2014年12月4 の記事一覧

食べた!出会った!感動した! ― 舞鶴・綾部の旅 ―

 

ご近所のオーガニック八百屋スコップ・アンド・ホーさん主催の、週末1泊2日舞鶴&綾部ツアーに行ってきました。小雨模様の中、大人9名子供5名、車3台で出発! まずは東舞鶴で自然農をしながら、ご夫婦で古民家タイ料理店&ギャラリーを営む FonDin(フォンディン)さんへ。途中、大雨になったり凸凹道があったりと、なかなかハードなドライブも昼が近付くにつれて雨も上がり、海も見え、テンションが上がる。

FonDinさんのお料理は、しっかりとスパイスが効いた紛うことなきタイ料理だけれど、自作の野菜を使ったペーストを使っているので後味爽やか。鳥やキウイを使ったサラダ、バジルやタマリンドのソースでいただく鯛と蒸し野菜も、見た目も美しく、香り豊かで優しい味わい。元は奥様の曾祖父様のお宅だったという、ゆったりしたお座敷で味わえるのも嬉しい。

お次は『チルチンびと65号』の障子特集でもご登場いただいた、ハタノワタルさんの工房&ギャラリーへ。ハタノさんは紙漉きのみならず絵も描き、書も画き、空間も創る多彩な人。工房にもいろんな道具や工夫がありました。



奥の小さな階段の上には、和紙の温かみや風合いを存分に味わえる美しい小部屋が。しばらく瞑想にでも耽りたいような気分になる。

奥様のユキさんがハタノさんの和紙で作ったカバンも、可愛くて軽くて使いやすそう。意外と水にも強くて丈夫で、修理もしてくださるので、かなり長く使えるそうです。

その後、サンチャカフェで、フランク菜ッパさん、若狭でお米を作っているニコ百姓さん、ご近所の陶芸家ハトヱビスさんらと合流。畑を望む、眺めのいい場所でしばし団らんする。

京都市左京区でオーガニック八百屋を開く菜ッパさんは、週の半分は福井県小浜市に住んで農業をしながら、若狭周辺の小さな農家さんを回って米や野菜を仕入れたり、農業や八百屋をやりたいという人があれば応援したり、あっという間に人や野菜を繋げるオープンでピースフルなお人柄。80年代に住んでいたカリフォルニアで知ったパーマカルチャーの影響を受け、野菜にも「ニラ・バーナ」「フレディ・マーキュウリ」「キャロット・キング」・・・とロックなネーミングをしてしまう。私にも「取材で面白い人に会うやろ、そしたら『チルチンびと』ならぬ『知る珍びと』や。スピンアウト版、つくったらええやん」とさっそく面白い提案をくださった。原発銀座といわれる福井で小さな農を支え、広げ、次世代へと繋げていくため、反原発や反核運動にも積極的。頭も体も高速回転の熱い人である。会話は尽きないが日も暮れてきたので、菜ッパさんが案内してくれた「あやべ温泉」でひとっ風呂浴びて、今宵の宿「ぼっかって」さんへ。

 

ぼっかってさんは綾部の志賀郷で自然農をしながら、ご夫婦で小さな宿をひらき、手作りのおやつをつくったり、手仕事をしている。お隣には「あじき堂」さんという蕎麦の職人さんご一家が住んでいて、この夜のメニューは出張お蕎麦コース。もりそば→あげ蕎麦→おろし蕎麦→そばがきぜんざいと蕎麦づくしだ。やはり同じ志賀郷に住む水田さん夫妻、こめがまという屋号で久谷焼仕込みの器を作っている稲葉さん夫妻が美味しいお惣菜を持って合流してくださり、にぎやかな晩餐となった。しゃべる、食べる、しゃべる、食べる・・・。

ところであじき堂さんの長男、楓人君という人がすごくて、小学校1年生から現在の6年生にいたるまで、一貫してほとんど毎日のように妖怪をテーマに漫画を描き続けている。その妖怪たちのネーミングセンスには、フランク菜ッパさんも舌を巻き、食卓の話題のほとんどを彼がさらっていったといってもいい。小説も書いていて、書きたいことが溢れてしょうがないのだそうで、天才とはこういう人のことなのかと思う。

朝もはやくからご飯を作る音といい匂い。少し散歩に出てみる。このあたり朝は霧がちで10時頃にやっと晴れてくるのだそう。朝靄の田園風景も幻想的だった。

飯は、おくどさんでふっくらと炊かれた五分づき米、モミジの飾られた綺麗なおかずのプレートをこたつにはいりながらいただいた。

さらにご近所のオーグロリア農園さんからオーガニック葡萄の差し入れが届いたりと、朝から豪華で大所帯のお正月みたいになっていた。

朝ご飯の後「こめがま」さんの豆皿を見せてもらう。「福」をテーマにした絵柄はどれも愛らしく、裏にまで細かい模様が施してあって、ひとつ選ぶのにえらく迷ってしまう。少しずつ集めたくなる。

