書籍

ベニシアさんの庭づくり

ベニシアと正、人生の秋に

 

この春、松屋銀座で『ベニシアさんの手づくり暮らし展』が、開かれた。人生の四季、という感じに、ベニシアさんの幼い頃からの写真が展示されていた。そして、会場内には、ベニシアさんの庭がつくられ、その庭をバックに 自由に撮影していいことになっていた。庭の隅に、ストーブ用の薪が積んであったのが、ほほえましかった。

『ベニシアと正、人生の秋に』には、その庭を、たくさんの写真でたっぷりみせてくれる。そして、庭づくりの経緯についてのこういう話もある。

〈 ……  40坪ある庭を六つの小さな区画に分けて、1年ごとに新たな庭をつくっていった。やっていくうちに、ベニシアはそれぞれの区画ごとに庭のテーマを決め、名前を付けた。玄関前の「ポーチガーデン」。元々あった「日本風の庭」。ベニシアが幼少期から憧れていた「英国風コテージガーデン」………。〉

楽しい庭づくりの様子が伝わってくる。

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『ベニシアと正、人生の秋に  ー  正  ありがとう。すべて、ありがとう』は、風土社刊。9月20日発売。定価(本体1800円+税)。


『ベニシアと正、人生の秋に』近日発売!

ベニシアと正、人生の秋に

 

NHKBS『猫のしっぽ カエルの手』や本誌の連載「京都大原の山里に暮らし始めて」でおなじみの ベニシアさん。

この本『ベニシアと正、人生の秋に -  正、ありがとう。すべて、ありがとう 』で、夫の梶山正さんは、こう書いている。

〈目が不自由になったベニシアと正面から向き合うようになって、1年近くの月日が流れた。もちろん僕たちは、同じ家で一緒に暮らす夫婦だ。
とはいえ、昨年9月にお手伝いのSさんが辞めるまでは、ベニシアのことを僕はよく見ていなかったと思う。Sさんと気が合うようなので、僕はベニシアのことを彼女にまかせていた。そして自分の仕事や好きな登山のことばかりを考えていたのだ。
Sさんが来なくなったので、1日3度のごはんは僕がつくるようになった。病院への付き添いや買い物にも行くようになったし、洗濯や掃除などの家事が僕の仕事になった。そうしてベニシアとの夫婦生活に関わる時間が増えたことで、小さな発見が毎日のようにある。……〉

ベニシアさんが暮らす、あの大原の家を包む、光と影は。


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『ベニシアと正、人生の秋に』は、風土社刊。定価(本体1,800円+税)。9月20日発売。


アイアン作家の庭

感性の造景

 

秋涼し。『チルチンびと』秋  101号の特集は、「庭のいろいろ」。バラエティに富んだ記事から、こんな例も。

「感性の造景  ー  伊豆の海と空に映える、アイアン作家の庭 ー」

〈 …… 6月上旬、伊豆半島の東端、城ヶ崎海岸近くにある「J – GARDEN 」では入り口のゲートの上に赤いブーゲンビリアがこぼれんばかりに咲いている。中に入ると、ごつごつとした岩が白く縁取られた、独特の模様の建物がそびえ、壁や地面にも同じ模様が広がる。 伊豆の空の青に映えて、不思議なほどうつくしい。 …… 〉

〈 ……  この庭はオーナーの石井良彦さんが自ら30年かけてつくりあげたものだ。石井さんは「フリーランス」としてさまざまな仕事をしてきた。ロートアイアン(鍛鉄)作家であり、門扉や看板など多くの作品を創作。また高い木の剪定や間伐を行う「空師」でもある。…… 〉

いかがですか。

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『チルチンびと』101  秋号は、9月11日発売。お楽しみに。


庭師の庭

チルチンびと101号 庭師の庭

 

秋惜しむ。『チルチンびと』101 秋号の特集は「庭のいろいろ」。そのうちの一つ、「雑木の庭」を、そっとご紹介します。

「雑木の庭 -広い庭がある庭師の家-」(設計・横内敏人)。

御影石が敷かれ、アオダモやソヨゴなどの雑木が美しく植えられたアプローチをぬけて、玄関からリビングに入ると、目の前に広がる新緑の景色。この景色をつくりだすのは、建築家の横内敏人さんと庭師の名取慶さんと父の満さん。

〈 …… 自然の中に自分が住んでいるというイメージで、窓の近くにはヤマモミジやハウチワカエデなどの落葉広葉樹を主木に置いた。雑木は夏に葉をつけ、家に入る強い日差しを遮ってくれる。冬は落葉し日光が室内に届いて暖かい。四季も感じられるし、見て楽しむだけでなく、住宅にとって省エネ性能や温熱環境の観点からも理にかなっている。……〉

いかがですか。

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『チルチンびと』秋  101号は、9月11日発売です。お楽しみに。

 


下鴨の終のすみか

下鴨の終のすみか

 

秋高し。『チルチンびと』秋  101号の特集は「庭のいろいろ」。よそのおたくの庭を、拝見。という楽しい企画の中から、ひとつご紹介します。

「坪庭-下鴨の終のすみか-」(設計・木原千利)の中の一節。

〈 ……  自然とともに生きているということを生活の中で感じ取れるよう、坪庭の植木は紅葉して落ちる風景が様になる落葉樹のイロハモミジを主木に、根元にはタマリュウを敷いた。住宅の庭なので、掃除も落ち葉を集めて捨てるくらいの手入れですむようにしている。 サビジャリを敷いた坪庭の垣根には常緑樹のマンサク、寝室側にはツバキやツツジ、リビング側にはヤマアジサイを植えた。……〉

