2014年4月21 の記事一覧

こどもと暮らす家づくり

 

彩工房 暮らしと住まいのセミナー」も回を重ね、先週末13日に行われた第5回は、いよいよ家づくりがテーマ。チルチンびと編集長・山下武秀氏と建築家・松本直子さんを恵文社一乗寺店COTTAGEさんに迎えて、「子育て」と「家づくり」についてのお話をしていただきました。

 

午前の部は、20年近くに渡り日本各地での取材を通してさまざまな人、家族に出会い、その暮らし方や地域のありかたを見つめてきた山下編集長のお話。国産材と自然素材の家づくりを選択した彼らに共通するのは、大量消費社会とはある程度距離を置き、精神的な豊かさを求めて、ていねいで自分たちらしい暮らし方を見つけているところ。衣食住の根本的なところをきちんと理解していて、自分や家族はもちろん、ご近所や地域、環境にもやさしい。病気や怪我などのリスクも、赤ちゃんのうちから体で覚えて免疫をつけ、五感を鍛えられるような家や環境で子どもたちを育てている。どう暮らしたいかがわかっていると、住む場所も、家も、食べるもの着るものもおのずと決まる。国産材を使って、大工・左官・建具職人の技術で家を建てることは、地域の経済と文化を育てることでもある。

これから日本の各地で、信頼のおける工務店が担う役割はとても大きいというエールを受け、その山下さんと『チルチンびと』を通じて長く活動を共にしてきた彩工房の森本さんから、京都の風土を生かした家づくりについてお話があった。

 

たま木亭さんの美味しいパンでランチを楽しんでいただいた後、午後は豊富な設計事例と、ご自身の3人の子育て経験をもとにした松本さんの家づくりのお話。家族のコミュニケーションが子どもたちの成長とともにどう変化するか、子供たちの心理や習性を本当によく知っておられ、それぞれの家族の歩みに合わせて階段や窓や空きスペースなどを使った楽しい仕掛けをいろいろと編み出されている。都会にありがちな、狭い土地に高い建物を作った場合でも、自然光や風、植物を上手に取り入れた心地よい家づくりが可能であることも示してくれた。たくさんの事例を使ったわかりやすく、具体的で実践的な松本さんのお話に、会場の熱心にメモを取られている方も多かった。

こどもにやさしい家づくりを真剣に考えていくことは、細やかな配慮と工夫を重ねることで、それはすべての年代の人や環境に優しいということでもある。生活文化を育てて、地域経済を循環させ発達させることにも繋がる。昔は当たり前だったそんな考え方も、いまは強く意識して継承していかないと途絶えてしまう。あらゆる地域で多くの人にこんな話を聞いてほしいと思った。

 

回を重ねるごとに参加者の方へ楽しんでもらう工夫を進化させている彩工房さんだけれど、今回はお子さん連れの方々にもゆっくり聞いていただけるようにと保育士さんをお呼びし、恵文社コテージさんのご協力で庭をお借りして野外保育所を設営されていた。参加者の方々親子ともども充実した時間が過ごせたと喜んでいただけて、これはほんとうに素晴らしいアイデアだった。

今回のイベントの様子は次号『チルチンびと 80号』(6月11日発売予定)に掲載されます。また、現在発売中の79号では「子育てのための家づくり」について、子どもが楽しく育つ家の事例、住まいの中の危険、温熱環境、メディア、おもちゃ、食育などさまざまな観点から特集しています。子育てに特化した別冊27,33,29号の『チルチンびとkids』もぜひご覧ください。