2011年4月1 の記事一覧

御目出糖自身




山口瞳さんのエッセイ ゛手帳の余白゛ に、こういう箇所がある。

●女房の大好物は、銀座萬年堂の御目出糖、浅草紅梅堂のぶどう餅、紀文の人形焼きである。お正月に必ず御目出糖を持ってきてくれる人がいる。こんなことを書いたからといって催促しているわけではない。

こんなことを書くのはヤボな話だけれど、この ゛持ってきてくれる人゛ は、私である。いつのころからか、そうなった。16年前に山口瞳さんが亡くなってからも、ずっとつづいていた。その帰り、いつも、奥さまの治子さんは「瞳さんの分も長生きしてくださいね」 と私に言った。それは、毎年の楽しみだった。 

大震災のあと、3月19日の新聞の被災地や原発のニュースのかげに、ひっそり訃報が載った。—- 山口治子さん(作家故山口瞳氏の妻)13日死去。—- 悲しかった。 (morimori)