出張

東海道中記 その1(多治見~名古屋~岐阜~関 編)

高蔵の田立社長とは昨年「小梅の家」の見学会でお話しして、その面白キャラにすっかりハマってしまい(ちょっと文章では伝えきれないので、いつか動画でご紹介を・・・)訪ねる機会をうかがってきた。さらに7月発売予定の『チルチンびと 別冊東海版』も控え、白木建設 さんからもお誘いいただき、先日は伊賀の京野桂さんとの出会いもあり、今がチャンスと東海方面へ。今回も社長に運転手をお願いする我々!一日お休みをとっていただくことになり大変図々しいことではあるのですが、この予定をあけるためにかえって仕事が捗ったり(ご本人談です)、たまには違う観点から家づくりや暮らしの情報に触れられて発見があったり(ご本人談です?)と、いいこともあるさと言ってくださる。我々も普段見られない素顔が見られたり、地元のいろいろなことを教えていただいて、とってもありがたいのです。今後とも、全国の地域主義工務店の皆様、どうぞよろしくお願いいたします(礼)

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まずは田立社長の従弟の方が3代目を務める、創業明治30年の老舗窯元「成宝園」へ。こちらではなんと一週間で3千個の徳利を作られているというから驚いていたら、とくに多くはない、とのこと。お酒の銘柄を描いたものが多く、酒屋さんに卸すのだそう。vigoと私、絵付けならぬ字付けをさせてもらった。鉄を溶かした釉薬はもったりとして慣れるまで結構難しい。オリジナルで名前やイラストを入れられるので、お祝いや引き出物などにもよく使われるそう。好きな文字を頼めば、4合徳利、2000円(送料別)で作ってくれます。ご興味あるかた、ぜひお電話してみてくださいね!

絵付け中

右から高蔵 田立社長、成宝園 三代目成瀬寛さんと久恵さん

『チルチンびと』の徳利、つくっていただきました!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こちらから車ですぐの「ギャルリももぐさ」は残念ながら休廊日。新緑の木立の中の外観だけ楽しんで、mekuriさんにご挨拶。同じ敷地内にある「カトリエム」を見学し、なぜ多治見にきてパスタなんじゃー。と言われつつ「hosizumipasta」で新鮮な野菜と山菜、魚介のパスタでランチ。美味。「市之倉さかづき美術館」内にある「ギャラリー宙」では、現在展示中のすずきあきこさんの絵本のような器が新鮮だった。 多治見を離れ名古屋に向かう。家具なども制作されている古道具さん「綯交」、昭和初期の建物が上手に生かされている着物と器のお店「月日荘」(2階にあるAnarogue lifeさんは残念ながらこの日お休み)、独特の本揃え「on Leading」、お隣のギャラリー「TAiGA」、こちらと同オーナー兼作家さんの、タルトとキッシュの店「metsa」、フランス人シェフの本格的パン&焼き菓子のお店「Le Plaisir du pain」・・・など市内をぐるり。
途中、お茶のときはココ! と田立さんおすすめの覚王山の「ザラメ」に立ち寄ったけれどドーナツは大人気で売り切れ。お向かいの「えいこく屋」のカレーにも心惹かれましたが、結局定番「コメダ」でちょっと休憩。名古屋の人は餡子がどれだけ好きかみたいな話を聞く。夜は手羽先!「風来坊」へ連れて行ってもらいました。意外とさっぱりしていていくつでもいける!ビールが進みます。

手羽先3人前!追加もしました♪

翌朝、岐阜へは名古屋から電車で20分。あまりの近さに乗り過ごしてしまった。戻ってみると駅も駅前ロータリーもかなり広い。天気がいいので金の銅像がトロフィーみたいにキラキラとしているが、かなり遠くに見えて詳細がわからないぐらい広い。(あとで白木社長に伺って信長像と判明)

ツバメヤさんもある「柳ケ瀬商店街」では、お昼をいただいた「ミツバチ食堂」、古いビルに様々なお店がひしめき合う「やながせ倉庫」、「アラスカ文具店」などこちらの商店街のメンバーを中心に“ハロー!やながせ”というプロジェクトが立ち上がっている。現在は4月30日まで「本とまち」をテーマにイベントが開催中。すぐそばの美殿町にも「まちでつくるビル」まちでつくるビルと銘打ったクリエイターが集まるビルがあり、まちづくり熱がじわじわと広がっているようです。駅の方に戻って、nutaさんとpandさんにご挨拶。どちらも静かで、ゆったりして、凛として、清潔。長く使えるいいものがきちんとそろっているとても感じのいいお店でした。

お店の歴史やおススメがよくわかるリトルプレス『柳ケ瀬BOOK』

岐阜駅から二つめ、朝乗り過ごした穂積という駅まで迎えに来ていただいて、白木建設さんにお邪魔する。広い材木置き場の一角には、子どもたちがワークショップでつくっている小屋がある。土間と柱、茅葺屋根まではできていて、これから竹木舞をつくり、土壁を塗る。小学生でもこんな風に土間からつくる本格的な家づくりが体験できるなんて、楽しそう!

