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ただいま、撮影中 !

TOKYO ディープ!

昼に、神田小川町の「漢陽楼」に行った。靖国通りから三井住友銀行の脇の坂を上がる途中の左。周恩来が若い時分によく来た、肉団子スープが好物だった、という伝説の店、あそこです。中に入ると、いつもとフンイキが違う。何人かが、つっ立っている。そのうちのTシャツGパンスニーカー姿の女性が、「NHKです。申し訳けありません。番組の撮影中ですが、写るのはイヤですか?」と上の写真の紙を差し出した。「イヤです」。店の端のテーブルに案内された。そのテーブルの、なおかつ、端に寄って坐った。誰かが、インタビューを受けているらしい声が聞こえる。落ち着かないまま、食べ終えて外へ出る。10月12日夜の放送らしい。もし、ごらんになって「上海風卵焼き」を食べている人間が映ったら、それは、私です。

 


久しぶり、京橋・明治屋

京橋・明治屋

「京橋・明治屋ビル再開」のニュースを新聞で見つけた。
このビルは、1938年に誕生した。2009年に中央区の文化財に指定。大型再開発地区に入ったが、ビルの外観を保存して耐震補強工事を終え、再開されるという。9月16日からは、地階のカフェテリアも始まる、と書いてある。勤め先が近かったこともあり、以前の地階のレストランには、1000 回以上、通っている。ハンバーグステーキ、チキンライス、ワカサギのフライ、チキンカレー。チキンカレーは、大きいままの鶏肉で、おいしかった。ちょっとクラシックな、大人びた雰囲気の店で、なかなかよかった。……  などと思い出しながら、地下鉄・京橋駅から地上に上がると、薄茶色の外観はそのままだ。久しぶり。お変わりなく。

 


家 蕎麦

週末の 家 蕎麦。

昆布とかつお節から丁寧に出汁をとって、お蕎麦は冷水でキュッとしめる。

やっぱりお蕎麦はお蕎麦屋さんでいただくのが一番だなと思いつつ、

蕎麦打ちができる人を尊敬する、今日この頃。


読書の秋、庭暮らしの秋(後篇)

読書の秋、庭暮らしの秋(後篇)

『チルチンびと』85号。特集 - 我が家の庭暮らし /  暮らしに農の風景を- にちなんで、ビブリオ・バトル、秋の読書会。

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M氏 私は、かの牧野富太郎博士の『植物一日一題』(ちくま学芸文庫)。80歳過ぎて、1日に1話ずつ書かれた。植物そのものだけでなく「茶の銘玉露の由来」という話も。〈製したお茶の銘の玉露は今極く普通に呼ばれている名であることは誰も知らない人はなかろう。ところがこれに反して、その玉露の名の由来に至っては、これを知っている人は世間にすくないのではないかと思う。〉好きな時に好きな話を読む。

Yさん 『戦下のレシピ』(斎藤美奈子・岩波現代文庫)。これは戦時中の女性誌から、当時の台所事情を集めている。なかに「戦下の野菜図鑑」があり、例えば〈カボチャ ー 葉は味噌汁の実、おひたし、炒め物に、茎は炊き込みご飯、漬け物、煮付けに、茎は甘味があって蕗よりおいしいと評判 ⁉︎  〉家庭菜園にも哀しい時代のあったことを忘れない。
G君    哀しい記憶なら、『沈黙の春』(レイチェル・カーソン ・新潮文庫)。アメリカのある町。〈ところが、あるときどういう呪いをうけたのか、暗い影があたりにしのびよった。 ……  かつて目をたのしませた道ばたの草木は、茶色に枯れはて、まるで火をつけて焼きはらったようだ。〉農薬など化学薬品の影響で生命の火は消えた。そのすべてを描いた名作。しかし、日本にも、 “沈黙の春” がきた。 - みんな、重い沈黙になった。

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『チルチンびと』85号は、9月11日発売予定です。お楽しみに。

 


読書の秋、庭暮らしの秋(前篇)

