2014年3月 の記事一覧

我が家の一員

昨年秋、手仕事雑貨屋風土さんで出会って、ひと目で気に入った釜定さんの鉄瓶。



随分前に読んだ平松洋子さんのエッセイに出てきて、以来憧れの品だった。鉄瓶を育てる間の忍耐と緊張感の日々、そしてやっと錆に打ち勝って白い湯垢(この白い皮膜が鉄瓶の内側に張ると、御湯がまろやかになって美味しくなる)に覆われた達成感が強く印象に残った。でも扱うのが大変そうだし、たまに目にするものは内側にさび止めが塗ってあったり、モダンにアレンジされていたり、あまりに玄人っぽかったりと、これというものに出会わなかった。それが、ある日理想的なのが現れた! と思ったらやっぱり釜定さんので目が離せなくなり、風土さんも「私たちもこれを使っていますよ。コーヒーもお茶もほんとに美味しいですよ」とおっしゃるし、「次に入ってくるのは来年の5月なんです」なんておっしゃるし、そういえば最近貧血気味だったから(前からだけど)鉄分が必要だし、一生物(ばっかりだけど)だし・・・結局、連れて帰ることになりました。

 

先のエッセイで刷り込まれたこともあり、ずぼらな自分とはおさらばして、ていねいに向き合おうと覚悟を決める。添えられていたお手入れ方法通りにお茶の葉を何度か煮立てる。こうするとお茶に含まれるタンニンが鉄と結びついて臭いや味を抑える効果があるそう。それから毎日湯を沸かし、お手入れ方法通りに育っているかとやっきになって鉄瓶の中を覗き込んでいたのだけれど、生来のずぼらは抑えきれずに、たまに空焚きもしたりしながら、がんがん毎日使っていたら、いつのまにかうっすら白い湯垢が張って、外側にも手垢で鈍い艶も出てきて、近頃はだいぶこなれてきた感じ。想像していたよりもずっと気楽につきあえる。早くお湯が沸かせるし、なんといってもまろやかだし、白湯も美味しくて、もう他の道具で湯を沸かす気になれないほど。眺めても眺めても飽きない美しいフォルム。鉄とは思えない柔らかな肌。なぜか気に入ったものから壊したり失くしたりして、何度も心に痛手を負っているので、なくならないよ。そばにいるよ。どっしり。というこの重みも嬉しい。

 

今年のお正月美術館「えき」で観た 「御釜師400年の仕事」(とても素晴らしい展示だった!)のギャラリートークで、16代目大西清右衛門さんが「みなさん釜を大事にしすぎです。さびたらすぐ怖がって仕舞ってそのまんまにしてしまう。多少錆びてもよく洗って拭き取って乾かして、よく使ってあげることがいいんです」とおっしゃっていた。

大切にするということは、触らないということではなく毎日愛情を持って接すること。怖がることないよ。人も道具も、おんなじだよ。そんなことも教えてくれる、我が家のたいせつな存在です。

 

お茶の時間がもっと楽しみになりました

 


保育ママからのプレゼント

保育ママからのプレゼント

息子の初バレンタインデー。
親戚以外に、保育室のママさんからチョコをいただきました。
「まだ、あげていないお菓子があるようでしたら、パパかママで食べてくださいね~」
と、一言添えられて、本当にやさしい保育ママさんでよかった。とありがたく頂きました。

 

袋には、『お友達にいつも優しい○○くん。(息子の名前)
きっと、将来たくさんチョコがもらえるね 保育ママより』
とありました。
将来、息子に本命チョコをくれる、素敵な女性は現れるのでしょうか。。。

 


きいちの「ぬり絵」

きいちの「ぬり絵」


「ぬり絵美術館」へ行ってきましたと、編集部の Y さんが、なん冊かの、ぬり絵の本を見せてくれた。美術館は、東京・町屋にある。昔、ぬり絵で遊んだという方は、「きいち」の名前をご記憶だろう。その画家、蔦谷喜一さんの作品が展示されている美術館である。私は、以前、蔦谷さんに、お話をうかがったことがある。そのときの、メモから。

…… コドモの世界のことばかりでなく、オトナの世界のものを、コドモの顔で描けばいいんです。コドモは、かえってそういうのを喜ぶんです。ファッションでも、顔だけがコドモで、スタイルがオトナというのが、喜ばれます。そこに、コドモの憧れとか夢があるんですね。コドモの顔にコドモの服じゃあダメ。着物は、いまのコには、なじみがないから、ウケません。藤娘なんか、いまはもう、なにがなんだかわからない。それにしても、夢みるような夢、というのが、なくなってきたんですねえ。……

あの、独特の線のうしろに隠されていた想いを、こんなふうに、語った。(つづく)