白木建設さんから車ですぐのピネル工房は、こぢんまりとした小屋の中に本格的な機械が並び、椅子やテーブルなど大物から、スプーンなどの小物まで作られているそう。「うちに材木たくさんあるから、よかったら遊びに来てください」という白木社長の言葉に満面の笑みが広がるピネル工房の福田さん。池田山麓クラフト展 (4月20日に終了)や、フェアトレードデイ垂井(5月26日開催)など、年々大きくなってきているという地元イベントを教えて頂きました。

ナマステポーズのピネル工房福田さんと白木社長

その後、電気屋さんのご主人のお店の片隅で好きなものを集めて並べて16年、いつしかほとんどが雑貨屋さんスペースになってしまったという老舗雑貨店「ユーカリ」、オーナーが山梨で二号店を開かれるそうで、よく『チルチンびと』を参考にしていただいたというパン屋さん 「PAYSAN」を最後に、関名物鰻屋さんに連れて行っていただく。関の名産といえば刃物だけれど、鰻もかなり有名なのだそうで、美しい川に挟まれた土地ならではという感じ。大の鰻好き白木社長の一押し「みよし亭」、二押し「孫六」に振られ、もう一軒お薦めの「角丸」へ。皮がカリッカリで少し濃いめの味付け。一気に旅の疲れが吹き飛ぶ美味しさでした!

がっついて写真撮り忘れ。お店にあったフリーペーパーより

 

昨夜、田立社長の車にパソコン置き忘れたvigo・・・わざわざ犬山駅まで持ってきていただいたのでPAYSANで購入したお土産を渡すと「なんじゃ、餡パンくれるの?」と嬉しそう。「普通の餡パンやないわ。天然酵母!」と普段ジェントルマンな雰囲気の白木さんがつっこむ・・・そんな素敵なお二人に、最後の最後まで大変お世話になりました。 田立社長、白木社長、ありがとうございました!

 

(四日市~伊賀~名古屋編に続く)


九州に行ってきました 長崎編

長崎は今日も雨だった。と歌の題名にもなるだけあって、やっぱり雨だった。街には赤い提灯がぶらさがっていて、これはちょうど今週末から始まるランタンフェスティバルというお祭りのためのものらしい。路面電車とバスとタクシーが次から次へと行き交い、遠くには海が見え、古い建物が建ち並ぶ港町の風情。町の中心地には大きな商店街が縦横に延び賑わっている。

そんな長崎の中心商店街、ベルナード観光通りの一角にある「カメラのフォーカス」さんを訪ねた。HPからしてちょっと他とは違ったこだわりを感じていたフォーカスさん、最初に目にとびこんできた看板も、置いてあるアルバムや見本写真も、普通の写真屋さんとはちょっと違うこだわりを感じる。昔はごく普通のいわゆる富士フィルムのお店だった、という代表の原口さんが、デジタルが主流になってきてもう店をたたもうとしていたところ、10年来のお客さんだったカリオカさんが「それは困る!」と一念発起、絵を描いたり、キャラクターをつくったり、ワークショップや写真展を企画するように。毎月発行している「写真便り」や長崎ネコをマスコットにした「まちねこ」を目当てにやってくるお客さんなどがだんだん増えてきて、この日も月曜だというのに次から次へとお客さんが来ていた。失われつつあるフィルムの良さを再確認させてくれる、いろんなアイデアとオリジナリティに溢れた、元気な写真やさんでした。 

左から代表原口さん、スタッフ前田さん、カリオカさん

 

次に訪ねたのが出島にある「たてまつる」さん。店名の由来は奉行所跡だからだそう。店に並ぶ手ぬぐいについて尋ねると、それまで物静かだった店主の高浪高彰さんの口から長崎の歴史や、風俗文化、人物、名物などいろんな話が飛び出す。そんな長崎うんちくがオリジナル手ぬぐい「たてま手ぬ」に染め込まれている。高波さんは今農業をされているそうで、農作業には旧暦が合うんです、といって店に置いてあるまなてぃさんという方がつくった旧暦手ぬぐいを見せてくれた。日付の上に「ブロッコリーの天ぷらを堪能する。」「にらの花が咲いたら葉と共に刈払う。」とか書いてあって面白い。長崎散策の前に、まずはこちらに立ち寄って色々と聞いてから出かけると、もっと長崎の町が楽しめること請け合いです。 

高浪さん。奉行所らしく、店内にも門がある

 

お昼は、フォーカスさんに教えてもらったharupizzaさんでランチ。薄くてパリパリした生地に、里芋、ゴボウ、ゴマ、長ネギ、ゴマ、トマト、キノコなどいろんな野菜が乗っている。ソースも、トマト、味噌、トウガラシベースと、何枚食べても飽きない味。あっさりだけど満足度の高い、新食感のピザでした。

前菜も美味しい。野菜がたっぷりいただけます

 

harupizzaさんに教わった、近くの山王神社まで行ってみる。ここには、原爆によって片方が吹き飛ばされ、一本柱となった鳥居がある。 

その奥には爆風にやられて一度は枯れたものの、命を吹き返し青々と茂った、堂々たる大クスノキがある。幹に残された大手術の痕のような傷を見ていると、人間の犯した行為の愚かしさをつきつけられ向こうからじいっと見つめられているような、底知れない怖さとすさまじさを感じる。

 

