その他

耳を揃える

耳を揃える

 

パンの耳が、こんなに嫌われ者になったのは、イギリスのサンドイッチ伯爵のせいですよ、というひとがいる。伯爵は、大のトランプ好き。ゲームを中断しないで、食事ができるようにとパンに肉をはさんで食べたのが、サンドイッチの始まりで、1760年代である、というのは、有名な話。いや、それ以前に、ローマにもあったともいう。

さてその、口にいれたときの触感や味の違いを避け、断面の美しさを楽しませ、食べたとき、すぐにはさんだ具に到達できるように ……  そんなことからパンの耳を切り落とすようになった、という説がある。そういえば、伊丹十三さんの『女たちよ!』の「ハリーズ・バーにて」という章に、こんな文章がある。

……  ハリーズ・バーのクラブ・ハウス・サンドウイッチには変った点が一つあった。パンが丸く切ってあったのである。サンドウイッチには隅のところに、おかずがはいっていない三角のスペースができるものだが、丸くすればこういう不快は避けられる。着想というべきであろう。……

耳を揃える、とはこのことか。

 


かんたん豆腐ムース

あらかじめ戻しておいたゼラチンとお豆腐を、ブレンダ―でかくはんし、

冷蔵庫で冷やすとかんたん豆腐ムースの完成だ。

お豆腐は、もともと固形だから、大失敗することはないけれど、

ゼラチンの配分は結構むずかしい、と思う。

硬くなったり、柔らかくなったり、お豆腐の種類によって、随分出来上がりが違ってくる。


「チルチンびと広場」が新しくなりました

今月のプレゼント

 

いつも『チルチンびと広場』を訪れてくださる、みなさま。『広場』がひらかれて3年目。本日、6月2日。装いをあらたにいたしました。

より楽しく、より使いやすく。—-リニューアルを記念して、プレゼントのコーナーも開設。まず1回目は『広場』でもおなじみ、世田谷区経堂の文房具店・ハルカゼ舎オリジナルの゛文具セット゛を3名の方にプレゼント。ご応募、お待ちしています。

よりうれしく。より見やすく。—-さらに、近日、オススメ商品のコーナーや新しいコラムなどのコンテンツも追加する予定です。どうぞお楽しみに。

より役に立つ、より新鮮な情報を。—-これからも、よろしくお願いいたします。

 


再び引っ越し

 

前回から1年を待たずして、GWは引っ越しだった。夫の仕事の都合で京都に住むことになったからだ。羨ましい。ほとんどの人にそう言われる。逆の立場だったら私も同じ反応をしたと思う。旅行や出張で訪ねるたびにいつかこんなところに住みたい、もしくは学生時代をこんな場所で過ごしたかった、と思ってきた。ただ、実際に暮らすとなるとなんだか敷居が高そうに思えるし、第一私は「はんなり」もしていないし・・・憧れと畏れが入り交じる、自分にとって少し遠い場所だった。ところがこんなに突然、こういう日が来るのだから、人生わかりません。

 

物件めぐりには1日半しか時間がなく、猛スピードで12軒ほど見せてもらったのだが、楽しかった。一戸建て、築年数不明。というのがたくさんあった。床は傾いているけど棚や欄間が最高に恰好好い物件だとか、体育座りしてもギリギリなぐらいお風呂が狭いけど畳が広々として抜けのいい町屋だとか、お隣さんが外国人アーティストらしき長屋だとか。京都に住むんだったら、ぜひそんな町屋造りの一軒家に住んでみたいではないか。そして“小さな「和」”“古き美を愛おしむ暮らし”をしたいではないか。土間に火鉢を置いたり掛け軸を飾ったり、洋画や映画のポスターでも意外に合うかも、とか。ひとつ見せてもらう度に夢のように妄想が膨らんでいたのだが、生まれも育ちも京都人の不動産屋Hさんが、「Gをはじめとするいろんな虫の出没率の高さ」と「ロシア人も音を上げた寒さ」について教えてくれ(年下の方だったけど、親心だと思う)、最初の威勢はどこへやら。己のヤワな育ち方を恥じつつ「町屋はいつかまた・・・」と、すんなりハードルを下げた。

 

