌の題名にもなるだけあって、やっぱり雨だった。街には赤い提灯がぶらさがっていて、これはちょうど今週末から始まるランタンフェスティバルというお祭りのためのものらしい。路面電車とバスとタクシーが次から次へと行き交い、遠くには海が見え、古い建物が建ち並ぶ港町の風情。町の中心地には大きな商店街が縦横に延び賑わっている。

そんな長崎の中心商店街、ベルナード観光通りの一角にある「カメラのフォーカス」さんを訪ねた。HPからしてちょっと他とは違ったこだわりを感じていたフォーカスさん、最初に目にとびこんできた看板も、置いてあるアルバムや見本写真も、普通の写真屋さんとはちょっと違うこだわりを感じる。昔はごく普通のいわゆる富士フィルムのお店だった、という代表の原口さんが、デジタルが主流になってきてもう店をたたもうとしていたところ、10年来のお客さんだったカリオカさんが「それは困る!」と一念発起、絵を描いたり、キャラクターをつくったり、ワークショップや写真展を企画するように。毎月発行している「写真便り」や長崎ネコをマスコットにした「まちねこ」を目当てにやってくるお客さんなどがだんだん増えてきて、この日も月曜だというのに次から次へとお客さんが来ていた。失われつつあるフィルムの良さを再確認させてくれる、いろんなアイデアとオリジナリティに溢れた、元気な写真やさんでした。 

左から代表原口さん、スタッフ前田さん、カリオカさん

 

次に訪ねたのが出島にある「たてまつる」さん。店名の由来は奉行所跡だからだそう。店に並ぶ手ぬぐいについて尋ねると、それまで物静かだった店主の高浪高彰さんの口から長崎の歴史や、風俗文化、人物、名物などいろんな話が飛び出す。そんな長崎うんちくがオリジナル手ぬぐい「たてま手ぬ」に染め込まれている。高波さんは今農業をされているそうで、農作業には旧暦が合うんです、といって店に置いてあるまなてぃさんという方がつくった旧暦手ぬぐいを見せてくれた。日付の上に「ブロッコリーの天ぷらを堪能する。」「にらの花が咲いたら葉と共に刈払う。」とか書いてあって面白い。長崎散策の前に、まずはこちらに立ち寄って色々と聞いてから出かけると、もっと長崎の町が楽しめること請け合いです。 

高浪さん。奉行所らしく、店内にも門がある

 

お昼は、フォーカスさんに教えてもらったharupizzaさんでランチ。薄くてパリパリした生地に、里芋、ゴボウ、ゴマ、長ネギ、ゴマ、トマト、キノコなどいろんな野菜が乗っている。ソースも、トマト、味噌、トウガラシベースと、何枚食べても飽きない味。あっさりだけど満足度の高い、新食感のピザでした。

前菜も美味しい。野菜がたっぷりいただけます

 

harupizzaさんに教わった、近くの山王神社まで行ってみる。ここには、原爆によって片方が吹き飛ばされ、一本柱となった鳥居がある。 

その奥には爆風にやられて一度は枯れたものの、命を吹き返し青々と茂った、堂々たる大クスノキがある。幹に残された大手術の痕のような傷を見ていると、人間の犯した行為の愚かしさをつきつけられ向こうからじいっと見つめられているような、底知れない怖さとすさまじさを感じる。

 

出島に戻り「List:」さんへ。List:さんが主宰するナガサキリンネのお話しなど伺う。店主の松井さんは、福岡のキナリさんでも日田リベルテさんでもその名を聞き「List:さんなら間違いない」みたいなしっかり者ウーマンのイメージだったけれど、会ってみるとゆったりして、にっこりして、気さくな人。でも、たくさんの作り手さんと一緒にイベント運営や雑誌作りを自然体でこなしてしまう頼もしさもきちんと持った、素敵な方でした。

松井さんもお店もゆったりした雰囲気

 

広場からも吉田健宗さんやカリオモンズコーヒーロースター さん、アンペキャブルさん、ティア長崎銅座店さんなどが参加予定の「ナガサキリンネ」は、3月26日(火)〜 31日(日)(クラフト&フードマーケットは30、31日の週末2日間)長崎県美術館にて開催されます。

 帰りがけ、木の看板が気になって入ってみたカフェ「ユラク」さんは三角型のビルの間取りと、それにそってつくられた木のテーブルが面白い。オープンして半年ぐらいだそう。窓の外には路面電車と出島資料館が見え、長崎らしさを満喫できます。ひと休みして空港へ。

 

3泊4日と今回も駆け足だったけど、ひとつひとつが心に残る、いい出会いに恵まれた旅でした。皆様、ありがとうございました!


