2017年11月8 の記事一覧

『がきデカ』の孤独

『大阪弁の犬』(山上たつひこ著・フリースタイル刊)

 

発売になったばかりの『大阪弁の犬』(山上たつひこ著・フリースタイル刊)を読んだ。ご存じ、『がきデカ』などのヒットをとばした漫画家の自伝である。どのページにも、哀感が漂っているように思われた。おいしいものを食べても、旨い酒を飲んでも、人と交わっても、作品がヒットしても、どこか、哀しい。
「大月猫日の記」という最後の章に、自宅から仕事場まで、珍奇な自転車で通った話がある。前車輪が大きく、後車輪は小さい。“  ダルマ自転車 ”  のレプリカ。それを漕いで、深夜往く。その場面は、こう終わっている。
昼間に乗れば好奇の目を集める乗り物は真夜中にはいっそう珍奇であったろう。見る人はいなかった。ぼく一人が観客で、ぼく一人が演技者だった。〉
もしかしたら、これは、漫画家の孤独を語っているのかも知れない。セツナイ話だった。