2013年6月24 の記事一覧

魅惑の電車とピアニスト

 

びわ湖ホールにロシアのピアニスト、ヴァレリー・アファナシエフの公演を聴きに行った。

京都からは京阪線→京津(けいしん)線→石山坂本線と2回ほど乗り換えて電車で一時間くらい。もちろん車ならもっと早い。だけどこの京津線の電車旅がよかった。地下鉄だったのが山間を走り出し、味のある苔生した煉瓦のトンネルを抜け、いつしか路面電車になってカーブを斬りながら街をくねくねと走る。短い時間にいろいろな風景が楽しめて「劇場路線」と言われるのも納得。渋い街並みを水色の車体に黄色の線が入った軽快な色合いが走っていくのもいい。特に鉄道趣味はないのだけれど、これにはまた乗りに来たい。と思えてしまう。

最寄りの石場駅に到着。びわ湖ホールは湖岸の公園に沿って建っているので、ロビーから琵琶湖が一望できて気持ちがいい。外にでて散歩もできる。

ほとんど海です

 

今回の演目のメインは「展覧会の絵」。亡くなった友人の絵の展覧会で感じた10枚の絵のイメージと、その絵の間を歩く様子を表した前奏曲の繰り返しで構成される、ムソグルスキーの代表曲だ。一曲の中に10枚の絵が表現されているのだから、ただでさえ多様な要素が詰まっていて手強い曲。さらにアファナシエフは、これを自ら戯曲にして自演する。鋭く反骨心に満ちた科白を言い終わったかと思うと、おもむろにピアノに向かって変幻自在で立体的な音色が次から次へと繰り出す。一人芝居→演奏→一人芝居→演奏・・・のサンドイッチ。一瞬も飽きることなく舞台に集中して、気づいたら演奏が終わっていた。

 

笑うと可愛いのです

 

正直言って通しでピアノの演奏だけ聴いてみたいとも思うし、この演出があまり好きではない人もいると思う。でも面白かったし、新しかった。シャイでコワモテで、いかにも気難しい芸術家のようだけれど予想を裏切ってお芝居は派手だし、演じ終わるとくしゃっと笑い、アフタートークも1時間以上。最後まで意外性のある舞台でした。年相応の分別とか理解とか洗練とか、にじみ出てくるものとは別として、そういうものと自分は関係なく、やりたいからやっていて、自由への道を模索する感じ。フレッシュで、魅力的だった。