2011年8月5 の記事一覧

日本の美に気づく

 

「風の旅人」という雑誌の編集長のブログ、7月30日の「物事が変わる節目」にちょっと感動してしまった。この中に「現在の日本に覆い被さっている西欧の形式だけを借りたようなシステムが、日本人本来の良さに蓋をしてしまう結果になっているのではないか」という記述があった。ここ、チルチンびと広場の「古道具屋の西洋見聞録」でも、著者の塩見さんは日本人と西洋人のメンタリティや習慣が違うのに、外見だけとりいれることに疑問を感じている。岡倉天心は100年も前に「諸君は心の落ちつきを失ってまで膨張発展を遂げた。われわれは侵略に対しては弱い調和を創造した。諸君は信じることができますか、東洋はある点で西洋にまさっているということを!」と言っている。

昨年、夏の終わりに京都旅行をした際、聴竹居を訪ねた。モダンな中にも日本的情緒をたっぷり残した外観。室内に流れる静謐で凛とした空気。単なるシンプルとも違う、飾り立てるのとも違う、細やかな視点での「美しい無駄」がところどころに散りばめられている。暮らしやすさを工夫した設計には発見がたくさんあって面白い。ことさらに「和」と「モダン」をうまくコラボレーションしました!みたいなアピールがなく無理のない美しさを追い求めていったらここにたどり着いたという自然体。折り目正しく誇り高い中にも、謙虚さも可愛らしさもあって・・・日本人が本来持っているはずの美意識が確認できるような、効率化を追い求めて忘れてきたものを立ち止まって思い出させてくれるような、静かで美しい場所だった。

 

本日発売の68号「チルチンびと  花の庭、花のしつらえ」の特集「響きあう花と“聴竹居”」では、むやみな西洋の模倣を滑稽と感じ、現代を生きる日本人の理想の住まいを作ろうとした建築家・藤井厚二が、今の日本に語りかけるものとはなにか、をこちらの保存活用の第一人者である松隈章氏が解説しています。花とともに撮った「聴竹居」の美しい佇まいが印象的。ぜひご覧いただきたい、素敵なページになっています。