読書の秋、庭暮らしの秋

『チルチンびと』85号の特集 ― 我が家の庭暮らし / 暮らしに農の風景を―  に、ちなんで、ビブリオ・バトル、秋の読書会。

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C君 いまさら、と仰るでしょうが『園芸家12カ月』(カレル・チャペック・中公文庫)。九月なら、こういう言葉〈九月は、われわれが植物を植えることができるように、大地がもういちど入口をあける月! 春までに根づくものは、いま土におろさなければならない。〉というふうに、その月ごとの呼び掛け。これがいい。魅かれます。

Uさん またかと、仰るでしょうが『富士日記』(武田百合子・中公文庫)。ご存じ、武田泰淳さんとの日々をつづるところどころに、草や木の描写。なんともステキ。〈庭の花は終ってしまった。咲き残っている松虫草の花びらは、白っぽく紙のようになってしまっている。赤い実がなるトゲトゲのある木が、今一番元気がいい。リスかイタチのくる足音かと思うと、一枚ずつ木の葉が落ちる音だ。〉 ねっ。

S氏 宮沢賢治が、花壇や造園に熱心だったことは、知ってるよね。その賢治のスケッチふうの設計図からうまれた、盛岡少年院の花壇「涙ぐむ眼」誕生のいきさつが、書かれています。『宮沢賢治と植物の世界』(宮城一男、高村毅一・築地書館)。瞳のところは、目尻は、何の花を植えるか? などのアイデア。賢治の作品と植物との接点が、読めるんだ。

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『チルチンびと』85号は、9月11日発売予定。お楽しみに。

 


たまごサンド考


たまごサンドといえば、ゆでたまごをみじん切りにしてマヨネーズで和える。あのタルタル状のものがあたりまえと思って生きてきたが、関西でたまごサンドを頼むと、かなりの確率で挟まれた卵が玉子焼き状態になっている。うっすら上品からし味だったり、がっつりベーコン入りのオムレツだったり。すこし戸惑うけれど、これが美味しい。意外なのは、ゆで卵の方があっさりしているかと思いきや、マヨネーズをたっぷりと混ぜたものが多く、焼いてないパンに塗られた溶けきらないバターの食感と重なって見た目よりもお腹にずしっと来ることが多い。対するオムレツ版は、ふわっと焼き上げたものにトマトソースが塗ってあったり、トーストで挟んだものに出会うことが多いので、さっくりジューシー。見た目よりあっさり食べられる。もちろん焼いてあるパン、ないパン、バターの量、卵のボリューム・・・絶妙のさじ加減に工夫されたものは全部それぞれに美味しいけれど、個人的には只今絶賛オムレツサンド派です。





 


柳原良平さん

柳原良平さん

 

柳原良平さんが、亡くなられた。

いまから、40年以上も前、日本ペンクラブの活動資金を集める催しが、あった。会場には、いろいろな作家の色紙が、並んでいた。柳原良平さんの絵 + 山口瞳さんの書 + 大伴家持の歌。迷うことなく、これにきめた。

柳原良平さんついて、山口さんは『男性自身』のなかで、こう書いている。 〈柳原さんは不器用なのである。あんなに巧緻な切紙の絵を見たり、複雑な船の模型を見たりすると、とても信じられないけれど、実際は大変なブキッチョである。切紙には片刃の剃刀を使うが、切り傷が絶えない。〉 〈むかし、二人でトリス・バーで飲んでいたときに、勘定書を見ると、Tハイという欄に書かれた正の字が欄外にはみだしていて、それがずっと下のほうまで続いていて、そこからさらに左に曲り、裏面まで続いているということがあった。正の字が一字で五杯だから、何杯飲んだか見当がつかない。〉

この色紙を持って、近くの公園へ行き、ベンチに置いて写真を撮った。「オジサン、この人、だあれ?」と遊んでいた子どもが聞いた。

 


世界中から惜しむ声

ホテルオークラ東京の本館が8/31で閉館。

建て替え計画の再検討を求める声が、

世界各地から上がっているというニュースを耳にしたが、

計画通り2019年開業に向けて工事に入る。

高層ホテルに生まれ変わるという。

吊り灯具と木組みの格子が美しいロビーには、

取り壊しを惜しむ声や、

その空間をカメラに収める人達であふれていた。

 