出島に戻り「List:」さんへ。List:さんが主宰するナガサキリンネのお話しなど伺う。店主の松井さんは、福岡のキナリさんでも日田リベルテさんでもその名を聞き「List:さんなら間違いない」みたいなしっかり者ウーマンのイメージだったけれど、会ってみるとゆったりして、にっこりして、気さくな人。でも、たくさんの作り手さんと一緒にイベント運営や雑誌作りを自然体でこなしてしまう頼もしさもきちんと持った、素敵な方でした。

松井さんもお店もゆったりした雰囲気

 

広場からも吉田健宗さんやカリオモンズコーヒーロースター さん、アンペキャブルさん、ティア長崎銅座店さんなどが参加予定の「ナガサキリンネ」は、3月26日(火)〜 31日(日)(クラフト&フードマーケットは30、31日の週末2日間)長崎県美術館にて開催されます。

 帰りがけ、木の看板が気になって入ってみたカフェ「ユラク」さんは三角型のビルの間取りと、それにそってつくられた木のテーブルが面白い。オープンして半年ぐらいだそう。窓の外には路面電車と出島資料館が見え、長崎らしさを満喫できます。ひと休みして空港へ。

 

3泊4日と今回も駆け足だったけど、ひとつひとつが心に残る、いい出会いに恵まれた旅でした。皆様、ありがとうございました!


九州に行ってきました 大分・日田 小鹿田焼~宮園神社編

 

翌日は、小鹿田(おんた)焼の窯元見学と、会の屋号でもある日田の杉「ヤブクグリ」のルーツを辿りに宮園神社へ行くツアー。「寒いけど、日田の山へ行ってみよう!」というスローガンのはずが、晴れ男女の集まりだったのか、晴れ渡って春のようなぽかぽか陽気に恵まれた。大勢いたので車を出せる人がみんなだしてくれ、それぞれに出発。

私とvigoは、日田の意匠職人町谷さんの車に、ライターの小坂章子さんと早稲田の建築学科の小笠原正樹さんと乗り込む。小坂さんはヤブクグリでは冊子係担当で、『手の間』という九州の暮らしや手仕事などを紹介している素敵な雑誌に寄稿されたりしている。小笠原さんは、北海道で牧草の発酵熱を利用した暖房要らずの家の設計をしたり、藻からできる石油で家のエネルギーを賄うといった、未来に向けた設計を研究しているすごい学生さんだ。

町谷さんは運転しながらツアーガイドのように日田のあれこれを説明してくれた。日田の山間部は降水量がとても多く、霧深く湿度の高い気候のせいで杉の生育に適していて、江戸時代から続く杉の産地だそう。あちらこちらで昨年夏の水害の傷跡が痛々しい。頑丈そうな橋も壊れていて水害の恐ろしさを知る。3000戸近くもの家が浸水被害にあったという。復旧作業もさぞかし大変だったに違いない。今さらだけれど、被害に遭われた方々に本当に心よりお見舞い申し上げます。

 

小鹿田焼の里「皿山」に到着し、車を降りると「ギーーーゴトン・・ギーーーゴトン・・」とあたりに響く音がする。この音の正体は「唐臼」。川の水流の力を利用して、大きな杵を動かし、土を粉砕している。川のせせらぎと唐臼の動き、水郷日田の風景に心洗われ、延々と眺めていられそうだ。

 

 

小鹿田焼の窯元は全部で10軒。開窯以来一子相伝で、伝統的な技法を脈々と守り続けている。柳宗悦やバーナード・リーチによって注目を集め、広く知られるようになっても、一切弟子を取らず、職人を雇用せず、機械も使わずに家族だけでつくってきた。作り手の名も出さず、窯元の名も出さず、陶土も一年に一度共同で掘り出すそうです。掘り出した土を唐臼で粉砕し、水にさらしてゴミなどを取り除き、窯の上で乾かす。土をつくるだけでも大変な手間と労力だ。蹴ろくろを回しながら、鉋や刷毛で模様を付ける。素朴だけど凝っている。なのに値段も驚くほど手頃。暮らしのための器なのだ。

 

 

小鹿田を後にし、車で約1時間ちょっとの中津江村にある「宮園神社」へ。参道や掲題の周囲にはアオスギ15本、アヤスギ9本、ホンスギ5本、ヤブクグリスギ1本の計30本があるそう。奥には樹齢350年のアオ杉の切り株があった。迫力。日田杉の元祖ともいわれているみたいだ。

帰りは日田リベルテさんまで送ってもらった。去年nowakiさんで展示中だった陶芸家・鈴木稔さんが、ちょうどワークショップをされている最中だった。上映する作品だけでなくカフェや展示やワークショップ、雑貨や本、隅々までセンスが光っていて、さすが日田の文化発信地的存在。自然と人が集まってくるような、やさしくていい気が流れていました。

 

日田リベルテ代表の原さんと、スタッフの原田さん

 

長崎へ向かうため、日田とはそろそろお別れ。昨夜知り合った「和くら」の古田さんが高速のバス停まで送ってくれるという。出発まで1時間、その間に、夜の幻想的な三隈川べりを散歩し、老舗材木屋だったというお店を案内してもらい、「日田名物の焼きそば、食べたいでしょ」といってシャーッと近所の「みくま飯店」さんに連れて行ってくれ、焼きそばを頼んでくれて「20分後に迎えにくるからね!」といってシャーッといってしまった。。日田名物の焼きそばは、ふつうのより麺がぱりぱりと固めでちょっと甘辛で、もやしがシャキシャキ。日曜深夜の長崎の街を、ちゃんぽんを求めてさまよう覚悟だったのに、こんなに美味しい地元名物を味わえるとは!

