雑貨

ひと味違う、夏の「女子力」

取材のためにこの町に足繁く通っていたのは、春になりかけの、まだ肌寒いころだった。季節は変わり、むしむしもわもわと暑い。たった数か月なのに、西荻窪の駅を降りると、幾年も飛び越えてきたような気持ちになった。

まずはお決まりのコース、駅近でありながら喧騒とは無縁の居心地の良いカフェに入る。ほどよい甘さの冷たいカフェオレで暑さを癒し、向かった先は「魯山」。現在展示されているオーガニックコットンのパンツを、春から話に聞いて楽しみにしていたのだ。取材のときに、たまたま布のサンプルを見せてもらって、その質感と色づかいにやられた。器の店に下着を展示。その意外性と驚くほどの調和にも(写真だけで!)やられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実物を見てみると、やはり、いい!涼しげで、肌触りも色も優しい。毎日身に着けたい質がよくて素朴な可愛いパンツ。これはありそうでなかなかない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一緒に展示されていた焼き物の二人の作品も、大胆で、かつ繊細で、素朴であり美しくもあり・・・とくに辰砂の何とも言えないピンクというか紫、赤、酸化した部分の薄緑が紫陽花みたいで、心をつかまれた。

 

大胆、素朴な七尾うた子さんの器、野性と優美を併せ持つ内田好美さんの器、中田絢子さんの優しいアンダーウエア。巷で女性誌の表紙を飾る「女子力」とは一味違う、女子三人の底力、ぜひ色々な方に観ていただきたいです。

「魯山」にて、7月30日(月)まで。

 

 

自分への夏土産

 

 


すだれは遠くなりにけり

 アツイアツイアツイ。この日射し

アツイアツイアツイ。この日射しを遮るのに、近ごろは、ゴーヤのカーテンなんぞを育てたりするようだが、すだれはなぜ、カゲが薄くなったんですかね。すだれ屋さんが、こんな話をしていたのを読んだことがある。(中公新書『商売繁盛』から)


「いまはもう、古い本式のきまりを知ってる人は少なくなって —。夏、半すだれっていって、ちょうど半分に折ってかける。冬は陽が低いからぜんぶおろす。そんな当たり前のことだって知らない人もいるからね。いえ、すだれってもんは、一年中かけといていいんですよ」
「もう、子供のときから。゛ひとくち千枚゛っていってね、1種類を千枚っつ編まされた。お袋が、もうほかのやってもいいでしょ。おやじが、まだだ!  そんな調子でなかなか次のに進ませてもらえない」
「仕事がいちばん楽しい。立って仕事ばかりするんで足が平べったくなって。十文なのに十文二分を履くんですよ」


こういう職人噺が消えていくのも、淋しい。
青すだれむかしむかしの話かな という万太郎の句があるという。


サインの意味

Palshus

器を見るときにちょっと気になるのはサイン。

「チルチンびと」71号でも塩山奈央さんが、窯を訪ねている市川孝さん。
ぶらりと立ち寄った「魯山」で市川孝さんのサインの話に。

大嶌さんが言うには「なんでさー、こんなサインだと思う。たかしのたの字を”十”と”二”にくずしてるって言うのと、僕が知ってるのは彼が十二月十二日生まれってこと。」らしい。

 

市川孝さんのサイン

市川孝さんのサイン

 

今週末から「魯山」では「今野安健 田鶴濱守人」の二人展が開催されます。
6月23日(土)~7月1日(日)11:00~19:00 ※6/22(金),26(火)休み
さて、お二人のサインはいかに。

今野安健 田鶴濱守人

 

 


ここにも津波がきた

御身あらい

「御身あらい」を買いに、木更津の小川漁網店に行った。御身あらいの誕生については、この゛広場゛の千葉県版にくわしいが、漁業用の網を短く切って、からだを洗うために仕立てたものである。石鹸の泡立ちがよく、これでこすると、この上ない゛カイカン゛があると、女性に評判がいい。パリまで持って行って使って、忘れてきた人もいて、ホテルでなんて思ったか、と笑った。
お店に取材にうかがったのは、昨年二月。そのあとの地震と津波の被害はどうだったのだろうか。
「地震のあとすぐ、店の前の道路がどす黒い水で埋まりまして、店の中にも流れこんできました。女房は二階に位牌を持って行ったりしていました。その後、しだいに危険を感じたので、山のほうへ逃げました。ちょうど、干潮だったから助かったけど、満潮だったら、2メーターは床上浸水していましたね」
網を扱う店だから、海に近く、400メートルくらいしか離れていない。
御身あらいの゛ファン゛を代表して「お気をつけて」といって帰ってきた。


白雪ふきん

 

先日、友人から贈り物のお返しに、ともらった「白雪ふきん」
この名前には聞き覚えがある。
「チルチンびと広場」にも早くから登場していただき、
蚊帳をふきんにするの?大仏さまを磨くのにも使うの!?
と、いろいろ印象的だったからだ。

