2014年11月24 の記事一覧

安曇野もよいとこ

松本から穂高までは大糸線に乗って20分ほど。駅前の「ひつじ屋」さんで車を借りた。カフェとギャラリー併設で、レンタサイクルもできる。周辺のギャラリーやカフェとも提携した手作りクーポンをくれたり、ほのぼのムードのレンタカーやさん。ここでもらった、開催中の「安曇野スタイル」のパンフレットで、こんなにアートやクラフトが盛んな地域だと初めて知った。10周年になる今年は、121会場141組が参加というからすごい数。作家さんの工房が公開されたり、ギャラリーやカフェで関連イベントや特別メニューのサービスがあったり、安曇野のものづくり活動を散歩しながら見学できる。

小腹を満たそうと入った「Blé Noir」(こちらのガレット絶品です!)の併設ギャラリーで開催されていた玉野綾子さんのビーズ詩集絵展も、「バナナムーン」で出会った野村剛さんの粘土絵展も、独自の世界が広がって、ふらっと寄ったのにしばらく釘付けになった。IIDA・KAN、安曇野絵本館、禄山美術館などは、建物も展示もとても美しく充実していて面白かった。安曇野にはこんな小さな美術館が、まだまだたくさんあって、とても1日では足りない。

 

 

 

 

 

 

 

さて、今回の旅のいちばんの目的は、「シャロムヒュッテ」に泊まること。ここはセルフビルドの自然素材の建物で、自然農の野菜メインの美味しいごはんを味わい、スタッフと語らい、自然農塾や野外保育など農的暮らしを体験できるユニークな宿。着くと外は真っ暗だったが、中に入るとヨーロッパの山小屋みたいな暖かい雰囲気。ロビーには大きな薪ストーブと本棚があり、興味深い本がたくさん並んでいる。部屋に持ち帰って読んでもいい。部屋はちいさな洗面台があるのみ、トイレやお風呂はないけどぱりっと清潔で気持ちがいい。

夕食は食堂で皆でいただく。各テーブルから「美味しい」の声が聞こえてくる。夕食には動物性蛋白質がないと淋しがるタイプの夫が、これなら肉も魚もいらない。毎日野菜でいいという。こんなの作れるかー!と思いつつ、ソースのレシピを聞いてみた。本当に驚くほど油や調味料を使っていない。素材一本勝負。ここで採れた野菜と絶妙な火加減がこの感動的な味わいを生んでいる。再現はできないけど記憶に残る味。

 

 

 

 

 

 

この日は「安曇野スタイル」でコンサートをされた演奏家さんたちも泊まっていたので、夕食後にサプライズで小さな音楽会をしてくださった。秋の夜、山小屋で生演奏が聞ける幸運に恵まれた。

 

翌朝は見事な秋晴れ!

色づく山々を背に、草原と畑が広がって清々しい。空気が、比喩ではなく美味しい。朝のエコツアーに参加した。まだこちらに入って1~2年ほどというスタッフさんが、一緒に散歩しながら宿についてのあれこれを丁寧に解説してくれる。オーナーの思い、建物、野外保育、コンポストトイレについて。自然農について。実際に観察して触れて、どれだけここで実践されていることが理に適っていて心地よいことか体感できる。朝ご飯もここで採れた野菜をふんだんに使ったバイキング形式で、テラスで食べたり、めいめい自由に。

つくってくれた方は、京都から一か月住み込みで働きにきたという。同じ年だと判明してびっくり。もっと若そう。生き生きしていた。スタッフ皆さんここが大好きで、気持ちをこめて働いているのが隅々から伝わってきた。何度も訪ねたくなる、気持ち良い場所だった。

 

旅のしめくくりは、穂積神社の鳥居の横にあるその名も「とりい」さんでお蕎麦をいただいた。細くてキュッとしまって、香りが高くて、こんなの待ってました!という味。蕎麦のお菓子も手作りで、取り寄せたくなるほど美味しい。安曇野スタイル企画でひょうたんランプとお面が飾られた店内は、土壁と木のぬくもりがあって、小さなギャラリーみたいだった。若いご夫婦二人で頑張っている素敵なお店です。

 

帰りの電車中から、どこまでも続く豪華な錦の絨毯のような山肌を眺めながら、この紅葉を求めて山に登って命を落としてしまった方々のことを思った。ご冥福を心から、お祈りします。雄大で美しく静かに燃える山はいまは穏やかに見えるけれど、想像もつかないような怖さや厳しさを秘めている。自然を大事にしているひとほど、容赦なく命を奪われるかのようにも思える。それでも人は山に憧れて、山に癒される。京都に戻り、四方を囲む山々をみて、ああ帰ってきた。とやっぱり安心した。