
漫画家というものが、どのくらい消しゴムを消耗するかというと、私の場合、だいたい一作品で一個、である。一学期間に二個買えば間に合った小学生時代に比べ、それは破格の量である。……(『書斎の宇宙』ちくま文庫 「消しゴムのよしあしは消しカスの量で決まる」柴門ふみ)
寺山修司、楠田枝里子といった方々も、消しゴム好きで知られている。建築家の大野正博さんも、そうであって、写真中央の消しゴムは、昨年、「クリスマスプレゼント」と言って、大野さんがくださった。その右はチェコ、左はロシアの消しゴムで、私はこれを、経堂のハルカゼ舎で買った。大野さんに、さしあげるつもりだ。そして、そのときに、家一軒をつくるのに、消しゴムが何個必要だったかを、聞いてみようと思っている。
2014/02/17 morimori, 雑貨
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鍵がない。
自転車の鍵がない。
車の鍵がない。
家の鍵がない!!
いつもの私の朝の玄関での一声。
それに見かねてか、旦那が玄関の角に小さな棚を作ってくれました。
金具はアンティークショップで購入、棚に白くペンキを塗ってもらい、今ではとても気に入っている場所です。
「鍵がない!」と言う回数も減りました。
2014/02/12 kurara, 雑貨
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昨年末に、馬喰町のアムコ カルチャー&ジャーニーさんで開催されていた、
アーブル美術館 大贋作展に行ってきた。
8歳と7歳の作家が世界の名画などを模写したものの展示だ。
映画ポスターは、ベティ―ブルー、BASQUIAT、ラン・ローラ・ランなど、
名作はフェルメール、ゴッホ、クリムト、ピカソなど、
音楽はシド・ヴィシャス、デヴィッド・ボウイ、ダスティ・スプリングフィールドなど、
そして布のバッグに描かれた麗子像。
とにかくどの作品も、色、構図、それぞれの表情と、模写する作品を選ぶセンスに圧巻。
あまり時間を掛けずに描くそうだ。
節分の頃に、来場のお礼ということで、ポストカードをいただいた。
こちらこそ、ありがとうございました。
2014/02/10 kuro, 未分類
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加賀野菜、能登野菜と一言で言ってもその種類の多さにびっくりします。
その中で、今回私がこうぼ用に選んだのはちょっと変わった能登産の黄人参と赤軸ほうれん草。おまけで個人的に好きなふきのとう。
できあがりは黄人参はサラダに、赤軸ほうれん草は汁物に、ふきのとうは焼き物に… 次はどの野菜にしてみようかなどいろいろ想像しながらこうぼ発酵中です。
オイシイモノ紀行でご紹介させていただいた「蜜菓子」の中加川さん、「チルチンびと広場」で掲載させていただいている「ピクルス」の金沢のピクルスさんなども石川県産のめずらしい野菜にチャレンジされています。是非一度ご覧ください。
市川ナヲさんのコラム「こうぼと暮らそう」ではこうぼの作り方などいろいろな使い方、レシピなどが掲載されています。
2014/02/08 vigo, 植物, 食べ物
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「和の手ざわり」の題材を考えていて昨年HINAYAさんのテキスタイルマルシェで目にしたkmihimonoiroのリーフレットのことを思い出し、「昇苑くみひも」さんに連絡をしてみた。取材をお引き受けくださった営業課長の能勢将平さんのお話は、記事に載せ切れないところも個人的に興味深いものだったので、こちらで番外編を。
人類が二足歩行となり衣類を着て狩りを始めるころから、紐はその汎用性、柔軟性を生かして人間の生活に密着した道具となっていった。そのことは世界のいたるところで遺跡や文献などからも発見されているというけれど、日本はとくに世界の中でも「組紐」の技術が圧倒的に発展した国だそうだ。一番盛んに使われたのは戦国時代に武具を装着する紐、これは確実に激しい消耗品で、職人の数も増え、技術が向上した。西洋の甲冑などと比べると断然、軽くて動きやすそう。一刻を争う戦場で、紐を結わくタイプの武具をささっと着けられるのは、指先が器用な日本人ならではという気もするし、日本人と紐は相性がいいみたいだ。実用面を支えただけではなく、兜や鎧に「揚巻(あげまき)結び」という飾り紐を着けて縁起をかついだという。

