2013年2月19 の記事一覧

水戸芸術館に行ってきました

気になっていたのに気づけば最終日ギリギリで「高嶺格のクールジャパン」を観にいった。いくつかの部屋を進んでいく構成になっていて、「敗訴の部屋」では、昔から最近までの反原発運動の敗訴の見出しが大きく印刷されたものが突き出ている。「我慢の部屋」では、「我慢しなさい」「我慢しなさい」という声が聞こえてくる。「標語の部屋」ではいかにも明るく健全な標語の電光掲示板が回っている。どの部屋でも真ん中に寒そうに佇む人物の塑像がある。いわゆる経産省のじゃなくて“高嶺格の”クールジャパンの意味がだんだんわかってくる。

「ジャパンシンドロームの部屋」では、制作スタッフが鮮魚店や花屋、飲食店、釣り人などと放射能の影響について実際に交わした会話を寸劇にした映像作品が流れる。山口、関西、水戸バージョンがあり、地域やお店やその人の性格や、立場によって発する言葉は違う。やりきれなくなるような会話、居心地の悪い会話、思わず笑ってしまう会話、などどれもまったく脚色がなくリアルで、だからこそすっきりとした着地点がない。皆戸惑ったり、苛立ったり、あきらめたり、開き直ったりしている。

高嶺さんは私より少し年上で、「核・家族の部屋」での核実験の歴史(戦争直後から約2000回も繰り返されてきている)とご自身の家族のアルバムを重ねた年表は、自分が育ってきた風景と重なる部分も多い。何も考えずのほほんと暮してきた子ども時代、学生時代の背景にはこういうことがあったんだよな、と思い知らされる。

ちゃんと見てこなかった、また見ていない現実を突きつけられることこの上ない展示だった。放射能って? 景気って? 政治って? クールジャパンって? 日本人って? 自分って? ・・・見てから数日経っても、太字になった疑問符が頭から離れない。

 

近くの偕楽園では、これから梅も見頃です