それでも、マンション暮らしを選ぶのは自分に負けた気がして悔しいので、小さいけれど感じのよい一軒家に決めた。少し歩けば哲学の道という、緑に溢れた素晴らしいロケーション。住み始めてまだ数日だけれど、正直、日々歩くたびに顔がゆるみホレボレ、デレデレしてしまうぐらいいいところ。但し、山に近い=虫にも近い。狭い庭があるのだが、2mほどの草がボウボウに生い茂り、夫が草を刈ると大ミミズが出た。「いい土の証拠だよ」とブドウ農家育ちの強さを発揮している。洗濯物をそのスペースへ干すしかないので頻繁に庭に出るのだが、大きなヤモリみたいなトカゲみたいなのとかアリとか蚊とか確かにいろいろいる。昨日は赤いダニのような形をした小さい虫がいっぱいいたので調べてみたら「タカラダニ」というのだそうだ。この時期出て、自然に7月には消えていなくなるという。噂に聞くムカデには、まだ出会っていない。真剣になぜあんなに小さな虫が怖いのかを考え、大きい! と感じるものでも私のほうが何千倍も大きく、あちらのほうが怖いに決まってる。と自分に言い聞かせても克服できず。自然と共生できないダメ人間のように情けなく感じる日々である。

 

ほんの少しくらいは、近づきたい。

 

 

 

 

 


上を向いて歩こう

浅草の喫茶店にいたら、永六輔さんが入ってきた。あ、どうも。これから、天ぷらでも食べるつもりだ、と言うと、「それなら、アソコがいい」と言う。「アソコ?」「アソコ、アソコ」。とうとう店の名前が出てこないまま、笑って別れた。その翌日。一通のハガキが届いた。永さんからだ。その文面。「思い出しました。中清です」。中清は、老舗の天ぷら屋である。永さんのハガキは、いつもこんなふうに、素早く、短く、やさしかった。—- あれからもう、何年もたった。

 

『上を向いて歩こう展』(世田谷文学館・6月30日まで)へ行った。ウォウウォウウォウという坂本九の歌声が流れる。大震災のあと、たくさんの人に歌われたのは、なぜだったろう。レコードのジャケ ット、テレビ番組の台本、写真、楽譜、関連する何冊かの本。見ていると、思い出すことばかり多く、鼻の奥が、ツンときな臭くなってくる。

 

私も、涙がこぼれないように、上を向いて歩いた。

 


オリジナル徳利、届きました。

 

先日の多治見出張の際に成宝園にてつくっていただいた徳利が焼き上がり、届きました!

 

きゅっとしまった首、なだらかな肩の線。つやっつやの胴体。いい具合です。

「とくりとくり」という、酒を注ぐ音が徳利の語源だという説があるらしい。ポン、と栓を抜く時の小気味いい音も心をくすぐります。夏に向け、冷たいお酒をきゅーっと一杯。くーっしみるねぇ・・・と、徳利を見ているだけで妄想が広がります。


見た目と、音と、味。器によって、お酒の愉しみもいっそう広がるものですね。

 


『ホーリー・モーターズ』の余韻

昨年12月にオープンした新宿武蔵野館の姉妹館ミニシアター、シネマカリテで映画『ホーリー・モーターズを観た。前作から13年、レオス・カラックス監督の長編だ。観終ってすぐに席を立つことができなかったあの時から、そんなにも経過したのかと、不思議な気持ちだ。『ホーリー・モーターズ』を観るのは、なんだか怖いという気持ちもあった。

日を重ねていく中で、ドニ・ラヴァン演じる「依頼人からのアポを次々と果たすという行為」が理解できるような気にもなり、また同時に、何度観ても全てを理解することは不可能だとも感じる。カラックスのパートナーであり、『ポーラX』のカテリーナ・ゴルベワが2011年に短い生涯を終えた。今作は彼女に捧げられたということだ。

アコーディオンのシーンが本当に美しかった。

シネマカリテでは5月下旬まで、ユーロスペースでは終了日未定。



 


気仙沼復興応援号 その4 –唐桑番屋~岩井崎「竜の松」-

バスは、お昼ご飯の唐桑番屋へ。

入口では地元の方々が歓迎の歌を歌ってくれました。

漁師さん

力強い歌声と温かいおもてなしに感動!

 

この牡蠣小屋は、学生さんも加わったボランティアの力で

オープンできたとのことでした。

(オープンまでの道のりの動画を見つけました。

牡蠣小屋では、もう、牡蠣の準備をしてくださっており

着いてすぐにおいしそうな香りと湯気が!!

