柳原良平さん
柳原良平さんが、亡くなられた。
いまから、40年以上も前、日本ペンクラブの活動資金を集める催しが、あった。会場には、いろいろな作家の色紙が、並んでいた。柳原良平さんの絵 + 山口瞳さんの書 + 大伴家持の歌。迷うことなく、これにきめた。
柳原良平さんついて、山口さんは『男性自身』のなかで、こう書いている。 〈柳原さんは不器用なのである。あんなに巧緻な切紙の絵を見たり、複雑な船の模型を見たりすると、とても信じられないけれど、実際は大変なブキッチョである。切紙には片刃の剃刀を使うが、切り傷が絶えない。〉 〈むかし、二人でトリス・バーで飲んでいたときに、勘定書を見ると、Tハイという欄に書かれた正の字が欄外にはみだしていて、それがずっと下のほうまで続いていて、そこからさらに左に曲り、裏面まで続いているということがあった。正の字が一字で五杯だから、何杯飲んだか見当がつかない。〉
この色紙を持って、近くの公園へ行き、ベンチに置いて写真を撮った。「オジサン、この人、だあれ?」と遊んでいた子どもが聞いた。