2014年3月1 の記事一覧

きいちの「ぬり絵」

きいちの「ぬり絵」


「ぬり絵美術館」へ行ってきましたと、編集部の Y さんが、なん冊かの、ぬり絵の本を見せてくれた。美術館は、東京・町屋にある。昔、ぬり絵で遊んだという方は、「きいち」の名前をご記憶だろう。その画家、蔦谷喜一さんの作品が展示されている美術館である。私は、以前、蔦谷さんに、お話をうかがったことがある。そのときの、メモから。

…… コドモの世界のことばかりでなく、オトナの世界のものを、コドモの顔で描けばいいんです。コドモは、かえってそういうのを喜ぶんです。ファッションでも、顔だけがコドモで、スタイルがオトナというのが、喜ばれます。そこに、コドモの憧れとか夢があるんですね。コドモの顔にコドモの服じゃあダメ。着物は、いまのコには、なじみがないから、ウケません。藤娘なんか、いまはもう、なにがなんだかわからない。それにしても、夢みるような夢、というのが、なくなってきたんですねえ。……

あの、独特の線のうしろに隠されていた想いを、こんなふうに、語った。(つづく)