セツに入学して、水彩の授業の合評会でいい絵の判定"A"が、なかなかもらえなかった。
いい絵とは何か、どうやったら描けるのか、頭でばかり考えていたその頃の私。
ある日の水彩の授業。
いつもはモデルを見て描く人物水彩だが、その日は校内のあちこちに置かれた花や花瓶の中から、モチーフを選んで描く静物水彩だった。
どのモチーフを描こうか...私が選んだのは、花でも花瓶でもない、電動の鉛筆削り。
午後の明るい窓際の、四角い白い椅子が並んだ上にポツンと置かれた鉛筆削りとひょろっと伸びるコードの様子が、美しく思えた。
花でも花瓶でもないけど、静物だし、いいよね...と自分を納得させて描いた。
どうせ"A"もらえないんだし、好きに描いちゃえ!というやさぐれ感もあったのかもしれない。
その絵が、セツで初めてもらった"A"。初川先生の"A"だった。
私はまさか花や花瓶を無視した絵で"A"を貰えるとは思わず、初めての"A"に飛び上がるほど喜んだ。と同時に、自分の視点でこれが美しいと思って描いたものを褒められて、目から鱗だった。
それからは、以前よりものびのび描くことができた。
セツ先生をはじめ、いろんな先生から"A"を頂くことが増え、絵を描くことがどんどん楽しくなった。
「色の魔術師だね!」と星先生の"A"。私は完全に、褒められてやる気がでるタイプだった。
なにより、素敵な絵を描く先生方からの"A"は嬉しかった。
デッサンの授業は線画が苦手なこともありサボりがちだったけど、色で描くことが楽しくて楽しくて、水彩の授業は1回で2枚とか、夢中になって、描けるだけ描いた。合評会で他の人たちの絵を見ることも、とにかく楽しかった。
イラストレーターとして仕事をするようになってからも、線より色の表現に重きを置いているのは、その頃の経験が大きかったように思う。
私にとってのセツ物語は、絵を描く仲間や先生たち、そしてその間を魚のようにスイスイ~と歩きまわって、生徒の腕や耳をキュッとつねったりする、最高に素敵な絵を描く長沢節先生。
かけがえのない、キラキラした宝物のような時間を過ごしたなあと、時々ふと思い出す。
芳野さん こんにちは。
初川先生まだ健在のころが懐かしいですね、セツの静物水彩画のモチーフはあちこちに花や瓶や小道具をさりげなく散らばってました、窓や扉も含めて静物だけではなく室内風景という感じでした。 それにしても芳野さんはエンピツ削りを、、、それは面白い、初川先生エライ!
色彩のいい芳野さん、この度も素敵ですよ。 また藤野あたりで一緒に絵を描きましょう。
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星先生 コメントありがとうございます。
“A”をもらった気分になりました。
エンピツ削りのある風景に”A”、とにかくビックリして、
どんなことよりも覚えているエピソードでした〜
星先生とまた写生会で水彩をのびのび描きたいです。