かわいそうな桜

井の頭公園

井の頭公園

井の頭公園

井の頭公園

「今年の桜はかわいそうだったわねえ、だれも、見にこないで」
「人に見てもらうために、咲くんだからね」
「咲いたと思ったら、雪が降ったりして、寒かったでしょうね」
と、老婦人二人、話していた。
井の頭公園、池にかかる橋の上で。

けふもまた花見るあはれ重ねつつ       山口青邨


背く画家・津田青楓

『生誕 百四〇年記念  津田青楓』展

『生誕 百四〇年記念  津田青楓』展

『生誕 百四〇年記念  津田青楓』展

『生誕 百四〇年記念  津田青楓』展(練馬区立美術館、4月12日まで)に行く。ウイルスに押されて閉館している美術館は多いが、ここは、背を向けてがんばっている。
この展覧会にちなんで出版された図録の表紙に〈夏目漱石に愛された画家〉の文字が読める。その漱石が、「津田君の画には技巧がないと共に、人の意を迎へたり、世に媚びたりする態度がどこにも見えません。一直線に自分の芸術的良心に命令された通り動いて行くだけです。……」と津田青楓について、1917年に書いた文章が引用されている。

背く画家 津田青楓。


星センセイの『暮しの手帖』

星センセイの『暮しの手帖』

 

…… 『暮しの手帖』、ボク 被写体はともかく 、 川内倫子さんの写真は、さすがです。25日に店頭に並ぶそうですから、ちょっとのぞいてみてください。 …… というメールが、星信郎センセイから届いた。
  さっそく、買いましたよ。「私の手帖  心の垣根をなくしたら」という記事。たとえば、「自由も大事だけど、ぼくはむしろ自然体が好きだね」「周りと比べるよりも、自分の『遊び心』を大切にしたほうがいいと思うんだ。お茶を淹れるのだって、素敵な人を見て、ああいいなと思うのだっていいんだ」などと話している。
 この「広場」の連載 『私のセツ物語』は、甘酸っぱい青春をセツ卒の人たちが描いて好評だが、そこに毎回添えられる星センセイのコメントも人気だ。よくまあ、生徒一人ひとりの在学中のプロフィールを、的確に記憶力たしかに書くものだ。そこに、静かな愛情を感じさせる。いまも、週末「代々木デッサン会」に出席、モデルと向かい合う、という。人や絵に寄せる、穏やかな愛情と視線。
   「 さっそく、読みましたよ 」とセンセイにメールしたら「笑っていいとも!  ですよ」と一昔前のギャグが、返ってきた。
   どうか、いつまでも、お元気で。


誇り高き絵師たち

『もうひとつの歌川派 ⁈   国芳 芳年 年英 英朋 朋世』展

『もうひとつの歌川派 ⁈   国芳 芳年 年英 英朋 朋世』展

 

『もうひとつの歌川派 ⁈   国芳 芳年 年英 英朋 朋世』展(弥生美術館、3月29日まで)に行く。パンフレットに 「浮世絵から挿絵へ…… 歌川派を継承した誇り高き絵師たち」と、ある。
さらに読んで行くと〈浮世絵から挿絵へ…… 歌川派を継承しているという誇りを胸に掲げ、挿絵の世界で大きく羽ばたきながらも、時の流れに埋もれてしまった絵師たち。知られざる「もうひとつの歌川派」が、今、鮮やかによみがえります。〉とある。
そして、もう一つの展示は『はいからモダン  袴スタイル展』。卒業式も、ほとんどが流れてしまったなあ、と思う。

 


金子國義さんの美少女

金子國義展  聖者の作法

 

『金子國義展  聖者の作法』(Bunkamura Gallery、3月25日まで)に行く。
あちこちの美術館が、コロナウィルスの影響で閉じているおり、こういうギャラリーの健闘はうれしい。
おなじみの、あの顔、あの目、あの唇、あの脚……。『金子國義の世界(『ユリイカ』臨時増刊号・青土社刊)で、澁澤龍彦さんの質問に、金子さんが答える企画〈金子國義へ美少女についての10の質問〉がある。面白い。そこで、「あなたにとって美少女の魅力のポイントはどこでしょうか。肉体の部分をいくつか具体的にあげてください。」という問いに、金子さん、こう答えている。顔についての部分を引用。
「顔 ー 小さいこと、斜めを向いたときに、頬骨が出ないこと。目はつぶったときに、瞼の上から眼球のかたちがはっきりと分かること。鼻は寸がつまっていること。口は小さすぎないこと。鼻と口のあいだが短く、人中がくっきりと割れていること。……」

 


