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東京アート アンティーク 2017

東京アート アンティーク 2017

 

「数寄です、美術の街」というコピーがついた、この催し。4月14日、15日に、ひらかれている。東京日本橋、京橋界隈の古美術店、ギャラリーなど、約80店が参加する。

日本橋の壺中居から、歩きはじめる。表通りは変わったが、裏通りにはまだ懐かしい感じが残っている。姿を消してしまったのは、喫茶店だ。ひところは、「京は茶どころ」にひっかけて「京橋は茶どころ」といわれたものだった。紐を扱う店があり、そこには縄ばしごも売っていた。スダレをつくっている店もあった。みんな、とっくに姿を消した。

骨董を扱う店はしっかり残っている。そういえば、おいしいと評判の焼き鳥やさんも健在だ。焼き物は、長持ちするのだろう。
京橋生まれ、京橋育ちの北原照久さんが、このイベントの小冊子に、〈京橋はまさに歴史と未来の交差点〉と書いている。歴史とは日本橋で、未来とは銀座のことのように思われた。

 


ふたたび「花森安治の仕事」

花森安治の仕事

 

もういちど、見ておきたいと思って「花森安治の仕事」展へ行った。もういちど、と思ったのは、『「暮しの手帖」とわたし』(暮しの手帖社)という大橋鎭子さんの著書を読んだからだ。その本に、花森さんのこういう文章があったからだ。


……


   雑誌作りというのは、どんなに大量生産時代で、情報産業時代で、コンピューター時代であろうと、所詮は〈手作り〉である、それ以外に作りようがないということ、ぼくはそうおもっています。
   だから、編集者は、もっとも正しい意味で〈職人  アルチザン〉的な才能を要求される、そうもおもっています。〉


……


展覧会は、4月9日で終了です。

 


漱石、母校、春

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4月6日。お茶の水小学校の入学式。人気のうどん店「丸香」の行列がとぎれたあたりに、その小学校はある。
門の横の石碑に ……

吾輩は猫である
名前はまだ無い
    明治十一年    夏目漱石
   錦華に学ぶ

……の文字。

今年は、漱石の生誕150年、没後100年にあたる、という。漱石の通った錦華小学校は、のちに統合され、お茶の水小学校となった。その母校の入学式。今日、校庭の桜は、満開だった。

 


セツ・モードセミナー 閉校を見送る展覧会

セツ・モードセミナー  閉校を見送る展覧会

 

「セツ・モードセミナー  閉校を見送る展覧会」に行った。地下鉄を、四谷三丁目で降りて、6,7分のところにあるカフェギャラリー「ゑいじう」でひらかれている(4月23日まで)。お店の 1、2階に、卒業生100人の絵がかざられている。樹木希林さんの、セツ先生との想い出のハガキも、あった。

100人100点の絵をみていると、『大人の女が美しい』(長沢節著・草思社文庫)に書かれた、穂積和夫さんの解説の文章を、ふと思い出した。

〈セツ流の生き方を妥協することなく本当に徹底したのは、結局セツ一人だったのかもしれない。言うに易しく、行うに難しいモラリストならではのピューリタンの道だったのだと思う。それでも教え子たちそれぞれが、なんらかの形で生活や人生に影響を受けたことも事実だろう。〉

………


この “ チルチンびと広場 ”では、セツ卒業生の方々の「私のセツ物語」を連載中です。穂積和夫さんの「セツ物語」も、ごらんいただけます。コチラから、どうぞ。

 


生誕100年 長沢節 展

生誕100年 長沢節 展

生誕100年 長沢節 展

 

4月1日。小雨。寒い。本郷の弥生美術館へ行く。「生誕100年  長沢節展」である。(6月25日まで)。入口で、笑顔の先生が迎えてくれる。「センセイ、おひさしぶりです」。
そして、いくつもの画をたのしんだ。サンジョルジュ島の船着き場。モンテロッソ。こころの故郷  会津若松南町のりんご畑。大原。……
その帰り、となりのカフェ・港やへ。カプチーノにセツ先生のサインをあしらいました …… というコピーがついた、セツ・カプチーノ(500円)を飲む。セツ二階のコーヒーが、懐かしい。


………


この「チルチンびと広場」でも、セツで学んだみなさんが、“ 私のセツ物語”と題して、想い出をつづっています。コチラから、ごらんいただけます。入場無料 !

 


住宅デザインの目利きになろう !松本直子


住宅デザインの目利きになろう !松本直子

住宅デザインの目利きになろう !松本直子

 

「住宅デインの目利きになる」には、どうしたらいいか。
建築家・松本直子さんのレッスンが、わかりやすく、楽しい。(『チルチンびと』91号掲載)。たとえば、その記事に「目利きになるための十カ条」がある。
1  “リビング・ダイニング”  は切り離す
2  軒の下は特等席
3  キッチンづくりは、わがままに


………


そして、
10  惚れ惚れする天井に
まで、それぞれ、実例タップリに、教えてくれる。
このほか、
日本人が捨てきれなかった暮らしに美が宿る・松本直子 / 美しいリビングのための建具デザイン / 日本建築モダン化の系譜・三浦清史 / 吉田五十八「よい家」の極意 / 事例・伝統の日本美と西欧の暮らしが重なる家、17坪に散りばめられた和の愉しみ( 設計・松本直子)


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『チルチンびと』91号は、特集・金沢  ―  ひと・まち・住まい。特集・住宅デザインの目利きになる ― 建築家・松本直子さんに訊く美のポイント。好評発売中 !