糊がかかってぱきっと気持ちよい、真っ白なふきん。
清々しくて、新年にふさわしい贈り物だと思う。
これでいろんなものを今年はぴかぴかにするぞー。
大掃除にまとめてあたふたするんじゃなくて
日々綺麗にしておけばいいのだ。と毎年思うのにできないんだな。
でもこの素晴らしいふきんがあれば、デキル気がします!
肌にやさしい「うるおいたおる」というのもあるようです。
大仏様のお身拭いと同じブランドで、顔を拭く・・・
なんだか恐れ多いですがいいことありそうな気もします。

柄物も豊富で、さすが奈良らしくかわいいシカ柄もあります。
このシカ模様バージョンは、「白雪ふきん」さんのfacebook
シカ親子になっていろんな場所に出没していた!
本物の鹿とご対面もあったり、年越し蕎麦つついたり・・・
ポーカーフェイスっぷりがたまらなく可愛い~

まだ使ってもいないうちに、一気に白雪ふきんファンになってしまいました。

 


私の相帽

暮れもおしつまった仕事納めの昨夜、大掃除真っ最中のやぶさいそうすけさんを訪ねた。

12月半ば、こちらで行われた展示会「やぶさい屋」で出会ったセミオーダーの帽子。形は何種類かきまっていて、布は自分で好きなのを選べて、さらに頭の形に合わせてやぶさいそうすけのオーナー兼帽子工房imonataを主宰する吉川さんが、アレンジを加えてくれる。

真剣に帽子を選ぶ

 

そして、こんなのができました。ジャーン!

 

つばの折り方やかぶる角度で可愛くも、ダンディにも

 

世界にひとつだけの、私のためだけの帽子。

元のサンプルのとはまた表情が変わって、予想していたのとも少し違っていて、セミオーダーなのにまるで自分の頭に合わせてオーダーでつくった特注品みたいに感じた。なんとしっくり。いい帽子をかぶると、えっへん。ちょっと気取った、改まった気持ちになりますね。作り手である吉川さんも作りながら、どうなるかなと、本人がかぶるまでわからなくてドキドキだったそう。この、期待以上の相性の良さ具合に、お互い「うれしいなー」「うれしいなー」言い合い、一緒に来てくれたvigoにも「いいよ!うん、いいよ!」と褒められ、なぜか両方が照れるという図に。

その後、ほうじ茶ととびきりおいしいチョコレートをいただきながら、「やぶさいそうすけ」という名前の由来とか、作家さんの話、富山出身の吉川さんと能登出身のvigoのジモトークや、北陸出張で出会った人が偶然共通の知り合いでびっくり!など話は尽きない。夜更けの大掃除の最中だったのにかなり邪魔をした我々でしたが、年末を気持ちよく終えるにふさわしい、楽しいおしゃべりタイムだった。吉川さんはモノづくりの人なのだけれど、やはりギャラリーのオーナーさんだけあって、惚れ込んだ作品とその作家さんの話が出てくる。自分のこと以上に紹介したくてたまらないのだなと伝わる。こんな人に惚れ込まれたら幸せだと思います。

昨夜もまたひとり、素敵な作家さんを紹介してもらいました。

 

清水秀輝さんの灯り。お城や森が、奥深く幾重にも重なって神秘的

 

すうっと物語の世界に引き込まれるような、陶器の灯り。年末のすこししんとした空気と、やぶさいさんの空間に、このほんのりと灯る不思議な箱がぴったり。作家さんは意外にも男性でした。清水秀輝さんという、益子で活動されている方です。

 

振り返ると、ほんとうに様々な場所や人や出来事に出会った1年だった。
新潟、愛媛、香川、関東近県、近畿、岡山、広島、北陸3県、仙台…それぞれの土地の風土や住む人の気質、まだまだほんの一角なのだろうけれども足を踏み入れてみて、話してみて、びっくりすることや面白い発見がたくさんあった。

広場のオープン間近で頭が朦朧としつつ走り続けていた最中に大地震が起き、9か月以上が経つのにまだ希望が持てない暮らしを余儀なくされている方々もたくさんいる。今年、物理的にも心理的にも、日本人が受けたダメージとストレスは本当に本当にとても大きかった。と、同時に自分たちがいままで無意識にやってきたことへの意識もとても高まったと思う。

そんな中で生まれた「チルチンびと広場」。広場を作り上げていく過程で、自分を信じて長いものには巻かれず、自分の作品や、お店や、家族とたいせつに過ごしている「ぶれない人」にたくさん出会って話を聞いた。そのたびにそうか私はまだまだだなとか、この方向であってるんだ。いや、やっぱりちがう、とか、こんな私がやってていいんだろうか、いや、だめだ、いや、いい!とかとか…日々迷いを抱えつつも、この仕事があって、そして心からの本音で自分を理解してくれる家族と友人に支えられて、この一年を乗り切れたと思っている。いままで気にもとめなかったようなことが新鮮に感じられたり、譲れないと思っていた価値観がじつは、どうってこともなく思い込みにすぎなかったと感じたり。自分が少しずつ変わったと感じる一年だった。

 

みなさんは、どんな一年でしたか?

