魯山人の醤油注ぎ

魯山人の醤油注ぎ

 

『北大路魯山人』展の案内をいただいた。(7月2日 –  8月25日まで、千葉市美術館で)。魯山人といえば、ついつい思い出すのは、山口瞳さんのエッセイである。たとえば、「魯山人の醤油注ぎ」(文藝別冊『山口瞳』 河出書房新社)。山口さん、子供のときから、魯山人があまり好きではなかった、といいながら、こんなふうに書くのだ。

〈  しかし、私は、だんだんに、実に三十年以上もかかって、この巨人、この大天才(  私はピカソよりも才能があると思っている)を理解するようになった。たとえば、この写真にある醤油注ぎである。日本の巨匠連中は、絶対に、こういうものを造らない( 造れない )。私には陶器はわからないが、醤油注ぎを造る魯山人の心を理解するようになった。愛するようになった。第一に、魯山人の陶器は使いやすいのである。  〉……

展覧会に、醤油注ぎがあるといいな。

 


小笠原のアオウミガメ

小笠原のアオウミガメ

 

好評発売中の『チルチンびと』100号の 122ページに「小笠原からの手紙」という記事がある。小笠原の研究者たちが、島のいろいろな話題をレポートする連載企画である。今回は「アオウミガメ」。ちょうど6月ころが、産卵の時期だという。写真と文は、新行内 博さん。

今年の春。新行内さんが、ちょっとこちらに用があってと、ひょっこり現れた。パソコンには、たくさんのウミガメの写真。海中での交尾。産卵のため島に来て、適した場所を探す様子。気に入った浜で大きな穴を掘る。そして、産卵。終わって海に帰る。ここまでで、4時間。そして、孵化。子どもたちが、海に向かう。夜の海の写真が美しい。

こんな長いあいだ追いかけるなんて、タイヘンですね、と言うと、「時間があるんですよ」と笑った。島の通勤時間、家から学校までは5分だという。高校で、生物を教えていたが希望して小笠原に赴任した。島と本土を結ぶのは、週1回の船便だけ。「それで疎外感を持つような人は、島を離れるのでしょうが、私はそんなことはありません。赴任して6年、一度も風邪をひきませんし、快適 」と、また笑った。

 


クリスチャン・ボルタンスキーという男

『クリスチャン・ボルタンスキー』展

 

『クリスチャン・ボルタンスキー』展(国立新美術館、9月2日まで)に行く。〈50年の軌跡  ー  待望の大回顧展 〉のサブタイトル。


その作品は ……………… 咳をする男。なめる男。1951年にクリスチャン・ボルタンスキーが所有していた一組の長靴の粘土による復元の試み。……………… と、つづいていくのである。………………

 


モローと宿命の女

ギュスターヴ・モロー展

ギュスターヴ・モロー展

 

『ギュスターヴ・モロー展』(パナソニック 汐留美術館、6月23日まで)に行く。
〈  サロメと宿命の女たち 〉  のサブタイトル。そして、「パリの宝石箱からこぼれ出た、幻想世界。」「モローが描いた女性、一堂に会する。」というコピー。そして、パンフレットに、こういう文章。

〈……  神話や聖書に登場する、男性を死へと導くファム・ファタル(宿命の女)としての女性、誘惑され破滅へと導かれる危うい存在としての女性、そしてモローが実生活において愛した母や恋人。展覧会では、彼女たちそれぞれの物語やモローとの関係を紐解いていき、新たな切り口でモロー芸術の創造の原点に迫ります。〉

 


梅雨の晴れ間に、男の夢

松方コレクション展

松方コレクション展

 

『松方コレクション展』( 上野  国立西洋美術館、9月23日まで) へ行く。

パンフレットには、〈 モネ、ルノワール、ゴッホ…… 流転の傑作、百年の物語 〉 とあり、チケットには、〈 最高の絵を見せてやりたい ー モネを口説いた男の夢。〉とある。
ゴッホ「アルルの寝室」、 モネ「睡蓮」、ルノワール「帽子の女」…… マティス、ゴーガン、ミレイ、マネ、ロダン…… 男の夢をたくさん見る。