そんなこんなで、もう出発の時間。名残惜しやとお別れをして、コニチャン農園さんへ。

小西さんとピレネー犬ボンちゃんがお出迎え

神戸から移住してきた小西さんご夫妻は、サラリーマン時代「里山ねっと・あやべ」の米作り塾に参加したのをきっかけに、周りの人との出会いに恵まれて、あれよあれよと本格的に農業をやることに。有機栽培のお米や様々な種類の野菜を作られている。ハウスには立派な黒豆が育っていたけれど、商品化できるのはこのうち6割程度だそう。その残りで作ったという黒豆味噌を買って帰ったら絶品で、お味噌汁に煮物にカレーの隠し味にと、何に入れても甘みとコクが増す万能選手です。

お次は、庭師の霜鳥氏と画家のトリコネさん夫妻のお宅へ。数日前に京都市内で会って、週末綾部に行くのだと言うと「近いから寄ってください」と誘ってくれたのを真に受けて、本当にゾロゾロとお邪魔してしまった。移住して1年、まだ家づくり進行中という若きトリさん夫婦は、自然のこと庭のこと、会うたびに教わることばかりの素晴らしいセンスの持ち主。住まい方にもそれが表れていて、これからどんなふうに進化していくのか楽しみです。


親戚の家に来たようにくつろぎ始めた矢先、おうどんを茹で始めちゃってます!という緊急コールを受け、一路竹松うどん店さんへ。「せせりうどん」「こんぶの天ぷら」をいただいた。腰のある美味しい麺と、香り豊かな薄味のお出汁。ご店主は香川でうどん修行を3年、その後日本一周うどん武者修行を2年したのち、こちらを構えたそう。土壁も自分たちで塗ったという、手作りの店。

うどんを食べ終わったころ、あじき堂さん一家が立ち寄ってくれた。マラソン大会を終えたばかりの楓人君、半ズボンである。元気。この後、私が宿に忘れたポーチを稲葉さんご一家が届けてくれたりして、こういう感じがまた大家族的でいいなあと感動してしまったのだけれど、実際はみなさん忙しいのだ…ご迷惑おかけしました。

食べてばっかりなので、腹ごなしにお散歩した。今回の旅が実現したきっかけでもあるヤマケイさんに教えてもらった、とっておきの牧歌的スポットへ。子供たちは、どこでもよく遊ぶ。



旅の締めくくりは、京丹波のビオスイーツ店菓歩菓歩さんでお茶をした。こちらのご店主石橋さんは、スコップ・アンド・ホーのご店主、井崎さんの幼馴染だそう。それがいまでは同志という、うらやましいような関係。二人とも懐が深くて面白くて、類は友を呼ぶ。少し雨が降って来たけれど、由良川のほとり長閑な風景が広がる気持ちのよいテラス席で、美味しいケーキとカフェラテをいただいた。

 

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美味しいものばかり食べ、素敵な人ばかりに出会い、美しい風景や手仕事を見て、いつのまにか親戚みたいに感じてしまうほど素晴らしい旅メンバーにも恵まれ、ずっとこの時間が続いてほしいと思うくらい楽しいツアーだった。

そして旅先で出会った、農的生活を送りながら得意なことや好きなことを活かした仕事をする人たちも、みんな魅力的だった。田舎暮らしは、ちっとものんびりしていない。思い通りにならない自然を相手に頭も体も目いっぱい使って、手間を惜しまず誠実に、丁寧に暮らしと向き合うしかない。やってみなけりゃわからない大変なことがたくさんありそう。でもそんな生き方を選択した人たちの姿は、まぶしくてかっこよかった。自分の手の届く範囲で何かをするということはとても納得ができて気持ち良いものだし、そのスッキリとした感じが外見にも表れていた。つつましくも力強い、こんな小さな暮らしがどんどん繋がって、いい出会いがもっと広がればいいなと思う。

今回尋ねた志賀郷町では、コ宝ネットという移住者と地元の人で構成しているチームがあって、移住者と地元住民の積極的な交流を図っているそうだ。これから移住先を見つけたい人たちにも相談しやすい雰囲気がある。空き家を探している人、有機農業をやってみたい人たちは増えているのに受け入れ体制が整わない地域も多いと聞くけれど、ここ志賀郷の取り組みは、とても参考になるのじゃないかと思う。やっぱり人、です。

 

スコップアンドホーさん、ツアーをご一緒していただいたみなさま、旅で出会ったみなみなさま、本当にありがとうございました!