書籍

初秋のおすすめ その1

西淑さんのイラストレーションは、ちいさくても地域で環ってゆく丁寧な暮らしをつくり育ていきたいという「チルチンびと広場」が目指すイメージをとても豊かに育ててくださっている。言葉に命を吹き込んで、膨らませ羽ばたかせる魔法のような西さんの絵の世界が存分に味わえる本、『なくなりそうな世界のことば』をnowakiさんで見つけた。知らない国の言葉というだけでもときめくのに、こんなにたくさんの響き、可愛らしい、情感豊かで、ユニークな、逞しい人々の営みをたっぷり吸い込んだ言葉があるなんて!こんなに愛しいたくさんの音が消えてゆこうとしているなんて。だいじなものは刻々と失われていくのだ。そのかけらを少しずつ拾い集めたかけがえのない絵本。開いたとたん夢中になって、どきどき、わくわく、しんみり・・・秋にぴったりのロマン溢れる一冊。我が家の「寝るまえ文庫」に殿堂入りです。

1

 

nowakiさんでは現在「ペットショップにいくまえに」展を開催中。チルチンびとでも連載をしていただいていた絵本作家のどいかやさん、とりごえまりさん、URESICAさんがはじめられた活動に賛同して、毎年この季節に開催される。いろんな作家さんたちがそれぞれ独自の表現でいきものたちへの大きな愛が小さなキャンバスの上で炸裂している楽しみな企画。今年も一点一点じーっと見入ってしまう力作ぞろい!

2

こちらのHPからはどいかやさん制作の小さな絵本のようなフリーペーパーがダウンロードできます。犬や猫を新しく家族に迎えたいと思ったとき、お金で買うというのではなく飼い主のいない動物をもらい受ける、ということが当たり前の世の中になってほしい、という切実な思いが、丁寧に描かれた紙面から伝わってきます。売り上げの寄付先でもある、動物保護に尽力されている全国の団体リストもあるので、犬や猫を家族に迎えたいなあ、とお考え中の方がいらしたら、こちらのページをぜひ覗いていただきたいと思います。

 

※展覧会情報

●京都 nowaki ペットショップにいくまえに展 2017「solomon ring」 

9月15日(金)〜24日(日)11時~19時 期間中20日(水)のみ休み

参加作家:片桐水面・さとうゆうすけ・杉本さなえ・たんじあきこ・どいかや・はせがわはっち・樋口佳絵・牧野千穂・町田尚子・MARUU・ミロコマチコ

 

●東京 URESICA ペットショップにいくまえに展 2017

9月21日(木)~10月9日(月祝)12時~20時 火曜・水曜休み 

参加作家:片桐水面・さとうゆうすけ・杉本さなえ・たんじあきこ・どいかや・はせがわはっち・樋口佳絵・牧野千穂・町田尚子・MARUU・ミロコマチコ


続・ベニシアさんの表紙物語

『チルチンびと』の表紙

 

ベニシアさんが『チルチンびと』の表紙を飾ったのは、過去2回。2008年に続いて、2015年夏、「特集・夏涼しく、冬暖かい木の家」84号だった。「京都大原の山里に暮らし始めて」(文・梶山  正)に、こう書かれている。

〈20歳のベニシアが日本に初めて来たときの冒険談を続けよう。 1971年春、ベニシアは瞑想の先生プレム・ラワットからインドを出てイギリスに帰るように言われた。母ジュリーがイギリス行きの航空券を手配してくれていたが、彼女は母国へ帰るつもりはなかった。お金はなかったがプレム・ラワットの応援のことばを信じて歩み出そうと決めていた。
「必ず恵みの風が吹くでしょう」〉

風は、吹いた。


………
さて、ベニシアさん、『チルチンびと』3回目の表紙登場は、9月11日発売の93号。特集・花の咲く家。お楽しみに。


ベニシアさんの表紙物語

ベニシア

 

ベニシアさんが『チルチンびと』の表紙を飾ったのは、過去2回。その最初は、2008年秋、50号だった。「特集・草花の咲く家」の中に、「民家を繕いハーブを育む大原の暮らし」という記事がある。ベニシアさんの生き方が、描かれている。

〈気持ちがあれば、できる。それはどうやら庭づくりにも言えるようだ。ここに越して来て1年目。ベニシアさんは玄関前の日当たりがよく水はけのよい一角を耕し、地中海沿岸のハーブと草花の庭につくり変えた。〉
そして、最後は、ベニシアさんのこういう言葉で、終わる。
〈「庭は私にとって趣味じゃない。たぶん自分で選びとったライフスタイルなんだと思うな」〉

趣味じゃない。選びとったライフスタイル !


