2012年9月4 の記事一覧

北鎌倉の夏

 

舟あそびさんの紹介で「デンマーク工芸10人と中野和馬展」を観に、北鎌倉古民家ミュージアムを訪ねた。北鎌倉の駅を降りてすぐ、古都の風情を感じる円覚寺門前を通り過ぎると、この周辺の落ち着いた景色にしっくりとなじむ古民家があらわれる。鉄のシャンデリアや、格調高い家具などが品よく配置され、展示されたタペストリーや陶磁器もとても美しく映え、展示されている作品もさることながら、その空間がどれだけ重要か教えてくれる美術館だった。

 

作品はどれも素晴らしく個性的で、美しくて、面白いものばかり。アーティスティックなデンマーク工芸の中で、今回唯一の日本人、中野和馬さんの絵画のような躍動感に満ちた陶芸作品も異彩を放っていて惹きつけられた。そして、ひときわ可愛い!!これ全部欲しい!!!と気持ちが泡立って落ち着かなくなるほど素敵なキースティン・スロッツ (Kirsten Sloth) さんという陶芸家の作品に出会ったのは、今回の大きな収穫。どれもこれも、可愛らしく端正で、繊細で、素朴さや重厚さもあり、眺めても眺めても楽しく、嬉しくなっていく・・・

 

今回の主催者、工藝サロン梓の田中政子さんが、デンマークの陶芸事情について訳してくださった資料のこんな一文に目がとまった。

 

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少数の若い作家たちは、すでに自分の工房で優れた功績を残し、広く一般社会にも活力を与える存在になっています。彼らは特定の形式に縛られることを嫌う傾向があり、世界中の伝統工芸から示唆を得ながら、彼らが表現したい理念に沿って素材と技法を選んで自由な制作活動を行っているのです。

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社会に閉塞感があるのは、日本だけではない、デンマークもそう。でも、どうもデンマークのほうがずっと元気がある気がします、と田中さんはおっしゃっていた。個人の自由な感性を大切にする土壌があるから?自分の表現に強い誇りを持って突き進む力があり、かつ縛られることを嫌う、周囲もそれを許す寛大さがあるのだろう。作品を観る側の問題なような気もする。受け止めるほうのアンテナが鈍っていると、どんなにいい作品を作ろうとしても作り手だって元気はなくなる。本当にいいものをいい!と感じ取れる力を、鈍らせたくないと思う。

 

※「デンマーク工芸10人と中野和馬展」は、明日9月5日(水)まで。今後「デンマーク工芸10人展」のみ、以下で巡回展の予定です。

2012年9月21日(金)〜10月2日(火) 「ガレリア表参道(長野市)」長野市東後町21 グランドハイツ表参道弐番館 TEL 026-217-7660

2013年4月13日(土)〜21(日) しいのき迎賓館ギャラリーA,B (石川県金沢市) 問い合わせ先:ギャラリー舟あそび 076-882-3960