目の前でその形を結んで見せてくださった
一見、同じ形に見えるけれど、上は「人型」、下は「入型」といって真ん中の結び目の方向が逆になっている。通常の社寺宮廷の儀式などでは入型を使うのだが、戦場では敵や矢が入ってくることを除ける意味をこめて、それと逆の人型にする。ひとつの武具に実用の紐と、形式的な紐が備わって、もう神頼みというより紐頼みの戦というかんじだ。
ある結び方教室に参加したとき聞いたという話も、とても興味深かった。組紐と「結ぶ」という行為は密接な関係にあるけれど、これと音の近い言葉に「ムスヒ(産霊)」があり、この「ムス」は「苔生(む)す」などと同じく「産まれる」という意味を持つ。これは神道の考え方で、なにもないところから万物が産まれ、またその命が繋がっていくことをも意味するそうだ。冠婚葬祭や神事ではしめ縄、水引、リボンなどの「結び目」はいまでも普通に使われているし、紐を結ぶ行為に命を讃えるとか、祈りの気持ちがこめられているのは、なんとなくわかる。話を聞きながら、最近参加したダンスのワークショップで、二人一組で紐の端と端を持ってたるませないように動くというのがあって、相手の空気を捕まえるのに紐がとても役に立ったのを思い出した。「組紐とダンスって似ている気がする」などと唐突なことを口走ったのだけれど、能勢さんは「あ、それはあとで見ていただく作業場で、紐を組む機械の動きがまさにダンスをしているような動きというか。もっとそれを感じられるもしれません」とすんなりと受けてくださる。組紐みたいに柔軟な方なのだ。

出していただいたお茶のコースターも、さすが組紐
こちらの工房は大きく工場、作業場、教室の3箇所に分かれている。工場には編み方の異なる30種類以上もの製紐機がずらりと並んで圧巻。この機械も結構な歳月を経ていて、ローラーと歯車とハンドルで動く。油を含んで鈍く光る鉄の味わいがいい。言われた通り、ダンスフロアをクルクルと回転するみたいに動く。真ん中に紐が集まって美しい組紐が生み出される様子は、生き物のようにもみえてくる。この機械を作る会社も少なくなって、なかなか修理に出せないので自分たちでメンテナンスも行うのだそうだ。機械任せでハイ、終わりではない。

機械にかける糸の下準備。糸巻き作業中

こちらも糸の下準備。糸を縒る作業中

右へ左へ回転しながら組まれる色とりどりの紐
奥の小さな作業場では、小物を作る人、試作品を作る人、伝票管理をする人、集配の袋を提げて戻ってくる人、それぞれご担当作業の真っ最中で、朝一番忙しい時間帯にお邪魔してしまったのに、みなさん気持ちよく挨拶してくださり、作りかけの作品を見せてくださったりと温かい。
最後に教室にお邪魔した。昔ながらの手組み道具のカランコロンという木の軽やかな音がして、垂れた糸がカラフルで楽しそうに見えるけれど、設計図を見ると「???」読み解くのも簡単ではなさそう。