………
『チルチンびと』秋  93号は、特集・花の咲く家。9月11日発売です。表紙は、ベニシアさん。お楽しみに。

 

 


「こぐまちゃん」は、永遠です

こぐまちゃん

 

「こぐまちゃん」シリーズの作者・わかやまけんさんが亡くなった、という記事を新聞で見て、驚いた。享年85。

『しろくまちゃんのほっとけーき』の奥付けを見ると、1972年初版で、2017年6月に212刷、となっている。この本は、何人ものお母さんに、さしあげた。「おかげさまで、今夜、10回、くりかえし読まされましたよ」と、言われたことがある。「親子で、ホットケーキをつくりました」というメールをもらったりもした。

オトナもコドモも惹きつけるこの作者の素朴な味と香りは、ホットケーキに似ている。だれもが、飽きることなく、これからも、ページをめくることだろう。

 


続・『チルチンびと』夏号の特集は、「草編みびと」です!

続・『チルチンびと』夏号の特集は、「草編みびと」です
 
『チルチンびと』夏号の特集「草編みびと」にちなんで、「草の本」のビブリオバトル、または、読書会、つづき。
………
M君。これも、変化球といわれますかね。『冬虫夏草』(梨木香歩・新潮文庫)。鈴鹿の山中を “ 物書き”の男が、歩き、出会い、語る、人と自然の物語。不思議な味で、好きなんです。目次をひらくと、並んでいるのは植物の名前。クスノキ。オオアマナ。露草。彼岸花。紫草。アケボノソウ。タブノキ。マツムシソウ。ムラサキシキブ。…… ね、ここから、短編が展開する。
〈 ー 冬虫夏草とは、あれかい、冬場は虫として活動していたものが、夏になったら植物に変化するという。本当のことかい、あれは。〉
〈 ー あれはマツムシソウです。私の一番好きな花。西洋の天国の夢のようでしょう。それからあの雲。あの雲は、まるで大礼の烏帽子を被った神官のよう。〉とかね。一緒に、彷徨いましょうよ、山の中を。

Sさん。私は、ふんわりと、直球を。『雑草のくらし ー あき地の五年間 ー』(甲斐信枝・福音館)。このかたの日々。NHKスペシャルでごらんになりました? とても、よかった。さて、こう始まります。
〈春もなかばをすぎるころ、土手のほとりの畑あとに、うっすらと緑がひろがりはじめた。〉絵本に描かれるのは、広々とした畑。そこで働く人。ページをめくると、こうです。
〈土の中からわき出すように、緑はどんどんひろがっていく。季節がきたら芽を出そうと、待ちかまえていた草の種子たちが、ぞくぞくと芽を出しはじめたのだ。〉真夏のオオアレチノギク、秋のセイタカアワダチソウ…… 京都比叡山のふもとの畑あとに五年間通って観察したドラマです。
雑草の本ではじまって、雑草の本で終わるのも、この会らしいかな。
………

「チルチンびと』92号の特集は、2本立て。「草編みびと」と「つくる家と、買う家の違い」。6月9日(土)発売です。お楽しみに。
 

『チルチンびと』夏号の特集は、「草編みびと」です!

『チルチンびと』夏号の特集は、「草編みびと」です!

 

『チルチンびと』夏号の特集「草編みびと」にちなんで、「草の本」のビブリオバトル、または、読書会。
………
Uさん。私はオーソドックスに『柳宗民の雑草ノオト』(柳宗民  文、三品隆司 画・ちくま学芸文庫)。あとがきに、こうあります。〈雑草という言葉は、差別的ではあるが、半面、庶民的な親近感がある。題名を『雑草ノオト』としたのも、美人も不美人も差別なく、私たちの身近に普通に見られる草、と解釈していただきたいと思うからである。〉
そして、たとえば、夏の章のドクダミについて、書きます。〈わが国では、花は美しくともやたらにはびこって嫌われ者の雑草だが、西洋では、東洋のエキゾチックな花として庭に植えて鑑賞する。こんなものを植えたら、はびこって始末に悪くなるのではないかと余計な心配をしたくなる。〉   私はひところ、寝る前に「一草」ずつ、読んで知識を得ましたよ。

