press release から ー『英国王室が愛した花々』

英国王室が愛した花々

 

編集部宛のpress release『英国王室が愛した花々』(静岡市美術館、4月15日- 6月6日)が、届いた。
それを読むと、こういう構成になっている。1 英国王室と共に歩んだ植物画  2 シャーロット王妃がつないだ文化の開花  3 英国を魅了した東洋の植物画 4『カーティス・ボタニカル・マガジン』 5 女性画家たち。
そして、こういう解説も…… 〈科学的視点で描かれたボタニカルアート(植物画)は、写真誕生以前、貴重な記録であり研究資料のひとつでしたが、植物学の歴史を培うなかで次第に芸術性を見出されるようになりました。本展ではイングランドの国花であるバラをはじめ、チューリップ、ボタン、ランなど多数の植物が登場します。観察に基づいた精緻な描写と美しさが融合するボタニカルアートの世界を存分にお楽しみください。〉


風狂なひと

風狂伊野孝行個展

 

伊野孝行さんの個展『風狂』が、始まった。(HBギャラリー、4月21日まで)。
伊野さんに関するエピソードで好きなのは、神保町の某コーヒー屋で働きながら、セツモードセミナーに通っていた頃の話。セツ先生から 念願の「A」をもらい、その日は有頂天。コーヒー屋のお店の中から、傘をさして帰って来てしまった、という。驚いて見つめただろう店の人、お客さんを想像するとおかしい。彼の「私のセツ物語」は、コチラからごらんいただけます。どうぞ。

 


『金沢ばあばのまほう手帖』置いてくださっている本屋さん

旬の献立や掃除の工夫、季節のきまりごとなど暮らしの知恵をご紹介する『金沢ばあばのまほう手帖』。

金沢ばあばのまほう手帖

 

81歳のスーパー主婦マスダさんは、地元の旬の食材を水にさらしたり、塩で揉んだり、寝かせたり、よく和えたり……ちょっとしたひと手間や盛り付けで献立をぐっと美味しくお洒落にしてしまいます。あたりまえにしてきた習慣を忘れずに続けることや身の回りのことを大切にする気持ちが、周囲の空気を清涼なものにしたり、あらゆる命に感謝をもつ実践になっているのだと気づかされます。そんな家事の蓄積を彗星倶楽部の中森あかねさんが丁寧に聞き取りし、画家の武藤良子さんが素敵な絵を描いてくださって誕生した本です。

置いていただいている本屋さんを少しずつご紹介していきます。

 

古書善行堂さん

古書善行堂

ジャズの流れる空間で背表紙を眺めているだけで時間が経つのをすっかり忘れ、どんなジャンルの本を探していても何かしら+αでこたえてくださるご店主の山本さん。ここがきっかけで古本に嵌った方も多いはず。本にまつわるエピソードは何度聞いても落語のようで面白く聞き入ってしまいます。コロナを期に始めた善行堂倶楽部というオンライン選書も大人気。本をつくる人、読む人、皆さんから頼りにされる存在です。

 

 

 

マヤルカ古書店さん

マヤルカ古書店

移転される前も、移転されてからも、昔からずっとそこにあるような存在感の本屋さん。バリエーションに富んだ本棚はずっと眺めていたくなります。店内のあちこちにある民芸品や、2階で開催される展示も楽しく、ご店主の中村さんが独自の切り口で選ぶ新刊コーナーも必見と見所たくさんで、あっという間に時間が経ちます。大人になっても、本屋さんは胸がときめく場所なのだと思い出させてくれます。

 

 

レティシア書房さん

レティシア書房さん

古書、新刊、ギャラリー、そして全国各地のリトルプレスが並ぶ店内。さまざまな装丁や言葉遣いのZINEが放つ静かなる熱気に刺激をうけます。ご店主の小西さんの店長日誌には、毎日愛のある本や映画や音楽の紹介文を丁寧に書かれ、読みたいもの観たいものがまた増えていきます。『金沢ばあば』のことも書いてくださり「この本やったらこんな本屋さんに持って行ってみたら?」と素敵な本屋さんをいくつもご紹介くださり、とても励まされました。

 