 食べ終わるとまたシャーッと迎えに来てくれ、時間通りに高速バスの停留所にジャストの時間に到着。ほんとにお世話になりました。 

スーパー段取り上手&色白美人の古田さん

 

日田の旅はみなさんにずっと親切にされっぱなし、お世話になりっぱなし。ちょっと、空き物件探しちゃおうかな・・・っていうぐらいの気分になりました。ヤブクグリのみなさま、日田で出会ったみなさま、ありがとうございました!

 

長崎編へ続く


九州に行ってきました 大分・日田 ヤブクグリ編

そもそも今回九州にやってきたのは、昨年秋に広場のイラストでおなじみ西淑さんの紹介で訪ねた、京都の nowakiさんが京都宣伝係を務める「ヤブクグリ」について教えてもらったのが始まり。『雲のうえ』や『飛騨』など地域密着型のフリーペーパーの編集人でもある画家の牧野伊三夫さんが、日田市観光協会の黒木さん、日田リベルテの原さんらと共に、林業再生で町を元気にしようと発足したこの会は、地元の新聞社さんや市長さんをも巻き込んで活動の輪が広がりつつあるという。

東京に戻り牧野さんにお電話してみると「今ちょうど日田からあんまり出ない日田リベルテの原さんが来てるから、一緒に飲みますか?」といきなりのお誘いだ。そんなレアな機会を逃してはとvigoと一緒に会いに行った。牧野さんは「飛騨」と「日田」の共通点に面白さを感じ「飛騨日田てぬぐい」を制作したり、見ようみまねで昔ながらのいかだづくりに挑戦して筑後川で川下りをしたり、またそれが話題になるという素早い行動力と求心力がある人なのだが、アグレッシブな雰囲気がまったくない。落語家みたいな味のある喋り方のせいか、熊さんみたいな風貌のせいか。いつのまにか皆がその茫洋とした牧野節に巻き込まれていってしまうのだ。

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というわけで日田へ来た。博多から日田へは「 ゆふいんの森」という特急でいくつもりだったのが、全席予約制でどの便も満席と大人気。急遽バスに変更。次回はこれに乗ってみたい。

お昼は寶屋本店で「ヤブクグリ」考案「きこりめし弁当」をいただく。杉の間伐材を再利用した曲げわっぱを開くと、ごはんの上には丸太に見立てたゴボウがゴロリ。添えられたミニノコギリで切って食べます。

お弁当タイムが終わると、午後は江崎次夫・愛媛大名誉教授による「クラゲが山にやってくる」という講演会。江崎先生は大量発生している越前クラゲを乾燥させクラゲチップをつくり、その保水力と栄養分で山林を元気にできないか。という研究をされている方。価格と効果が見合ったらすごく画期的だと思う。

続いて田島山業の代表・田島信太郎さんのお話。「林業は今、たべていけない。まずはそこを認識しないと」という言葉がのっけからつき刺さる。林業にはとにかく手がかかる。そして気候にも左右されるし、外材との戦いには世界経済も大きく影響するし、同じ杉といっても種類や産地によって全然違うのでその性質をよく知りぬいていないと商品化もできないし、真面目にやろうとすればするほど採算がとれない。生産者の努力だけではどうにもならないことも多く、消費する側や政治の意識改革も急務。これは特別意識の高い少数派、みたいな人ばかりが背負う問題ではなくて、山を守る→生態系を守る→自分や子供の命を守るという意味で誰もが無視できない問題。『チルチンびと』も創刊から十数年そういったメッセージを出し続けている雑誌だけれども、田島社長ももう二十数年「断固森林を守る。いい木を育て、子供たちに伝える」ということを続けている人で、林業の現場からの正直な言葉が心に残った。

 

しばらくフリータイムがあるのでどうしようと思っていたら、福岡のデザイナー梶原さんが「豆田を案内しますよ」と話しかけてくれたので、またもや遠慮なくお言葉に甘えた。日田豆田は天領として栄えた町で江戸時代からの商家や土蔵が多く、街並みも電柱を地下に埋めてあったりと、伝統が色濃く残る重伝建地区となっている。もうすぐ始まるお雛祭りや、秋に花月川(筑後川支流)で行われる千年あかりなどでは大勢の人が訪れる、美しい町です。

途中寄った日田の産業振興センターではトライウッドさん制作の、間伐材でつくった薄い木皿を発見。なんと5枚入り210円。可愛くて、ピクニックやキャンプにもってこいです。あまり巷で見かけないけれど、これは欲しい人多いかも。

 