いかがですか。


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『チルチンびと』101 秋号は、9月11日発売です。お楽しみに。

 


縁側を考える

チルチンびと101号

 

秋来たる。『チルチンびと』101  秋号の特集は「庭のいろいろ」。庭に咲く花のように、多彩な記事から、1本をご紹介します。

「縁側を考える ー  夏目漱石の住空間」(エマニュエル・マレス)の考察は、こんなふうに展開しています。その一部を。

〈…… 漱石は建築空間に細心の注意を払っていたが、庭に関する記述は不思議なほど少ない。「日本に帰りての第一の楽みは蕎麦を食ひ日本米を食ひ日本服をきて日のあたる縁側に寝ころんで庭でも見る」と妻鏡子宛の手紙に書いたほどであるから庭に無頓着ではなかったはず。……〉
〈…… 漱石山房の庭というのは文字通り「硝子戸の外」であり、作家の執筆の空間という現実に対して、自由奔放に想像を膨らます、空想や虚構の空間であったのかもしれない。……〉

いかがですか。


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『チルチンびと』101  秋号は、9月11日発売です。


安西水丸さんの想い出

『安西水丸 1本の水平線』展

『安西水丸 1本の水平線』展

 

『安西水丸1本の水平線』展(ノエビア銀座ギャラリー、8月23日まで)に行く。このギャラリーは、並木通り、最中の空也の少し先にある。お久しぶりです。あの線、色、形、文字、みんな懐かしい。安西さんの文章には、哀感が漂っていて、千倉、母親、海が出てくる場面が好きだ。たとえば、花畑でのある日。
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  海が銀色に光っていたのだ。ぼくがいつも海水浴をしている入江も銀色だった。水平線にはカモメの大群が飛んでいた。
「お母さん、海が光ってるよ」
「何でしょう」
ぼくたちは花を摘む手をとめて海岸へと向かった。そこに見たのはイワシの大群だったのだ。ぼくは母といっしょに両手で掬うようにしてイワシを獲った。
 土地の人に聞くと、それは「イワシが上る」といった現象でめったにないことらしい。(『a  day  in  the  life』「花のある生活、きれいな言葉だ」   安西水丸著・風土社刊)


小笠原のアオウミガメ

小笠原のアオウミガメ

 

好評発売中の『チルチンびと』100号の 122ページに「小笠原からの手紙」という記事がある。小笠原の研究者たちが、島のいろいろな話題をレポートする連載企画である。今回は「アオウミガメ」。ちょうど6月ころが、産卵の時期だという。写真と文は、新行内 博さん。

今年の春。新行内さんが、ちょっとこちらに用があってと、ひょっこり現れた。パソコンには、たくさんのウミガメの写真。海中での交尾。産卵のため島に来て、適した場所を探す様子。気に入った浜で大きな穴を掘る。そして、産卵。終わって海に帰る。ここまでで、4時間。そして、孵化。子どもたちが、海に向かう。夜の海の写真が美しい。

こんな長いあいだ追いかけるなんて、タイヘンですね、と言うと、「時間があるんですよ」と笑った。島の通勤時間、家から学校までは5分だという。高校で、生物を教えていたが希望して小笠原に赴任した。島と本土を結ぶのは、週1回の船便だけ。「それで疎外感を持つような人は、島を離れるのでしょうが、私はそんなことはありません。赴任して6年、一度も風邪をひきませんし、快適 」と、また笑った。

 


類人猿・ボノボ親子の距離

類人猿・ボノボ親子の距離

間もなく『チルチンびと』夏  100号の発売です。特集は〈木と土の家〉〈親子の距離と間取り〉の二本立て。

〈親子の距離と間取り〉から、「ボノボ ー  子殺しの無い父系母権社会」(伊谷原一)を、ご紹介します。類人猿 ボノボに焦点を当てた記事ですね。

〈 ボノボは雌雄ともに集団内のいろいろな相手と交尾をする乱婚であるため、生まれてきた子どもの生物学的父親を特定することは難しい。また複雄複雌の集団で生活しているため、特定のオスが社会的父親の役割を果たすこともない。したがって、ボノボ社会にみられる明瞭な親子関係は母子関係だけとなる。……〉   

こうしたボノボは、どんな親子の距離をつくっているのか。ボノボの社会の中に、人間の親子関係を考えるヒントがあるかもしれない。いかがですか。


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『チルチンびと』夏  100号は、6月11日発売。お楽しみに。

 


山口民家作事組宣言

山口民家作事組宣言

間もなく『チルチンびと』夏  100号の発売です。特集は〈木と土の家〉 〈親子の距離と間取り〉の二本立て。 

〈木と土の家〉から、「山口民家作事組」の記事をご紹介します。
俳人・松尾芭蕉のとなえた「不易流行」の言葉を借りた、家づくりをめざす人たち。
その「山口民家作事組宣言」は、以下の如し。

「山口県にふさわしい住宅はどんな住宅か?」を行政、建築士会、工務店、研究者らと議論する中で、皆さんの想いが「伝統民家派」と「最先端住宅派」にハッキリ二分されていると感じました。果たしてそうだろうかと研究し、どちらでもない「中庸の住宅」こそが山口県のような温暖で、かつ敷地に余裕があるような地域にふさわしい住宅だという結論にたどり着きました。  そこから生まれたのが「阿知須・木と土の家」です。
不易流行 ー  伝統的なもののいいところは残し、弱みを新しい技術で補うことですぐれた家をつくります。 

水沼   信 (山口県産業技術センター)

力強いですね。


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『チルチンびと』夏  100号は、6月11日発売です。お楽しみに。