1003さん

1003さん

神戸元町にある古本、新刊、リトルプレスの充実した本屋さん。好きな作家さんの本、気になっていた本、知らなかった本、知っていたけど再発見した本。こちらの本棚を巡ると未知の世界をぐるりと旅している感覚に陥り、インスピレーションが湧いてきます。車椅子やベビーカーの方でもすんなり通れるように棚と棚の間の通り道が広く、ゆっくりと落ち着いて本を探すことができます。

 

 

花森書林さん

花森書林さん

ジャンル問わず所狭しと並ぶ古書と雑貨がひしめき合い入れ替わり立ち代わり誰かが立ち寄ってご店主に話しかけていく。地域のいろんなことを繋ぐ場所なんだろうなと感じます。新刊は地元ゆかりのある方を中心に、入り口の棚に置かれています。突然の訪問にも関わらず、大事につくられた本をしっかり読者に届けたいという誠実な姿勢でお話を聞いてくださった印象的なご店主さんでした。


花森書林さんをご紹介くださった「おひさまゆうびん舎」は店主の窪田さんがご自身で手作りした絵本の世界が立体的に広がる楽しいしかけがいっぱいの店内でした。親子連れの方が次々と訪れていました。

 

 

とほんさん

とほんさん
商店街にある新刊が主の本屋さん。まだまだ知らない本や見過ごしていた本、読みたくなる本がたくさんありました。こんなに新しくいい本が生まれているのなら世の中捨てたものではないなと思います。住んでいても旅していても散歩の途中にこんな本屋さんに出会えただけでテンションが上がりそうです。ところで大和郡山は金魚の産地だそうで、店内には金魚が飼われ、人形がぶら下がっている地元感に和みました。

 

突然の訪問にもかかわらずあたたかく迎えていただき、丁寧に本を見て下さり、応援くださったご店主の皆様、ありがとうございました!一冊の本を届ける小さな旅はまだ続きます。

 


「不意のひと」の『ごきげんよう』

歌集『ごきげんよう』

詩人の平岡淳子さん

 

成城学園前駅からほど近いギャラリー「Quo Vadis」の展覧会に行くと、いつもこのひとの姿がある。
2階のカフェで、コーヒーなど運んでくれ、画家やお客さんの中にあって、手際よく、紹介してくれたり、写真を撮ったりする。詩人の平岡淳子さんである、と知ったのは、少しあとのことになる。このほど、歌集『ごきげんよう』(発行クリップ編集室)を上梓した、と知ったのは、ついこのあいだのことである。
紹介の文によると、「母・平岡淳子が娘・あみの17歳から26歳を詠う後期子育て歌集」であるという。これで、そうか、そういう母親であったのかと知った。絵は、宇野亜喜良さんであるという。そんなふうに、平岡さんは、不意のひとである。まだ、ほかにもいろいろな秘密があって、これからも、快い驚きを提供してくれるだろう。

  


お花見は絵はがきで

没後70年 吉田博展

没後70年 吉田博展

没後70年 吉田博展

『没後70年 吉田博展』( 東京都美術館、3月28日まで)に行った。
JR 上野駅の公園口のあたりは、少し様子が変わった。人の気配は、例年の何分の一か、改札口を出て正面に、「新しいお花見様式実施中」のカンバンがあり、「歩きながらのお花見をお楽しみください」の文字。待つ人も待たるゝ人も花見かな…… という俳句のようにはいかない。
〈 美が擂り重なる〉というコピーのついた『吉田博展』は、プロローグ、それはアメリカから始まった……  から、たくさんの作品を観ることができた。が、それももう終わり。帰り、せめて、花のポストカードを買って帰る。
お花見を、どうぞ。

 


窓辺に春

芳野版画展・窓辺で夢を見る

 

西荻窪の絵本やギラリーの店「ウレシカ行く。こちらとは、以前、経堂お店のあったころからの知り合いだが「もう、西荻って7年たちましたよ」という。時の流れ、驚く。トントンと木の階段を上がると、二階のギャラリーでは、『芳野版画展・窓辺で夢を見る』(4月5日まで)開催中。
〈窓はいつも気なるモチーフでした。旅行中、人々の生活の気配を感じる窓辺が気なり、上を見ながら歩く。仕事部屋の窓から、ここから海が見えたら ? と妄想。窓辺花瓶をいくつも並べ、花と光を楽しむ。……〉と、作者のことば。窓辺を楽しむのも、ならでは。
そして、芳野さんは、セツモードセミナー卒。そこでの想い出を「私のセツ物語」で 綴っています。あわせてお楽しみください。

