
秋ぜみの耳をはなれず鳴きにけり 久保田万太郎
ここは、集合住宅の4階だが、そこの白い壁に、蝉が止まって鳴き続けている。これでは、壁にしみ入る蝉の声で、蝉も、やっぱり、木の家がいい、と思っているのではないか。
『村上ラジオ 3 』(村上春樹・新潮文庫)というほのぼのエッセイ集のなかに「岩にしみ入る」という章がある。そこに、アリの暮らしがいいか、蝉の暮らしがいいかと急に尋ねられても、選択に困りますよね。としながら〈とはいえ根が無口なので、一夏木の枝にしがみついて「みいみい」と賑やかに騒いでいるのも、性格的に向かないだろう。網を持った子供にぴゅっとおしっこをかけて逃げるのは楽しそうだけど。〉という文章がある。
友人に「蝉の鳴き方も、いろいろですが、あれでも習っているんですよ」といわれたことがある。「それ、セミナーっていうんです」!?
2016/09/17 morimori, その他
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『チルチンびと』89号「特集・小さな畑のある家」にちなんで、ビブリオ・バトルか、読書会か。続きです。
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Sさん。みんな、文学的、哲学的ですから、ボクは、モロ植物で。『植物はすごい ー 七不思議篇 ー 知ってびっくり、緑の秘密』(田中 修・中公新書)。一例をあげますね。トウモロコシの毛は、何か ?
〈一本のトウモロコシの果実を買ってくると、ヒゲのような細く長い毛がいっぱいついています。「このフサフサの毛は、いったい何だろう」と、“ふしぎ”に思われます。あの毛を先から基部へたどっていくと、一粒の実があります。あの一本一本の毛の下に一粒の実ができるのです。〉
このほか、なぜゴーヤの“緑のカーテン”は涼しいのか? トマトは、野菜か果実か? など、チエがつきました。
Eさん。『 a day in the life 』(安西水丸・風土社)。安西さんは、幼いとき南房総の家で母親と暮らしていた。その地、母親への郷愁が独特ですね。「わが家にはテニスコートほどの菜園があった」の章から。
〈母と一緒に落花生の茎を引っぱると、土の中からぼろぼろと実が出てくる。それを水洗いしてよく茹でてもらった。秋口には運動会もあって、どの家でも昼の弁当の時間には茹でた落花生を食べていた。運動会は大嫌いだったが、お昼に食べた茹でた落花生の思い出は母の思い出に繋がって胸苦しい。〉
そうか、もう秋だなと、みな、想う。それぞれの秋を想う。
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『チルチンびと』89号 好評発売中です!
2016/09/11 morimori, 書籍
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『チルチンびと』89号 「特集・小さな畑のある家」にちなんで、ビブリオ・バトルか、読書会か
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Aさん。「ええ、またか、と言われるでしょうが『父・こんなこと』(幸田 文・新潮文庫)。露伴から、暮らしのすべてについて教えられたのは、ご存知の通りですが、その幸田さんの文章。
〈畠もやらされた。およそ道具は皆素人向きな物では満足できなかった人であったから、鋤鍬は百姓なみの大きい重いものであった。〉と書くのです。さらに、〈「百姓の道具は力学的になかなかうまくできてる」などと、父は着流しの庭下駄で私の労働を見ながらその辺をゆらりゆらりと歩く。〉とも、書いています。やがて、豆を蒔き、菊をつくり…… その折々の描写が好きですね。
Eさん。やっぱり、人生の達人は違うんですよ、なにをやっても。『寺田寅彦 随筆集 第一巻』(小宮豊隆編・岩波文庫)のなかの「芝刈り」の章を読んでもね、そう思う。例えば ……。
〈青白い刃が垂直に平行して密生した芝の針葉の影に動くたびにザックザックと気持ちのいい音と手ごたえがした。葉は根もとを切られてもやはり隣どうしもたれ合って密生したままに直立している。その底をくぐって進んで行く鋏の律動につれてムクムクと動いていた。〉
そしてね、芝生を刈りながら、いろんなことを考える。自分は植木屋の賃銀を奪っているのではないか、とかね。観察が、いいんです。
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『チルチンびと』89号は、9月10日発売です。お楽しみに。
2016/09/08 morimori, 書籍
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菓子切「ささのは」は、竹工家・初田徹さんの原点ともいえる形。基本に立ち返ることを忘れず削りつづけて千本。道のりを終えようとするその数本手前の二本が届いた。約3年半前、餞別にいただいたものと並べて、しみじみとしてしまう。

毎回、竹を通していろいろな気づきをもらえるコラム「あの竹この竹」も43回を迎える。こういう少しずつのたゆまぬ積み重ねは、やり遂げた人にしかわからない境地へ人を連れて行くんだろう。そしてきっと、そこからしか始まらない場所への歩みが、新たに始まるんだろう。背筋がのびるような、嬉しい便りだった。
2016/09/04 takeko, 工房
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ドーナツの売れ行きが落ちている、という。コンビニでも、ひと頃の勢いがないらしい。糖分があり、脂分があり、からだにいかがなものかというのが、不人気の理由の一つらしい。そんなぁ。私は、ドーナツの味方である。どなたか、他にいないか。『なんたってドーナツ』(ちくま文庫)を読んだ。41人の方が、ドーナツへのアツイ想いを書いている。そのなかに、おや、西淑さんがいた。西さんは、この「広場」のトップを飾るイラストを描いたひとである。まるでそのイラストのような味の文体で、「わたしのドーナツ」を書いている。
……
ドーナツには、コーヒー。
コーヒーが飲めるようになってからは、ずっとそう思っている。
コーヒーを飲みたくてか、
ドーナツを食べたくてか、
たばこの煙でくもった、うす暗い喫茶店に向かう。
……
そして、なんと “ 西流レモンドーナツのつくりかた ” を、4 ページにわたって披露している。ドーナツの輪、です。
2016/08/28 morimori, 書籍, 食べ物
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今年も長い階段をのぼり長谷川観音院へ。四万六千日 の日に観音さまにお参りすると、四万六千日分のお参りをしたのと同じご利益があると言われていますが、私にとってはとうもろこしの日。
魔除けや商売繁盛、ひげが長ければ長いほど良いそうですが…
2016/08/19 vigo, イベント
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