 


『チルチンびと 』91号の表紙は、語る

『チルチンびと 』91号 金沢 ー このまちに生きる12人の女性たち

 

ここに『山鬼文庫』あり 」

 

もし、あなたが、この表紙に魅かれ、おや、金沢のどこだろう、と思われたら、『チルチンびと』91号の26ページを開いていただけますか。

「ここに『山鬼文庫』あり 」というタイトルで、ここで仕事をする中森あかねさんの文章がある。
山鬼文庫は、約2万5,000冊の蔵書をもつ私設図書館であり、現代美術の発信の場でもあること。その誕生のいきさつ。拠点の町家は築100年であること。その湿度と陰翳のある金沢町家との縁。春は雪に耐えた植物の手入れをするという、金沢人の日常、立ち居振る舞いについて。

……
そして、中森さんの文章の最後は、こう終わっている。

ふと見るとカワセミが浅野川に突進して鮮やかな青を見せています。庭の沈丁花も芳香を放ちはじめました。どうやら今年も無事に図書館をオープンできそうです。


……

『チルチンびと』91  春号  〈特集・金沢 − このまちに生きる12人の女性たち〉 。 〈特集・住宅デザインの目利きになる − 建築家・松本直子さんに訊く美のポイント〉  は、3月11日発売です。

 


「チルチンびと住宅建築賞」贈呈式

「チルチンびと住宅建築賞」贈呈式

 

3月9日。快晴だが、風がつめたい。
そんな日の午後、「チルチンびと住宅建築賞」贈呈式が、風土社で行われた。審査委員長・泉幸輔氏挨拶。受章者の表彰とその作品一つひとつへの、ていねいな批評。そして、懇親会。
ここからが、さらに盛り上がる。なにしろ、受章者は、九州、四国、関西、東海、関東 …… と各地から。その仕事の場も、経歴もさまざまだから、にぎやかなことになる。地域の資材について、自分の師について、工務店の中での役割について 。そして、作品についての、自分の考えをさらに語る人あり。それらについての質疑応答あり。
「いいシゲキをもらいました」と、受章者も、審査員も語る、楽しい会になった。


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第5回「チルチンびと住宅建築賞」の受章者、受賞作品、審査経過についての詳細は、『チルチンびと』 91  春号で、ごらんいただけます。

 


金沢文学散歩 2

金沢文学散歩


『チルチンびと』春号。〈特集・金沢 ーこのまちに生きる12人の女性たち〉にちなんで、ビブリオバトル・金沢篇 2


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S さん    ぼくは、モロ金沢。『金沢の不思議』(村松友視・中公文庫)。これは、すぐれた文学散歩だと思いますけど、ことに好きなのは、番外編・金沢の奥座敷。たとえば、「能登穴水湾にボラ待ち櫓在り」。これ、ボラ漁法なんですね。で、この穴水って、大相撲・遠藤の故郷ですよ。
〈ボラ待ち櫓の、生き物とも物体とも、現実とも虚構ともつかぬたたずまいに、心を奪われたのだった。ただ、その段階での私は、あれは何なのだろという疑問が頭にふくれ上がるばかりで、それが穴水を象徴するボラ待ち櫓であることすらも知らなかった。

U さん   私は、三島由紀夫『美しい星』(新潮文庫)。三島文学のなかの異色作と言われるこの作品。“ 金星人 ”  の舞台は金沢です。
〈北の国の空気の澄明、この陶器で名高い町の白い陶のようなひえびえとした清潔な頽廃、釉をかけた屋根瓦のおだやかな反映、すべてが古い城下町の、それ自体が時間の水底に沈殿したような姿にふさわしかった。彼はどうしても人間に接触することができなかった。〉
いいでしょう。また、こういう文章も。
〈金沢はまた星の町であった。四季を通じて空気は澄明で、ネオンに毒された香林坊の一角をのぞけば、町のどの軒先にも星はやさしい点滴のように光っていた。〉
  ー    しかし、まだまだ、挙げたい作品は数多く、金沢は文学の故郷ですね。
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『チルチンびと』春号は、3月11日発売です。お楽しみに。

 


金沢文学散歩 1

金沢文学散歩

 

『チルチンびと』春号。特集 〈金沢 ― このまちに生きる12人の女性たち〉にちなんで、ビブリオバトル ・ 金沢篇。


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C さん     この間のこのブログにも出てしまっているんですが『加賀金沢  故郷を辞す』(室生犀星・講談社文芸文庫)。このなかの「文学者と郷土」という章で、自分の文章についてふれているところが、おもしろくて。
〈つまり、私の文章の中にも、金沢にふるようなうそ寒い霙の音もすれば、春先になったこのごろの温い日の光も、麗かにさしているところもあるのでございます。つまり金沢の気候が東京にいても、私の机のまわりにいつもただよい、感じられているのであります。
そして、こうつづくのです。
〈もう一つ言えば私の文章の辿々しいところは、金沢の方言や訛がはいっていて文章の切れ味が甚だ悪いのであります。〉

B さん    私は、若者の鬱屈を描いた 、中野重治 『歌のわかれ』から(『村の家   おじさんの話    歌のわかれ』講談社文芸文庫)。初めのほうにある町の描写が好き。
〈金沢という町は片口安吉にとって一種不可思議な町だった。犀川と浅野川という二つの川がほとんど平行に流れていて、ふたつの川の両方の外側にそれぞれ丘があり、ふたつの川のあいだにもう一つの丘があり、街全体は、ふたつの川と三つの丘とにまたがってぼんやりと眠っている体であった。そうして、街の東西南北にたくさんのお寺がかたまっていて、町の名にも寺町とか古寺町とかいうのがあった。〉
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『チルチンびと』春号は、3月11日発売です。お楽しみに。