 

 


ゆかた、今昔物語

ゆかた 浴衣 YUKATA ー すずしさのデザイン、いまむかし

ゆかた 浴衣 YUKATA ー すずしさのデザイン、いまむかし

 

『ゆかた 浴衣 YUKATA ー すずしさのデザイン、いまむかし』(泉屋博古館、7月7日まで)に行く。

〈 ……  ゆかたは、江戸時代に入浴後のくつろぎ着として着られるようになり、やがて夏の気軽な外出着として定着しました。素材も麻から木綿へと変化する中で、「型染」や「絞り」など染めの技法が発達し、ゆかた独自の「いき」な図案が誕生します。…… 〉という解説がある。
ゆかた美人、江戸時代のゆかた、町方女性のゆかた、人間国宝のゆかた、画家がデザインしたゆかた…… たくさんのテーマのゆかたを見て、思い出すのはこの一句。

浴衣着て少女の乳房高からず   虚子


セツ・ミュージック・セミナー

6月22日の、こういう催しのご案内を 、いただいた。
その翌日の6月23日は、セツ先生が亡くなられた日。もう、20回忌だという。

 “  広場  ” では、セツで学んだ方々に、
セツ先生と学校の思い出を、書いて(描いて)いただいております。
そちらもあわせて、お楽しみください。

 


こんな時代もあった

時代 立木義浩写真展

時代 立木義浩写真展

 

『時代 立木義浩写真展』(上野の森美術館、6月9日まで)に行く。

勝新太郎がいる。夏目雅子がいる。黒澤明がいる。大原麗子がいる。あれは、山口百恵かな。……  
「人間は割り切れない。写真は、割り切れない人間を、四捨五入する」
「写真のために存在しているものは、ない」
という、言葉が添えてある。
熱い時代。暑い日。館内のカフェで、アイスコーヒーを飲んで、帰る。中島みゆきの『時代』が、聞こえてくる。

 


親子が暮らしやすい家

親子が暮らしやすい家

 

間もなく『チルチンびと』夏  100号の発売です。特集は〈木と土の家〉〈親子の距離と間取り〉の二本立て。

〈親子の距離と間取り〉から、こんな記事をご紹介します。建築家・松本直子さんが、N邸をつくったときの「親子が暮らしやすいN邸のポイント」です。ごらんください。

①母親の定位置(たとえばキッチン)から
家中の気配を感じ、適宜見通せること
② 家族それぞれが、のびのびと時間を過ごせる居場所と、家族同士のさまざまな距離感
③ 回遊動線、家事動線に無理や不自然さがないこと
調理などは家族全員が自然に参加できること
④ 朝から明るい水まわり、まとまった収納
(ファミリークローゼット、パントリー、ライブラリー)
⑤緑と火、空を取り入れて光や風を愉しむ
自然とともにあり、自然を愉しむ

母親建築家、らしい視線があちこちに。


………
『チルチンびと』100  夏号は、6月11日発売です。お楽しみに。

 


類人猿・ボノボ親子の距離

類人猿・ボノボ親子の距離

間もなく『チルチンびと』夏  100号の発売です。特集は〈木と土の家〉〈親子の距離と間取り〉の二本立て。

〈親子の距離と間取り〉から、「ボノボ ー  子殺しの無い父系母権社会」(伊谷原一)を、ご紹介します。類人猿 ボノボに焦点を当てた記事ですね。

〈 ボノボは雌雄ともに集団内のいろいろな相手と交尾をする乱婚であるため、生まれてきた子どもの生物学的父親を特定することは難しい。また複雄複雌の集団で生活しているため、特定のオスが社会的父親の役割を果たすこともない。したがって、ボノボ社会にみられる明瞭な親子関係は母子関係だけとなる。……〉   

こうしたボノボは、どんな親子の距離をつくっているのか。ボノボの社会の中に、人間の親子関係を考えるヒントがあるかもしれない。いかがですか。


………
『チルチンびと』夏  100号は、6月11日発売。お楽しみに。