九州に行ってきました 大分・日田 小鹿田焼~宮園神社編

 

翌日は、小鹿田(おんた)焼の窯元見学と、会の屋号でもある日田の杉「ヤブクグリ」のルーツを辿りに宮園神社へ行くツアー。「寒いけど、日田の山へ行ってみよう!」というスローガンのはずが、晴れ男女の集まりだったのか、晴れ渡って春のようなぽかぽか陽気に恵まれた。大勢いたので車を出せる人がみんなだしてくれ、それぞれに出発。

私とvigoは、日田の意匠職人町谷さんの車に、ライターの小坂章子さんと早稲田の建築学科の小笠原正樹さんと乗り込む。小坂さんはヤブクグリでは冊子係担当で、『手の間』という九州の暮らしや手仕事などを紹介している素敵な雑誌に寄稿されたりしている。小笠原さんは、北海道で牧草の発酵熱を利用した暖房要らずの家の設計をしたり、藻からできる石油で家のエネルギーを賄うといった、未来に向けた設計を研究しているすごい学生さんだ。

町谷さんは運転しながらツアーガイドのように日田のあれこれを説明してくれた。日田の山間部は降水量がとても多く、霧深く湿度の高い気候のせいで杉の生育に適していて、江戸時代から続く杉の産地だそう。あちらこちらで昨年夏の水害の傷跡が痛々しい。頑丈そうな橋も壊れていて水害の恐ろしさを知る。3000戸近くもの家が浸水被害にあったという。復旧作業もさぞかし大変だったに違いない。今さらだけれど、被害に遭われた方々に本当に心よりお見舞い申し上げます。

 

小鹿田焼の里「皿山」に到着し、車を降りると「ギーーーゴトン・・ギーーーゴトン・・」とあたりに響く音がする。この音の正体は「唐臼」。川の水流の力を利用して、大きな杵を動かし、土を粉砕している。川のせせらぎと唐臼の動き、水郷日田の風景に心洗われ、延々と眺めていられそうだ。

 

 

小鹿田焼の窯元は全部で10軒。開窯以来一子相伝で、伝統的な技法を脈々と守り続けている。柳宗悦やバーナード・リーチによって注目を集め、広く知られるようになっても、一切弟子を取らず、職人を雇用せず、機械も使わずに家族だけでつくってきた。作り手の名も出さず、窯元の名も出さず、陶土も一年に一度共同で掘り出すそうです。掘り出した土を唐臼で粉砕し、水にさらしてゴミなどを取り除き、窯の上で乾かす。土をつくるだけでも大変な手間と労力だ。蹴ろくろを回しながら、鉋や刷毛で模様を付ける。素朴だけど凝っている。なのに値段も驚くほど手頃。暮らしのための器なのだ。

 

 

小鹿田を後にし、車で約1時間ちょっとの中津江村にある「宮園神社」へ。参道や掲題の周囲にはアオスギ15本、アヤスギ9本、ホンスギ5本、ヤブクグリスギ1本の計30本があるそう。奥には樹齢350年のアオ杉の切り株があった。迫力。日田杉の元祖ともいわれているみたいだ。

帰りは日田リベルテさんまで送ってもらった。去年nowakiさんで展示中だった陶芸家・鈴木稔さんが、ちょうどワークショップをされている最中だった。上映する作品だけでなくカフェや展示やワークショップ、雑貨や本、隅々までセンスが光っていて、さすが日田の文化発信地的存在。自然と人が集まってくるような、やさしくていい気が流れていました。

 

日田リベルテ代表の原さんと、スタッフの原田さん

 

長崎へ向かうため、日田とはそろそろお別れ。昨夜知り合った「和くら」の古田さんが高速のバス停まで送ってくれるという。出発まで1時間、その間に、夜の幻想的な三隈川べりを散歩し、老舗材木屋だったというお店を案内してもらい、「日田名物の焼きそば、食べたいでしょ」といってシャーッと近所の「みくま飯店」さんに連れて行ってくれ、焼きそばを頼んでくれて「20分後に迎えにくるからね!」といってシャーッといってしまった。。日田名物の焼きそばは、ふつうのより麺がぱりぱりと固めでちょっと甘辛で、もやしがシャキシャキ。日曜深夜の長崎の街を、ちゃんぽんを求めてさまよう覚悟だったのに、こんなに美味しい地元名物を味わえるとは!

 食べ終わるとまたシャーッと迎えに来てくれ、時間通りに高速バスの停留所にジャストの時間に到着。ほんとにお世話になりました。 

スーパー段取り上手&色白美人の古田さん

 

日田の旅はみなさんにずっと親切にされっぱなし、お世話になりっぱなし。ちょっと、空き物件探しちゃおうかな・・・っていうぐらいの気分になりました。ヤブクグリのみなさま、日田で出会ったみなさま、ありがとうございました!