 


桃豚の会

foodscape! さんで開催された桃豚の会に行ってきました。ご店主の料理開拓人・堀田裕介さんは料理人として日本各地の素晴らしい生産者さんたちとの出会う中で、料理を作り、食べてもらうだけでなく、生産者さんの想いを伝えたり、もっと多方面から食に関するアプローチをしていきたいと、今年6月大阪にこちらのお店をオープン。1階はベーカリー(すごくおいしい)とコーヒーショップ、2階はイベントスペース。大通りに面した建物の窓ガラスと白壁には素敵なドローイング、木のインテリアもモダンで落ち着いたデザインで、食べ物屋さんというよりギャラリーのような雰囲気。心地よい空間です。

今回のイベント、テーマは桃豚。収穫時に落ちてしまったり、形や色が悪くなってしまって出荷できない桃を、豚さんに食べてもらうという福岡県うきは市の豚農家・杉さんと桃農家 ・赤司さんがタッグを組んだ画期的な取り組みが紹介されました。foodscape!さんとうきは市の農家さんを繋いだ、井口和泉さんという女性もいらしていて、ふんわりした優しそうなのに、なんと自ら狩猟しジビエ料理をされる方だそう。ライターとしても活躍され『料理家ハンターガール』という本を出されてます。ウエルカムドリンクの、濃厚な黄桃のカクテルをいただきながら、お話を聞きました。

赤司さんは20種類ほどの桃を育てていて、なかでも加工品によく使われる黄桃は若いときは酸っぱくて硬く、かなり熟さないと生でいただくには適さないのだとか。でもいい感じに熟すのを待っていると当然傷んだり落ちたりする物も増える。大切に手をかけて育てた桃が、そうやって無駄になってしまうのはしのびない、と思っていたところ自然豊かな環境で豚を育てるところからこだわり、ハムやソーセージを作っているリバーワイルドハムファクトリー の杉さんと出会い、これらの桃を豚に食べてもらおうと思いついたそうです。杉さんは柿などほかの果物でも同じ試みをされていて、そうすると香りよく甘みのある豚肉になるそう。お話を伺いながら、桃の花が咲くころ、うきは市を訪ねてみたくなりました。

お話を聞き終わると、桃と豚を使った料理が次々に登場!桃とジャガイモのスープ、桃のコンフィチュールを乗せたパテドカンパーニュ、夏野菜とチャーシューのグリル、カツサンド、煮込み、ローストポーク・・・

 


 

どれもすべて美味しく美しく、瑞々しくて力強い味。生産者さんと料理人さんの丹精が感じられる素晴らしいメニューの数々をいただけて、お腹も心もいっぱいになりました。食べ物が口に入るまでの過程を知ることは食べることへの感謝や幸福感を増し、食への意識が一歩深くなる気がします。今後またどんな生産者さんたちに出会えるのか、楽しみな場所が増えました。

 


太宰治と碧雲荘

碧雲荘

夜。ラジオを聞いていたら、太宰治『富嶽百景』の話だった。そのなかで、この作品に書かれたアパートは、荻窪の碧雲荘といい、近々、取り壊されることになり、現在、保存運動が行われている言っていた。明日になったら、碧雲荘を見に行こう、『富嶽百景』をまた読んでみよう、と思って寝た。

荻窪税務署の裏側の路地を入ると、すぐ右に木造の二階家が、見えた。玄関脇の植え込みは、伸び伸びと大きく育っている。いまは、だいぶ疲れた感じの二階が見える。その八畳間に、太宰治は、住んでいたという。

帰りに『富嶽百景  走れメロス』(岩波文庫)を手に入れて読んだ。
〈東京の、アパートの窓から見る富士は、くるしい。冬には、はっきり、よく見える。小さい、まっ白い三角が、地平線にちょこんと出ていて、それが富士だ。なんのことはない。クリスマスの飾り菓子である。…… 〉

碧雲荘の取り壊しに反対する催しが、9月14日6時半から、又吉直樹さんらを招いて、杉並公会堂で開かれるという。