織機に似た高台。人が台の中央に座る

設計図・・・

可愛い丸型の台
この教室で技術を習得した地元近隣の住民の方々に「このデザインのものだったら○○さん」というようにその人の時間と技術に合わせてスケジュールを組んで仕事を分担し、材料の配布と出来上がった製品の回収に回る。「昇苑くみひも」さんの商売は、地域の方々の協力なしには成り立たないという。
春には組紐体験教室ができるように倉庫を改装準備中とのこと。ぜひ参加してみたいです。「昇苑くみひも」のみなさま、ありがとうございました!
「和の手ざわり」は、今月24日頃更新予定です。
2014/02/06 takeko, 工房
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愛知県 有限会社 高蔵の「大岡山の家」完成見学会にお邪魔してきました。
裏木曽の木材を使用しているという室内に入ると、さっそく木のよい香りが。
木の温もりが伝わるバリアフリーのフローリングと琉球畳の和室。
高蔵の田立さんのお話しを楽しく伺いながら、木組みの美しい構造、まあるい栓継ぎ、
真っ白い和紙の襖と漆喰の壁、強度のためにくるみ材を使用した水回りの床、
竹を施した扉、桜の木の大きなダイニングテーブル、1枚が分厚い木材の階段や、
気持ちのよい吹き抜けホールなどなど、たっぷりと体感することができました。

2014/02/02 kuro, イベント, 建築
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川口美術 さんに教わって昨年秋訪ねたみたてさんは、和花や山野草、花を生ける器を中心に扱われていて、四季折々の山野草の息吹を感じるお店。見たことはあっても名前を知らない枝や草花が、切り方、生け方、器、空間・・・などの“みたて”でぐっと存在感を増す面白さ。訪れるたびに新鮮な驚きと感動があります。

新春のしつらえも見事です
こちらで開催される展示や教室も、花にまつわる興味深いものばかり。 先月、「市川孝さんの花遊びの道具展」の期間中に、江戸期より代々日本古来の植物染めをされている染司よしおかの吉岡更紗さんを講師に迎えての「餅花つくり教室」に参加してきました。

市川孝さんの花器、とりどりの表情
お正月のこの季節デパートなどでつくりものの紅白の玉のついた枝はよく見かけるけれど、本来餅花は小正月に五穀豊穣を祈って飾るものだそう。食べられるほんとうの餅を使ったものは、今回初めて見た。というかいままで気づいたことがなかった。店主の西山隼人さんが用意してくださった紅葉、ねじき、山香ばし、木瓜(ボケ)などの中から好きな枝ぶりのものを選び、お餅を小さく丸めてつけていく。

この日は偶然にもチルチンびと広場にも登場いただいていた藤かご工房紡ぎさん、また京東都さんや万年青さんなど、ものづくりやお店をされている方ばかりが集まってみなさん手際がいい。わたしは一番シンプルな木瓜を選んだのに餅が乾いてくっつかなかったり、形がいびつだったり不ぞろいになったりと苦戦したけれど、途中お餅を食べたりしながらの作業は楽しかった。
仕上げに、紅白交互になるように餅に紅をひとつ置きに塗っていく。吉岡さんが持ってきてくださった本物の「紅」は、広大な紅花畑からわずかしかとれないとても貴重なもの。「染司よしおか」さんは、東大寺のお水取りで使われる椿の和紙を納められているそう。実物を見せていただいた。

「植物色図鑑」でも、植物の生む色がとても神秘的で、繊細で豊かであることを毎月教えていただいているけれど、じかに見るとまた一層深く心を捉える気高さがある。植物染料には漢方の役割もあって、たとえば紅は血行をよくしたり婦人病の予防にもなり、昔の上流階級の女性がよく貝殻に入った口紅を薬を塗るように薬指でとって塗るので別名「紅差し指」とも言われるそう・・・吉岡さんの植物と色にまつわるお話にはまだまだ引き出しがあるように思えて、またゆっくりお話を聞いてみたい。映画「紫」も気になる。
花のない季節に、餅を花にみたてて豊かな一年への祈りをこめる「餅花」。またひとつ日本のたいせつな習慣を教わりました。みたてさん、よしおかさん、ありがとうございました。
木瓜の枝には、先ごろ花が咲きました。

2014/01/27 takeko, イベント, 植物, 陶芸家
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