 

ほたて

鉄板の上には、蒸し焼きになった牡蠣と

ホタテが山のようにありました!!

こんなに大きな牡蠣は初めて!!!

牡蠣

殻の開け方がわからず悪戦苦闘!!

ガチャガチャとヘラを使っていると

地元の方が丁寧に教えて下さり…

リズムをつかむと

今度は殻から外すのが楽しくて夢中♪

牡蠣

今まで生きてきた中で、こんなに牡蠣をたくさん食べたのも初めてでした。

プリプリでジューシー♪幸せな時間です♪

 

食後は、牡蠣の養殖場が見えるデッキへ。

デッキからの景色

地震のあと、津波によって養殖のいかだは壊滅し

海には火事から流された漂流物が流れ込んだそうです。

自然の回復力はすごいものがあり、今、現在では

すごい透明度!水が透き通っていてきれいな海となっていました!

養殖施設の復旧も少しずつ進んでいるそうです。

 

おなかがいっぱいになったところでまたバスに乗り、

BRT(バス高速輸送システム)専用道を

車窓から見学しながら

今度は、岩井崎「竜の松」へと向かいます。

陸中海岸国立公園の最南端にある岩井崎。

ちょうど日も傾いて海がキラキラまぶしく光っていました。

岩井崎には「第9代横綱 秀ノ山雷五郎」の銅像が!

横綱

この銅像、大津波にも耐えて「津波にも“残った”“残った”」として

被災した方々に勇気を与えているとのことでした。

 

そして、そのすぐ近くに、龍の形をした松があります。

津波によって幹や枝などに被害を受けながらも

一部が残りしっかりとした龍に見えます。

日が奥から差し込み、パワーを感じる迫力がありました。

龍

気仙沼復興応援号はここまで。

最後には、力みなぎる龍と横綱に出会い

地元の方からもたくさんパワーをもらいました。

 

今、一番してほしいことは

東北に遊びに来て楽しんでほしい

そしてお土産を買ったり

地元の美味しいものを食べたり

たくさんしてほしい

それが復興につながる!と

どこへ行ってもみな口をそろえておっしゃいます。

 

絶対にまた東北へくるぞ!!と心に決めた

amedioでした♪

次回は、東北の旅【番外編】をお届けします♪


FENDI — UN ART AUTRE 


Another Kind of Art, Creation and Innovation in Craftsmanship

~フェンディ もうひとつのアート、クリエイションとイノベーションの軌跡~

 

ファーにおける第一人者、フェンディの世界観を表現した今展示会。会場の入り口は、1925年ローマに誕生したフェンディ1号店の玄関を再現、代表作約30点(1970年~2013年)と、壁面には型紙、工具、スケッチ、タッチパネルスクリーンや貴重なファーのアーカイブがずらりと並ぶ構成だ。公開工房では技術者が実演。型紙をファーにあてて裁断するものとばかり思っていたのだが、実演や、映像インタビューで、全く異なる制作方法だと知った。技術と時間とクオリティーを惜しまない、アート作品のようなファーだ。

東京・上野の東京藝術大学美術館での展示は先月で終了し、世界を巡回するようだ。

 

 


パンの耳学問

……    ま、おれはおかわいそうな皿洗いじゃない。ウェイターだ。それでも、五日間食うものがなかったことがあるんだよ。パンの耳さえ食わずに、五日間だ。ー   いやはや! …… (『パリ・ロンドン放浪記』ジョージ・オーウェル著・ 小野寺  健 訳・岩波文庫)

ジョージ・オーウェルの作品には、パンの耳が、出てくるよ、と教えてもらった。

…… 彼は長い午後の時間を費して男の子たちとごみ箱や掃き溜を漁って歩いたことを忘れていない、キャベツの葉の芯やジャガイモの皮を拾い集めたり、時には黴臭いパンの固い皮膚さえ拾って、注意深く黒焦げになった部分を削り落としたものだ。 ……  ( 『1984 年』ジョージ・オーウェル著 ・ 新庄哲夫訳・ハヤカワ文庫)

パンの固い皮膚 ?  この原文は、…… sometimes   evenscraps   of  stale  breadcrust…… であるという。crust  は、パンの耳さ、とも教わった。私は、これを 、耳学問とよびたい。