今年は 、雪がよく降る。雪を眺めているうちに、昔読んだ「雪の降らせ方」という、舞台での雪の話を思い出した。舞台幕まわりの品を扱う人を、小裂係といい、雪を降らせるのもその係の仕事だった。係は、次の月の芝居でどれくらい雪が必要かを調べて雪を仕込む。雪屋さんという商売のひとがいて、ホゴ紙を納めていた。そういう紙を三角形に切って降らせた。三角だとくるくる舞って雪の感じが出る。その紙をを舞台の上に吊るしたカゴにいれて、ひもを引っ張りカゴを開けて雪を降らせる仕組み。雪が降る降らないは季節ではなく、作家による。『伊井大老』の芝居ではよく降った。フィナーレで体が埋まるほどの大雪、32キロくらいの雪が降った。舞台は一幕すんだら次の幕。一面に降った雪を大急ぎで雪かきしなければならない。……こういう舞台裏の話を聞いていると、降る雪や明治は遠くなりにけり、という句が浮かんでくる。
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