ハマスホイと背を向ける女性

『ハマスホイとデンマーク絵画』展

『ハマスホイとデンマーク絵画』展

『ハマスホイとデンマーク絵画』展(東京都美術館、3月26日まで)が、ひらかれている。話題は、「背を向けた若い女性のいる室内」なのだろう。
展覧会にちなんで出版された図録の73ページの解説にも、こうある。

〈作品の核となっているのは、幾何学的な画面構成である。左上の額縁、上品なブルーの壁を縁取る細いライン、その下の白い装飾パネル、そして蓋が閉じられたピアノ。複数のモティーフが描き出すいくつもの直線が、四角いカンヴァスの中で小気味よく、かつ整然と響き合っている。…… ピアノの上に置かれたパンチボウルと、後ろ向きの女性は、まるでこの幾何学的な世界に柔らかな風を吹き込むかのように、なめらかな曲線で形取られている。……〉

ずっと昔、『ウナ・セラ・ディ東京』という岩谷時子さん作詞の歌が流行ったことがある。その歌の「街は いつでも後ろ姿の 幸せばかり」というあたりが、帰り途、いつまでも、頭の中に聞こえてきた。

 


咲くや春

道念邦子「花に聴く」

 

特集〈ごはんを楽しむ家〉  特集〈スーパー台風に強い屋根
2つの特集を組んだ『チルチンびと』春号はただいま、好評発売中です。お早めに。

好評連載「花に聴く」は、椿がテーマ。
道念邦子さんは、こう書きます。
……   椿は1年中青々と繁り、滑らかな木肌と光沢をもった葉をそなえ、古木となってからでも春には花を咲かせ、散り際もお見事。いけばなの花材としても魅力的かつ重宝する代表と言える。……

ごはんを楽しむ家とは、春を楽しむ家のことかもしれない。

 


強い屋根の下の幸せ ー『チルチンびと』103 春号の発売間近。その予告篇 !

強い屋根の下の幸せ ー『チルチンびと』103 春号

 

『チルチンびと』103号は特集二本立て。特集「ごはんを楽しむ家」と、もう一つの特集は「スーパー台風に強い屋根」。異常気象つづきの昨今、住まいを、あなたを、強風や大雨から守ってくれる屋根を考える。そこにある「頑丈な金属屋根をつくり続けて55年」という記事をご紹介します。語るのは、元旦ビューティ工業・舩木元旦会長。

「創業当時、金属屋根はスレート屋根に圧されて、下手をすればあと5年でほぼ、壊滅という状況でした。でも私が開発した新しい横葺き屋根が世間に認められて、どうにか持ち直したんです」。1942年1月1日生まれ、だから、元旦。16歳の時に板金工の兄の下で修業を始めた。ここにその、一代記を読むことができる。


……


「チルチンびと』103  春号は、「特集・ごはんを楽しむ家」「特集・スーパー台風に強い屋根」。3月11日発売。お楽しみに!

 


台所道具作家の顔 ー『チルチンびと』103 春号の発売間近。その予告篇 !

10人の台所道具作家

 

この号の特集は「ごはんを楽しむ家 ー  孤食から家族食へ」。そこに「10人の台所道具作家」という記事がある。10人の作家が、それぞれの作品へよせる想いを書いている。こんなふうに。

たとえば、土鍋。それをつくった陶芸家・城 進さんの文章。

〈器をつくることは、誰かの生活とかかわること。  生活とは、積み重ねること。器を使い込むことは、新しい日々が生まれ、積み重なっていくこと。誰かの台所に食卓にいつもある器になってゆく。いつもの風景の中に。そんな思いをこめて。〉

………

『チルチンびと』103  春号は、特集「ごはんを楽しむ家」。特集「スーパー台風に強い屋根」。3月11日発売。お楽しみに!

 


キッチンが主役 ー『チルチンびと』103 春号の発売間近。その予告篇 !

キッチンが主役 ー『チルチンびと』103 春号

 

春   すみれ咲き   春を告げる という歌がある。春なにゆえ  人は汝を待つ  と続いている。さて、103号から「料理家の妻のためのキッチンが主役の家」をご紹介します。その記事の書き出しから。

〈…… 特注のL字型のキッチンに立つと、ダイニングはもちろんのこと、庭やリビングまでが見渡せる。ご主人は「当初から妻が料理教室を開くことを念頭に置いていたので、家の中でいちばんいい場所をキッチンにとお願いしました」と話す。栄養管理士の資格をもち、企業のメニュー開発なども手がける奥さんは「ここでお料理教室がひらけるのは、本当に嬉しいです」と微笑む。


………


『チルチンびと』103号は、「特集・ごはんを楽しむ家」「特集・スーパー台風に強い屋根」。3月11日発売。お楽しみに。