懇親会では、もみじにまず驚き、つづいて納豆入りの高菜巻き、鮎のうるか、日田焼きそばにちゃんぽんなど郷土料理三昧。また、奇しくもこの日、誕生日を迎えた黒木会長のお祝いに日田民謡と踊りが披露されるなど日田ムード一色。ここでは、この後大変お世話になる「すてーき茶寮 和くら」の古田さん、松浦市のPRが頭に残りすぎて「松浦さん」とインプットされた島本さん、別府のキャンプ場に勤める「桐ちゃん」こと豊島さん、「PERMANENT」を制作している定松さんご夫妻、地元誌をはじめいろいろな分野で活躍されているフリーライターの小坂章子さん、東京からいらしていた建築家の長谷川敬さん、などなど話せば話すほど魅力的な人達とも出会い、その後天領日田洋酒博物館へハシゴして、和気藹々と日田の夜が更けていきました。

 

大分・小鹿田焼編に続く


九州に行ってきました 福岡・八女編

 

縁あってこの週末は九州へ行くことになり、今回は福岡・八女からのスタート。ほとんどお茶の産地としてしか知らなかったこの地に、少し前から「うなぎの寝床」さんという気になる存在が現れた。連絡してみると、突然だったにもかかわらず「僕が迎えにいきましょう、八女を案内しますよ」とのこと。そんなありがたいお言葉に甘えて、八女の町巡りが実現しました。

 

空港から高速バスに乗ること約50分・・・のはずが、渋滞でもないのに予定時間を過ぎている???「ここ八女ですか」「あ、違うよ、ここは瀬高よ!」と同乗の地元の方が教えてくれたから助かったものの、あわや熊本か!というアクシデントで迷惑をかけつつ、店に到着。ガラガラと戸を開けると、広い土間と大きな火鉢がまず目に飛び込み、花火や独楽、お茶や器や久留米絣など筑後の手仕事が、それは美しく並んでいて、まず視覚から惹き付けられる。それもそのはず、企画・デザインの白水高広さんと店主の春口丞悟さんは、大学では建築を学び、その後「ちくご元気計画」という、地域資源をより魅力的に磨くプロジェクトに関わっていた。商品をよりよく見せる、魅せる、プロなのである。「ところでその商品はどこで買えるのか」と地元の人に聞かれ、たしかに買える場所が限られている、それなら自分たちで店を開こうと二人が思い立った矢先に、八女福島の町家に空きが出たのがお店の始まり。物事がトントン進むときにつきものの、この行動力とタイミング。八女愛に溢れ、作り手の心も、買い手の気持ちもよくわかっている二人だからこそ、こんな素敵な空間が生まれたのだと納得です。

 

 

八女福島の伝建地区はもともと自分たちで地域を守る意識がとても高く、ここ数年は市民がお金を出し合って町屋を改装し、外から作家さんを迎え入れるなど、守る+αで新しい風を呼び入れて街を活性化させることにも積極的だそう。それはだんだん実を結びつつあるようだ。2時間ほどの滞在時間の中で、絵本屋さんで読み聞かせをしてもらったり、町家づくりの素敵なカフェや、まちづくりを引っ張っている酒屋の高橋さんを紹介してもらったり・・・どの店もゆっくり過ごしてみたい場所ばかり。皆和やか、にこやか、楽しそうで、い~い雰囲気です。駆け足だったのがとても残念。初めて来ても気軽にいろいろ尋ねてみたら、きっと皆さん喜んで案内してくれそうです。ほんとうに、素敵なところでした。

 

 

夕方、もうすぐ終了するPATINAさんの展示に駆け込みセーフ。Jane Muirの作品は、素朴かつ上品で、暖かみがあるのに洗練されていて、お店の雰囲気にもぴったり。vigoは、キノコをまとめて欲しそうでした。展示が終わったあとも、PATINAさんでお取扱いがあるとのこと。その後、望雲さんやキナリさんを訪ねたり、福岡県版コラムを書いてくれているお二人とご飯を食べたり。あっという間に時間が過ぎていきました。

JANE MUIR EXHIBITION「funny objects」 @PATINA

 

八女のみなさま、福岡のみなさま、ありがとうございました!

大分・日田編へつづく


山形に行ってきました

 

週末、昨年から気になっていた最上伝承野菜農家 森の家さん主宰のイベント「芋祭」の芋煮会に参加しました。開催地は、山形県の中でも秋田寄り、新庄市から送迎バスが迎えに来てくれて真室川というところ。きっと涼しいだろうな~という期待は見事に破れ、まだまだ猛暑真っ最中。汗だくになること間違いナシ!と覚悟していただいてみた。しかし真っ白で柔らかくほっこりとした上品な里芋とネギと大きくて風味豊かなタケを醤油ベースの芋煮は、なんともあっさり、思わずおかわりをしたくなるほど美味しかった。イベント会場は畑の中。芋煮や農家のお母さんたちの野菜たっぷりの美味しい料理や、芋掘りワークショップをしている人たち、地元の農家さんやお店によるマルシェへの人だかりで想像以上に賑わっていた。主催者として忙しそうに飛び回られている森の家20代目の佐藤春樹さんをつかまえてお話をうかがったところ、ご自分の畑でつくられている甚五右エ門芋さわのはな以外にも、周囲の伝承野菜農家さんのことも知ってほしくて、パンフレットを作ったり、今年3回目となるこのようなイベントを開催しているとのこと。先祖代々伝わる野菜を一人でも多くの人に食べてほしい、という熱い想いから生まれていたのですね。今度は車で来て、ぜひ芋掘りをしてみたい。

