2015年3月27 の記事一覧

ミツバチの日のお話会

 

3月8日(ミツバチの日)にAu Bon Miel さんで開催された、京都大学名誉教授で生態学研究者の清水勇先生によるミツバチのダンス言語についてのお話会に行ってきました。

 

「こんな用途に使いたい」という具体的なのから「なんとなく美味しいの」という漠然としたリクエストまで、ご店主の大久保さんは、いつも気分や季節や体調にぴたりとあった、とても美味しい蜂蜜をすすめてくださるので信頼度大。養蜂家でもあり、ミツバチにも大変詳しくて、いろいろと興味深い情報を教えてもらえる。初めてお店にうかがった日に「ミツバチを飼ってみませんか?」と言われたときはびっくりしたけれど、お店でアマチュア養蜂家の方々にも出会い、そんな方が増えつつあることも知り、飼うには至っていない私もだいぶミツバチとの距離が以前よりも近く感じられるようになった。そんな大久保さんも、最初からミツバチに詳しかったわけではなく、京都大学で働いていた時に清水先生に出会って、ミツバチの生態を愛情こめて情熱的に語られるのを聞いているうちに、どんどん知りたくなっていったのだそう。ミツバチのことを知りたいと思う気持ちはなぜか伝染するらしい。

 

ハチとヒトの関係はかなり古く、なんと紀元前6千年ごろのスペインの洞窟壁画に人間がミツバチの巣を取っているらしい図が残っている。紀元前1450年ごろには、ミツバチの巣を飼育、彩蜜している壁画がエジプトの王墓で見つかっている。清水先生の著書『日本養蜂史探訪』には、明治の初めにウィーン万国博覧会のために編纂された『教草』第24「蜂蜜一覧」にある江戸期の養蜂技術が紹介されている。このころから日本でも、今と同じく人々が蜂を研究し、知恵を駆使して貴重な蜂蜜を集めてきたことがわかる。そして、いまやアメリカでは農作物の送粉者の80%がミツバチであり、一年間の経済価値1600億ドルと言われるのだとか。

ミツバチは社会性昆虫と言われていて、郡単位で動く。この群がひとつの生命体になっていて、この中の一匹の女王蜂に産卵能力が集中する。女王蜂が産む卵は一日1000~2000個。群を維持するため雄雌の産み分けができるのだ。女王蜂以外の雌蜂はすべて産卵の機能を失って働き蜂になり、巣づくりや掃除や子育て、花粉と蜜集め、新しい蜜源探しや、女王交代期の新しい巣探し(分蜂)にと忙しく働いて、約1か月の一生を終える。ちなみに雄蜂は交尾のためだけに存在し、受精が終わると死んでしまうそうです・・・。この、新しい蜜源や巣となる場所をみつけた偵察役が、仲間たちにそのありかを知らせるために行うのが「ミツバチのダンス」。

動画を見ていると、巣の表面で数匹のミツバチが八の字にくるくると回転し、八の字が交差するところでお尻をフリフリッと動かすのがわかる。オーストリアの動物行動学者、カール・リッター・フォン・フリッシュという人が、このミツバチのダンスを観察し何度も何度も繰り返し蜜源との距離を測る実験を行って、どうやらこのダンスを行う角度が太陽の位置と関係し、また15秒間にどれだけ回転するかで、蜜源や巣の方向と距離を仲間に知らせているのではないか、ということを発見した。1973年にはノーベル生理学・医学賞も受賞している。さまざまな未解決の謎を残しつつ、この法則は現在でも通用している。「このダンスを、長いときはずーっと3時間もやっているのがいますけれど、よっぽど疲れるでしょうけど、まあ人間だって中には変わり者もいますからね」と先生のお茶目な見解も挟みながら、複雑なミツバチのダンスについてわかりやすく解説してくださった。

 

質問コーナーでは「分蜂するときの兆候はありますか?」という、さすが養蜂家さんならではの問いが出たり、それに対し、まさにそのことを研究中の学生さんから「音によって感知できるのではと言われています」と現在進行形の研究課題に話が及び一同「おおおー」と感動。その後もあちこちで蜂談義が止まりません。お話しながら、たっぷり蜜のつまった巣蜜をいただきました。濃厚なのにしつこくなくて、自然の豊かさを味わえる。唸ってしまう美味しさ!

こうやってバクバク食べていると、あれだけミツバチたちが苦労して作った巣、集めた蜜を横取りしているようで悪いけれど、やっぱり美味しい。栄養抜群、ときには薬にもなる蜂蜜。今後もずっとお世話になると思います。そうでなくても受粉を担うミツバチから受ける恩恵ははかりしれない。ミツバチたちが安心して蜜を集められる環境をつくれるのは人間しかいないということを、心に留めていたいと思う。