 

長崎編へ続く


九州に行ってきました 大分・日田 ヤブクグリ編

そもそも今回九州にやってきたのは、昨年秋に広場のイラストでおなじみ西淑さんの紹介で訪ねた、京都の nowakiさんが京都宣伝係を務める「ヤブクグリ」について教えてもらったのが始まり。『雲のうえ』や『飛騨』など地域密着型のフリーペーパーの編集人でもある画家の牧野伊三夫さんが、日田市観光協会の黒木さん、日田リベルテの原さんらと共に、林業再生で町を元気にしようと発足したこの会は、地元の新聞社さんや市長さんをも巻き込んで活動の輪が広がりつつあるという。

東京に戻り牧野さんにお電話してみると「今ちょうど日田からあんまり出ない日田リベルテの原さんが来てるから、一緒に飲みますか?」といきなりのお誘いだ。そんなレアな機会を逃してはとvigoと一緒に会いに行った。牧野さんは「飛騨」と「日田」の共通点に面白さを感じ「飛騨日田てぬぐい」を制作したり、見ようみまねで昔ながらのいかだづくりに挑戦して筑後川で川下りをしたり、またそれが話題になるという素早い行動力と求心力がある人なのだが、アグレッシブな雰囲気がまったくない。落語家みたいな味のある喋り方のせいか、熊さんみたいな風貌のせいか。いつのまにか皆がその茫洋とした牧野節に巻き込まれていってしまうのだ。

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というわけで日田へ来た。博多から日田へは「 ゆふいんの森」という特急でいくつもりだったのが、全席予約制でどの便も満席と大人気。急遽バスに変更。次回はこれに乗ってみたい。

お昼は寶屋本店で「ヤブクグリ」考案「きこりめし弁当」をいただく。杉の間伐材を再利用した曲げわっぱを開くと、ごはんの上には丸太に見立てたゴボウがゴロリ。添えられたミニノコギリで切って食べます。

お弁当タイムが終わると、午後は江崎次夫・愛媛大名誉教授による「クラゲが山にやってくる」という講演会。江崎先生は大量発生している越前クラゲを乾燥させクラゲチップをつくり、その保水力と栄養分で山林を元気にできないか。という研究をされている方。価格と効果が見合ったらすごく画期的だと思う。

続いて田島山業の代表・田島信太郎さんのお話。「林業は今、たべていけない。まずはそこを認識しないと」という言葉がのっけからつき刺さる。林業にはとにかく手がかかる。そして気候にも左右されるし、外材との戦いには世界経済も大きく影響するし、同じ杉といっても種類や産地によって全然違うのでその性質をよく知りぬいていないと商品化もできないし、真面目にやろうとすればするほど採算がとれない。生産者の努力だけではどうにもならないことも多く、消費する側や政治の意識改革も急務。これは特別意識の高い少数派、みたいな人ばかりが背負う問題ではなくて、山を守る→生態系を守る→自分や子供の命を守るという意味で誰もが無視できない問題。『チルチンびと』も創刊から十数年そういったメッセージを出し続けている雑誌だけれども、田島社長ももう二十数年「断固森林を守る。いい木を育て、子供たちに伝える」ということを続けている人で、林業の現場からの正直な言葉が心に残った。

 

しばらくフリータイムがあるのでどうしようと思っていたら、福岡のデザイナー梶原さんが「豆田を案内しますよ」と話しかけてくれたので、またもや遠慮なくお言葉に甘えた。日田豆田は天領として栄えた町で江戸時代からの商家や土蔵が多く、街並みも電柱を地下に埋めてあったりと、伝統が色濃く残る重伝建地区となっている。もうすぐ始まるお雛祭りや、秋に花月川(筑後川支流)で行われる千年あかりなどでは大勢の人が訪れる、美しい町です。

途中寄った日田の産業振興センターではトライウッドさん制作の、間伐材でつくった薄い木皿を発見。なんと5枚入り210円。可愛くて、ピクニックやキャンプにもってこいです。あまり巷で見かけないけれど、これは欲しい人多いかも。

 

懇親会では、もみじにまず驚き、つづいて納豆入りの高菜巻き、鮎のうるか、日田焼きそばにちゃんぽんなど郷土料理三昧。また、奇しくもこの日、誕生日を迎えた黒木会長のお祝いに日田民謡と踊りが披露されるなど日田ムード一色。ここでは、この後大変お世話になる「すてーき茶寮 和くら」の古田さん、松浦市のPRが頭に残りすぎて「松浦さん」とインプットされた島本さん、別府のキャンプ場に勤める「桐ちゃん」こと豊島さん、「PERMANENT」を制作している定松さんご夫妻、地元誌をはじめいろいろな分野で活躍されているフリーライターの小坂章子さん、東京からいらしていた建築家の長谷川敬さん、などなど話せば話すほど魅力的な人達とも出会い、その後天領日田洋酒博物館へハシゴして、和気藹々と日田の夜が更けていきました。

 

大分・小鹿田焼編に続く