 

ちなみに、山形に着いてから、出会う人出会う人「芋煮会ね!先週いってきましたよー」「芋煮会!楽しそうですね、うちも明日家族でやりますよ」「この時期になるとスーパーで芋煮のために鍋を貸してくれるんですよ」と口を揃えるほど、この季節山形では芋煮会はポピュラーなお祭り。毎年9月の頭に行われる有名な馬見ケ崎川の芋煮会では、直径6メートルの大鍋で3万食分の芋煮が振る舞われ、使われるサトイモはなんと3トンだそう。今年はさぞかし暑かったでしょうね・・・。

 

山形といえば、鋳物でも有名。前泊した山形市内の長文堂さんで見せていただいた鋳物の姿は、鉄瓶といえば南部鉄器と思い込んでいた私にはとても新鮮だった。山形鋳物の特徴は「薄肉美麗」だそうだが、その言葉通りの繊細な美しさ。蓋のつまみのデザインがひとつひとつ違っていたり、注ぎ口の滑らかさ、色にしてもアンティークのような風合いに柔らかさ、優しさと上品さがある。数えきれないほどの作業工程と長い日数をかけて行う伝統工芸士の技を求めて、海外から直接こちらに買いにくることもあるそうだ。

 

また、市内を歩き回っていると、古い洋館を使用した病院や、蔵をリノベーションしたカフェ、ギャラリーや美容室など、古い建物を活用している様子も多く見られた。その一つ、蔵オビハチさんで出会ったスタッフの方が「芋煮会」のルーツを教えてくれたり店名の由来を説明してくれたり、やけに土地のことに詳しい。この人は一体何者なのか?と思っているとお店に来ていた男性を紹介してくださった。この方は東北芸術工科大学教員の廣瀬氏、風土研究と生態学、近自然工法の応用(土地の植物を計画対象地に移したり、土地の石を積んだり敷いたりすることを基本に、人間の居場所をつくる)というご自分の専門分野を生かし、震災前から早戸温泉遊歩道を手がけられたり、浪江の風景を絵葉書に残されたり、震災後も石巻市雄勝町支援活動や、 エネルギーシフトと三陸の生業復興試案など、さまざまな復旧復興支援活動を行っている方だった。ちょうど本日から今年の早戸温泉遊歩道施工実習を開始されたそうだ。 前出のお店のスタッフさんは廣瀬氏のゼミの1期生、三浦さん。どうりで地域の歴史に詳しいわけだった。

その他にも鹿児島で訪ねたしょうぶ学園さんなどをモデルに活動されている桜舎さんなど、自分たちの足だけではとても見つけられない情報を教えてくださった山形まなび館・穀雨カフェの飯塚さん、その飯塚さんをご紹介くださった東北芸術工科大学研究支援室 山形エコハウスの亀岡さん、森の家さんのHPも手がけられ、地元に関わるさまざまなデザインを手がけられているアカオニデザインさん・・・地域を愛する方々のつながりに支えられて、今回もいい出会いに恵まれました。どうもありがとうございました!

 


アトリエの夏

週末、画家・橋本憲治さんを訪ねて栃木へ。

 

各方面で“山道を越えて辿り着く家”に免疫のついた私でも「え、ここ!?」と不安になるぐらい、山道を奥へ奥へいく。ずーっといく。つきあたりまでいくと、壁際に薪が高く積まれた、大谷石の土台のある家が現れた。元は陶芸家の方の住まいだっただけあって、今は残念ながら、震災でめちゃめちゃに崩れてしまっているが、大きな登り窯もある。

 

電話の口調通りの穏やかな雰囲気の橋本さんが迎えてくれて、1階のアトリエを通り過ぎ、2階のリビングへ通される。高い天井にファンが回る。ゆるゆるとたゆたう夏の空気に包まれてどんどん気持ちがくつろぐ。奥さまが淹れてくれた美味しい珈琲と自家製オレンジピール入りのケーキや、懐かしい感じの炭酸水、瑞々しいお漬物などなどを勧められるがままいただいたりしているうちに、気分はすっかり夏休みの親戚宅・・・ふと、仕事ということを思い出し(おいおい)、アトリエに案内されて、橋本さんの作る青色世界に囲まれると、またリラックス・・・うっかり仕事モードを忘れるムードが満載のアトリエなのだ。

 

帰り道、アトリエから下ってすぐのところにある那珂川(関東随一の清流だそう!)で、鮎を眺めたり、川に入ってみたり、橋本さんに教えてもらった「山法師」というお寿司屋さんで予約のお客さんが入る前に美味しい寿司をつまんだり。帰りの高速では、あちらこちらで花火も上がっていた。いい夏の締めくくりだった。

 

画家・橋本憲治さんの魅力に迫る次回connect栃木は、9月12日頃にアップ予定です。どうぞお楽しみに。

 

 


九州出張 最終日 鹿児島編

最終日は鹿児島。また雨だ。鹿児島は両親の故郷なので祖母がまだ生きていたころはよく訪れた。晴れた空に横たわる桜島を見たかったのだが、残念。雨の中、最初に訪れたのはトロイメロイさん。静かな山深い住宅地の中の広々とした一軒家に、所狭しと家具屋小物がたくさん詰まっている。食器棚などはほとんどSOLDOUTが貼ってある。素敵なお店でした。