 


行く春

「花に聴く」(花・文 道念邦子 、 写真・ニック・ヴァンデルギーセン)

 

春は、別れの季節。
本誌の連載でも、「花に聴く」(花・文 道念邦子 、 写真・ニック・ヴァンデルギーセン)が、最終回を迎えた。

水仙が、いけられ、文章はこんなふうに、終わっている。
〈…… いつものことながら逍遥するに無駄はなくいつしか心の扉も開かれる。限られた時間を閉じようとエネルギーが尽きる寸前の水仙に敬意を表して食べられる花をひと花ひと花目から剥がすようにして挿す。……〉

歳時記を見ていたら、こういう句があった。
水仙のこち向く花の香をもらふ 中村汀女

 

 

『チルチンびと』春107号

 

『チルチンびと』107号は、特集「60代、70代の家づくり」。好評発売中


みちのくの仏像の微笑み

写真展  みちのくの仏像  土門拳 × 藤森武

 

『写真展 みちのくの仏像 土門拳 × 藤森武』(八王子市夢美術館、3月28日まで)に行く。
「筑豊のこどもたち』をはじめ 、こどもたちを撮った土門拳の写真が好きだ。ここにあるのは、黒いバックに金色の光りを放つ、たくさんの仏像である。条件が整うまで、シャッターを切らなかったというのは、これか。1点1点に、その思いが焼き付いている。そして、不思議なことに、どの写真の仏像も、こちらを向いて微笑んでいるように見える。「東日本大震災から10年」というサブタイトル。〈…… 本展が風雪に耐え、みちのくの人々に受け継がれたいのりのかたちに思いをはせる機会となれば幸いです。〉と、パンフレットに書かれている。

 


電線のない街

電線のない街

電線のない街

 

『電線絵画展』(練馬区立美術館、4月18日まで)に行く。
展覧会のパンフレットに書かれているのは、
〈……文明開化の誇り高き象徴である電信柱を堂々、画面中央に据える小林清親、東京が拡大していく証として電柱を描いた岸田劉生、モダン都市のシンボルとしてキャンパスに架線を走らせる小絲源太郎、電線と架線の交差に幻想を見出した “ ミスター電線風景 ” 朝井閑右衛門。一方で、日本古来よりの陶磁器産業から生まれた碍子には造形美を発見することができます。……〉
見終わって 電線のない街にでる。


コハルアンとうるしびと〈神楽坂デイズ〉

コハルアン

村上修一

 

この「広場」の好評連載「コハル・ノート モノと語る」(はるやまひろたか)のなかで、「会津の塗りもの」について、こう書かれている。

〈 先人たちの知恵を使ってコーティングした、生活のための木の器。そんな観点で漆器を見直せば、高いと思われた敷居は、少しだけ低く見えるようになるかもしれません。僕自身、漆器についてはそういう見方で接してきたので、お椀も家ではがんがん使ってしまいます。味噌汁用の器というポジションにとどまらず、洋風のシチューやスープなどにも。……〉
そして、日々愛用している器をつくる、村上修一さんについて、話が展開する。
その村上さんが、『チルチンびと』107号に「うるしびと」というタイトルで登場。〈会津若松市内の山間部、山道の先に、ウルシの林はある。……
漆掻きの作業手順は至ってシンプルだ。まずはカマで木表面の硬い樹皮を削り取り、表れたやわらかい樹皮にカンナで傷をつける。傷から染み出してくる樹液をヘラで掬い取り、掻き樽にためる。単純な繰り返しだが、足元の悪い山中を動き回る重労働だ。……〉そして、器にうるしをほどこしていく様子も細かく見てとれる。

コハルアンは、地下鉄東西線の神楽坂駅下車。新潮社の一つ手前の通りを入って左側にある。店主のはるやまさんと村上さんの手による器が、出迎えてくれるだろう。

 

『チルチンびと』春107号

『チルチンびと』春 107号 好評発売中