Sさん。私は、ちょっと変化球で『無限の網    草間彌生自伝』(草間彌生・新潮文庫)。「スミレの声を聞いて」という章に、こうあります。〈生家は格式高い旧家で、百年くらい前から広大な土地で種苗業及び採種場を営んでいた。〉
そして、こういう文章があります。〈幼い頃から、私は採種場へスケッチブックを持ってよく遊びにいった。そこにはスミレ畑が群をなしていて、私はその中でもの思いにふけって座っていた。すると突然、スミレの一つ一つがまるで人間のようにそれぞれの個性をした顔つきをして、私に話しかけてくるではないか。そしてそれがどんどん増殖していって、耳が痛くなるほどに語りかけてくる。〉   ひとの才能は、こういうふうに育ち、花開くということが、少しわかったような気がした。
………


『チルチンびと』92号の特集は「草編みびと」と「買う家と、つくる家の違い」の2本立て。6月9日(土)発売。お楽しみに。

 


子どもの本屋さん、復活

ブックハウス  カフェ

 

この春のこと。

ああ、ここもまた、と思った。神保町交差点から九段下方面に、歩いて4, 5分。児童書専門の店 ブック ハウス が、閉店していた。少子化、出版不況。しかたないのか。でも、このあたり、岩波ブックセンターも消えたし、淋しいじゃないですか。
それが、ブックハウス  カフェとして、この5月、ふたたび開店したという。行ってみた。店の前にはお祝いの花。店内の真ん中はカフェ。
『うさこちゃんとふがこちゃん』『こどものとも   おいしいおやつをくださいな』(ともに福音館書店刊)の2冊を購入して帰る。

たいへんでしょうが、がんばってください。

 


ふたたび「花森安治の仕事」

花森安治の仕事

 

もういちど、見ておきたいと思って「花森安治の仕事」展へ行った。もういちど、と思ったのは、『「暮しの手帖」とわたし』(暮しの手帖社)という大橋鎭子さんの著書を読んだからだ。その本に、花森さんのこういう文章があったからだ。


……


   雑誌作りというのは、どんなに大量生産時代で、情報産業時代で、コンピューター時代であろうと、所詮は〈手作り〉である、それ以外に作りようがないということ、ぼくはそうおもっています。
   だから、編集者は、もっとも正しい意味で〈職人  アルチザン〉的な才能を要求される、そうもおもっています。〉


……


展覧会は、4月9日で終了です。

 


住宅デザインの目利きになろう !松本直子


住宅デザインの目利きになろう !松本直子

住宅デザインの目利きになろう !松本直子

 

「住宅デインの目利きになる」には、どうしたらいいか。
建築家・松本直子さんのレッスンが、わかりやすく、楽しい。(『チルチンびと』91号掲載)。たとえば、その記事に「目利きになるための十カ条」がある。
1  “リビング・ダイニング”  は切り離す
2  軒の下は特等席
3  キッチンづくりは、わがままに


………


そして、
10  惚れ惚れする天井に
まで、それぞれ、実例タップリに、教えてくれる。
このほか、
日本人が捨てきれなかった暮らしに美が宿る・松本直子 / 美しいリビングのための建具デザイン / 日本建築モダン化の系譜・三浦清史 / 吉田五十八「よい家」の極意 / 事例・伝統の日本美と西欧の暮らしが重なる家、17坪に散りばめられた和の愉しみ( 設計・松本直子)


………


『チルチンびと』91号は、特集・金沢  ―  ひと・まち・住まい。特集・住宅デザインの目利きになる ― 建築家・松本直子さんに訊く美のポイント。好評発売中 !

 


『チルチンびと 』91号の表紙は、語る

『チルチンびと 』91号 金沢 ー このまちに生きる12人の女性たち

 

ここに『山鬼文庫』あり 」

 

もし、あなたが、この表紙に魅かれ、おや、金沢のどこだろう、と思われたら、『チルチンびと』91号の26ページを開いていただけますか。

「ここに『山鬼文庫』あり 」というタイトルで、ここで仕事をする中森あかねさんの文章がある。
山鬼文庫は、約2万5,000冊の蔵書をもつ私設図書館であり、現代美術の発信の場でもあること。その誕生のいきさつ。拠点の町家は築100年であること。その湿度と陰翳のある金沢町家との縁。春は雪に耐えた植物の手入れをするという、金沢人の日常、立ち居振る舞いについて。

……
そして、中森さんの文章の最後は、こう終わっている。

ふと見るとカワセミが浅野川に突進して鮮やかな青を見せています。庭の沈丁花も芳香を放ちはじめました。どうやら今年も無事に図書館をオープンできそうです。


……

『チルチンびと』91  春号  〈特集・金沢 − このまちに生きる12人の女性たち〉 。 〈特集・住宅デザインの目利きになる − 建築家・松本直子さんに訊く美のポイント〉  は、3月11日発売です。