 

次に訪ねたのはしょうぶ学園さん。広々とした敷地の中に、パン屋、お蕎麦屋、ギャラリーなど、木造りやユニークなペイントがされた洒落た創りの建物などが建ち並ぶ。きちんとアポとりもしていなかった我々に学園長の福森さん自らいろいろなお話をしてくださった。

 ここはアートありきの施設ではなくて障がいを持つ人々が無理せず、それぞれの個性に合った仕事を見つけて自分の力を存分に発揮することができる場所であること。嫌なことや我慢することが根本的に理解できていないのに無理強いするのはすっかりやめてしまったこと。皆ただ一心不乱でものづくりに集中していていること。結果出来上がったものが、驚くほど凄いものができたりするのだが、造っている本人は対価や評価を求めておらず、作品への興味もないこと。そのピュアな精神はものづくりの原点で、感動させられるし本当にカッコイイなと思う。と。また布、木、紙など、どの素材がどの人に向いているかの見極めや、つくり始めと止め時がわからない人もいる、そんなときには手助けが必要なこともあり、スタッフがそのサポートをしていること・・・

 

その後実際にギャラリーを見て、たまげた。ちょっと鳥肌がたった。想像も限界も軽く越えていくような感じの、凄い作品ばかりだった。どれだけ天才的な感性なのだ!いただいたライブイベント映像のDVDを戻ってから見てみたが、こちらも素晴らしくてプリミティブなエネルギーが画面を通してもガンガン伝わってくるような熱いライブ、ノリに乗っている指揮者をよくよく見やれば、なんと学園長!多彩なお方だったのだ。こちらからも少しご覧いただけます。

 

しょうぶ学園 nui projectの展示

 

昼ごろwhite galleryさんへ。少し晴れてきたが、桜島には雲がかかっていた。晴れていたらさぞかし素晴らしい眺めだろう。高台で、美術鑑賞しながらご飯もいただける、絶好のランチスポットです。館長の三坂さんから、次は何処にいくの?と聞かれ、RHYTHM -リズム-さんにおじゃますることを伝えると、「ちょうど3月17日からここで展示をするんだよ。よろしく伝えてね」と。先ほど訪ねた福森さんともよく御存じの仲らしい。繋がっている。RHYTHMさんではPandAの早川さんともお会いできたり、知り合いのお店や作家さんを数々ご紹介いただき、また、かなり読み応えのある小冊子under’s highという冊子をいただいたりして、鹿児島のものづくりびとたちのネットワークの強さ、熱さを垣間見た気がした。

 

今回は作家さんの多かった長崎や佐賀へも行けず、訪ねた県にしてもあまりに移動距離が長くて効率的に周れたとはいえず、次回への課題は残してしまったけれど、また何度でも足を運びたくなるような魅力に満ち満ちた九州縦断でした。突然の訪問を温かく迎えてくださった皆様、ありがとうございました!タイルびと、運転おつかれさまでした。またよろしくお願いします!

 

 


九州出張 3日目 熊本編

3日目。レンタカー乗り換えのため福岡空港へ向かう。前日の雪が嘘のような晴天。九州北部への高速道路はほぼ通行止めだったが我々にはさほど影響なく、すいすいと熊本方面へ進む。大牟田市を周る途中、三池炭鉱跡に行ってみた。飄々とそびえたつ赤レンガの煙突からは、高度成長期を支えたという堂々たる存在感を感じると同時に、救急車、負傷車…と書かれた人車を見ていると犠牲になった多数の死者や中毒患者、閉山後も何十年にもわたり後遺症に苦しんだり寄る辺を失った人々の怨念のようなものも感じて、昨今の原発事故とも相まって複雑な気持ちだった。人間は権力に抗えない生き物、そして同じ過ちを何度でも何度でも繰り返す生き物なのだと突きつけられているようだ。知ろうとする気持ちと忘れないという意志を持ち続けていないと、簡単に自分本来の思いとは違う所へ連れて行かれてしまう。人も物事もいい面だけでも悪い面だけでもなくて、置かれた立場でも善悪変わったりもするけれど、黙っていたら偏って知らされることばかりが多い世の中で、自分は無知だと知る前に何かを選択するのはとても危険だ。実際に足を運んだり体験談をきいたり、本を読んだり映画を見たりと、同じ出来事をいろんな角度から見て初めて、知らなかったことに気づくこともある。

 

お昼は山鹿市のいつものごはんji-uさんで頂いた。塩麹をつかった蓮根ハンバーグや呉汁、キンカンと生姜シロップのデザートなど地元の材料を存分に使った優しい味に癒される。山鹿も素晴らしく風情のある街で、少し散策してみると造り酒屋さんや麹屋さんが軒を連ねている。こうじ専門店木屋本店さんの前を通ると、勝手に見学してもいいというので入らせていただいた。米粒の中にある汚れを箸で取り除く作業をしている人がいたり、麹を入れた箱が積み重なっていたり、昔のテレビや人形がならんだりと博物館のようだ。ここで念願の塩麹を買ったり美味しい甘酒をいただいたりしてとまたまた道草を食ってしまったので、急いで熊本市内へ向かう。

