2013年5月21 の記事一覧

再び引っ越し

 

前回から1年を待たずして、GWは引っ越しだった。夫の仕事の都合で京都に住むことになったからだ。羨ましい。ほとんどの人にそう言われる。逆の立場だったら私も同じ反応をしたと思う。旅行や出張で訪ねるたびにいつかこんなところに住みたい、もしくは学生時代をこんな場所で過ごしたかった、と思ってきた。ただ、実際に暮らすとなるとなんだか敷居が高そうに思えるし、第一私は「はんなり」もしていないし・・・憧れと畏れが入り交じる、自分にとって少し遠い場所だった。ところがこんなに突然、こういう日が来るのだから、人生わかりません。

 

物件めぐりには1日半しか時間がなく、猛スピードで12軒ほど見せてもらったのだが、楽しかった。一戸建て、築年数不明。というのがたくさんあった。床は傾いているけど棚や欄間が最高に恰好好い物件だとか、体育座りしてもギリギリなぐらいお風呂が狭いけど畳が広々として抜けのいい町屋だとか、お隣さんが外国人アーティストらしき長屋だとか。京都に住むんだったら、ぜひそんな町屋造りの一軒家に住んでみたいではないか。そして“小さな「和」”“古き美を愛おしむ暮らし”をしたいではないか。土間に火鉢を置いたり掛け軸を飾ったり、洋画や映画のポスターでも意外に合うかも、とか。ひとつ見せてもらう度に夢のように妄想が膨らんでいたのだが、生まれも育ちも京都人の不動産屋Hさんが、「Gをはじめとするいろんな虫の出没率の高さ」と「ロシア人も音を上げた寒さ」について教えてくれ(年下の方だったけど、親心だと思う)、最初の威勢はどこへやら。己のヤワな育ち方を恥じつつ「町屋はいつかまた・・・」と、すんなりハードルを下げた。

 

それでも、マンション暮らしを選ぶのは自分に負けた気がして悔しいので、小さいけれど感じのよい一軒家に決めた。少し歩けば哲学の道という、緑に溢れた素晴らしいロケーション。住み始めてまだ数日だけれど、正直、日々歩くたびに顔がゆるみホレボレ、デレデレしてしまうぐらいいいところ。但し、山に近い=虫にも近い。狭い庭があるのだが、2mほどの草がボウボウに生い茂り、夫が草を刈ると大ミミズが出た。「いい土の証拠だよ」とブドウ農家育ちの強さを発揮している。洗濯物をそのスペースへ干すしかないので頻繁に庭に出るのだが、大きなヤモリみたいなトカゲみたいなのとかアリとか蚊とか確かにいろいろいる。昨日は赤いダニのような形をした小さい虫がいっぱいいたので調べてみたら「タカラダニ」というのだそうだ。この時期出て、自然に7月には消えていなくなるという。噂に聞くムカデには、まだ出会っていない。真剣になぜあんなに小さな虫が怖いのかを考え、大きい! と感じるものでも私のほうが何千倍も大きく、あちらのほうが怖いに決まってる。と自分に言い聞かせても克服できず。自然と共生できないダメ人間のように情けなく感じる日々である。

 

ほんの少しくらいは、近づきたい。