 

来年、少しずつ何かがまた変わって、新しい風が吹いて、素敵な出来事がどの人の元にも訪れますように。

 

 


ムクの木は残った

浅草寺 羽子板市

 浅草寺の羽子板市に行った。羽子板の人気はかわらないが、羽根のほうは、肩身が狭いように見えた。「羽根つき」とか「追い羽根」という言葉は、忘れられて行くのだろうか。追い羽根をつくる職人さんに、昔、話を聞いた。
 「羽根のタマは、ムクの実です。ベークライトでつくったら、重すぎて羽根が回らない。ついたときの音も、悪い。ホウの実でつくったら、軽すぎて回らない。音も、よくない。不思議なもんです。羽根はニワトリのハネ。これを蒸して、キレイに伸ばす。それをハサミで形よく切り、洗って、染める。そして、タマの穴に刺していく。刺すのも、かまわず刺していく、というのではなく、羽根の癖をよく見て、風車の形になるように刺すんです。そうすると、羽根はキレイに回って上がり、キレイに回って落ちるんです」
 一つひとつに手間をかけていた。庭に、一本のムクの木があった。「タマに使う実が、いつの間にか転がり落ちて、育ったんですよ」ということだった。こういう仕事があり、こういう人がいた、というこを、憶えておこう。そう思って、書いた。

 


ボーシハント

こういう帽子、どこかにないかな」と、vigo がいった。愛用品が傷んできたという。どこかにないかな、は、探してくれというイミである。カンタンカンタン。お引き受けしますよ。

こういう帽子とは、写真を見ていただくと、おわかりでしょうが、口で表現するのは、意外にヤッカイだった。帽子屋へ行って、「ほら、よくあるでしょう、オワンみたいな」とか、いうのである。時節柄、サンタクロース風なものが多い。その上部を手でカットしたりして、説明する。しかし、ないんだな、これが。歩いていると、井上陽水の゛さがしものはなんですか゛という歌が、頭の中に響く。私の踏破は、10軒を超えた。そのとき、ある店で「ああ、イスラム帽か」と女の店員がいった。「それだったら、帽子屋より、女のコ向けの雑貨屋さんにありますよ」

キッカケを掴んで、本質に迫ろうというのは、ヒッグス粒子も帽子も、同じだ。いまではもう、店の前に立つと、イスラム帽の気配を感じるようになった。

イスラム帽


シュロほうき

京橋にある「白木屋中村伝兵衛商店」。 morimoriと一緒に見学がてら訪問。

いままで、「ほうき」というものに興味があっても、実際自分が使うという事は全く考えていなかったのですが、職人さんの説明を聞いてどうしても欲しくなり購入。
色や形の好きな柄を買うつもりが、結局自分の手にあうものを選択。

そして、そうじがあまり得意ではない私が実際に使ってみました。
シュロほうきは、勢いよく「シャッシャッ」としならせて掃くのではなく、あまり力をいれず、ポンと落としてスーッと横によせいく掃き方が埃が立たず理想的です。
ふむふむ、ポンと落としてスーッとね。
実際、その様にやってみると手に全然負荷がかからずとても良い。
そして、なによりも掃除機ではやりづらかった、角や隅の埃やゴミがほうきだと簡単にとれる。
もう一つ、一緒に買ったはりみと呼ばれるちりとりがこれまた良い。
和紙に「柿渋」を塗った職人による完全手づくり品らしいのですが、静電気がおきないのでゴミがさらっと落ちる。

シェロほうきとはりみ

日本人の道具における知恵をもっと知りたい方、
白木屋中村伝兵衛商店の職人さんのお話は来年公開予定の新コラムにて。
お楽しみに。


続・楊枝

さるやの楊枝

—- 黒文字は、ヤナギ科の木じゃないかな。匂いがいいんですよ。こうやって、噛んでいると、味があるんですよ。一本の木から、二尺ずつ切って、それを四つ割りにして、それを、ほら、こういう皮がついているところを残して、小刀で削る。大変なんですよ。
 全部、手づくりなんだ。こういうふうに一本一本、先をそろえて、削ってつくれるまでに、十年はかかる。一日、一人で二千本はつくります。安い楊枝がありますね。あれは、機械でつくる。材料は白樺とか。以前は、竹なんかも使ったことがありますが、竹はダメだね。ささくれ立っちゃう。
 楊枝は、江戸時代からあります。うちも、創業三百余年。昔のひとは、よく言ったもので、老舗(しにせ)は、新店(しんみせ)。古くても、感覚は新しく、という気持ちで、細く長くですな —-。
 このブログの a-van の「楊枝」を見て、かつて、「さるや」で聞いた話を思い出し
た。