 

観光ばかりしているようで恐縮なのだが、熊本城の石垣は熊本出身のモザイク職人荒木さんにお薦めされたマストポイント。噂の石垣は、それはそれは見事で、確かに忍者ぐらいしか登れないだろう。カラスも停まろうとして滑り落ちていた。延々と連なる石垣を眺めていると、モザイクの道に進んだ荒木さんの原風景を見た気がした。島田美術館さんやミドリネコ舎さんなど市内数軒のお店を巡った後、金子典生工房の金子さんに会いにいく。

 

金子さんとは前からお会いしたいと思っていた。その温かい人柄は常々みじかいメールの文章や電話口の一言で伺われていて、一度お会いしてみたかったのだ。想像通りの方で、いきなり私は「タケチャンマン」という懐かしくも恥ずかしい小学生以来のあだ名で呼ばれた。新鮮なヒラメ、タイ、オコゼ、タコ・・・とびきり新鮮ないけす料理や馬刺し、辛子蓮根など食べたかった郷土料理が全部ここに・・・そして美味しいお酒とお茶目な金子節で笑いに笑って楽しい夜を堪能しました。忙しい時間の合間に、心づくしのおもてなし、本当にありがとうございました!!

 

あまりに楽しすぎてノリで帰り道に熊本ラーメンを食べてしまった。きくらげとねぎがたっぷり、コクがあるのに後味すっきりでペロリと入った。酔って満腹中枢がおかしくなっていたせいではないと思う。過酷なドライバー業務に疲労困憊気味だったタイルびともすっかり回復して「なんていいとこなんだ!熊本大好き!俺は熊本に住む!」と言い出す始末でした。

 

(最終日 鹿児島編に続く)


九州出張 2日目 大分~久留米編

 

2日目は大分からスタート。wakako ceramicsさんを訪ねて杵築市へ。予備知識がまるでなかったので着いてみてびっくり、とても情緒ある坂の城下町だった。「綾部味噌店」の前に車を停め、聞けばこちらは昔お酢屋さんだったそうで、石畳の坂道から、武家屋敷の風景を一望できる「酢屋の坂」というのがすぐそこにありますよと教えてくれた。「私のぬりかべ散歩」の小林澄夫さんにも帰ったら聞いてみようと特徴ある土壁を写真にとったりしながら、杵築城まで散策した。その後大分市に入り、商店街を歩いているとぶんごという一子相伝の小鹿田(おんた)焼を中心に扱う民芸店を発見。囲炉裏を囲んでコーヒーも飲めます。大分県も結構いろいろなお店やギャラリー、作家さん、いらっしゃるけれど場所がばらついていて、大体来る人もビルの2階以上にはあんまり行かないそうなのだ。もっと素敵なお店がこのあたりにも増えるように、大分もがんばらんとねーと、とあるギャラリーの女主人が言っていました。

 

大分市を後にし、朝からほとんど何も食べていないことに気づいて栄養補給に温泉卵を食べるか!と別府の道の駅に立ち寄ると、大きなスピーカーから「ONLY You~~♪」と繰り返しエルビスの甘い歌声が。すかさずタイルびとが「そういうことか!」とウレシそうな顔をしている。別府は町中からもうもうと煙が出て、硫黄の香りがして、まさしくONLY湯~。温泉天国?地獄?の景色が広がっていた・・・

 

日のあるうちに未来工房さんのある久留米市へ到着のはずがもう夕方。しかし途中うきは市には訪ねたかった四月の魚さんとぶどうのたねさんがある。ご主人の田中さんは突然の雨でびしょ濡れの私たちに、手染めのタオルを貸してくれ、反物の並べてある美しい部屋に招き入れてくれた。元は呉服屋さんからはじまったというお店の由来などお話を伺っているうちに、ご主人の独特のゆったりした器の大きさに、このままお酒でも酌み交わしたいような気分になってきたが、先を急ぐ。未来工房さんにたどり着いたのはそんなこんなで夜の7時。すっかり真っ暗になってしまった。待ちぼうけさせてしまったが金原社長、馬場さん、武下さんのお三方が待っていてくださり、モデルルームをたっぷりと紹介してくださった。古材を使った天井のあるカントリー風キッチンや、屋根裏とはしごで繋がる子供部屋、隠れ家のような和室など、これが同じ1軒の中にあると思えないくらい、いたるところに遊び心のある「やかまし村の家」。未来工房さん、本当に待ちくたびれさせてしまって申し訳ありませんでした。ありがとうございました。

 

次の日レンタカーを福岡空港で乗り換えるため、久留米ラーメンをかっこんでまた福岡市に戻る。雨はみるみる雪に変わり、市内につくと牡丹雪が降っていた。九州でこんな雪に遭うとは驚きだ。あまりに寒いので中州まで出歩く勇気もなかった。丸一日、ゆで卵と久留米ラーメンだけで終日運転をしてくれたタイルびと、あたりまえだがヘトヘトのご様子。仕事よりもハードだった模様。本当にお疲れ様でした!!!

 

(九州訪問 3日目熊本編へつづく)