2013年9月12 の記事一覧

広大なる地所

『チルチンびと』77号〈特集・庭仕事のある家〉

 

…… 私は庭の樹木の下枝はどんどん切ってしまう。従って、私の家の庭は、一見して、棒状のものが突っ立っているという趣を呈している。なぜそうするかというと、そうすれば何本もの樹木を植えられるということが第一の理由なのであるけれど、私の家の地所は、天空に向っては無限に私の地所だと思うからである。もしこれを月面にまで延長するとすれば、実に広大なる地所になるといわざるを得ない。……(男性自身シリーズ「山毛欅の木」山口瞳)

雑木林の庭が好きだった山口さんは、エッセイで、こう書いた。これを読んでしばらくの間、実際に、あるいは雑誌で、庭を見ると、それが天まで伸びているような気がして、困ったものだ。地所というコトバがあるなら、それは天所、空所、宙所とでもいうのだろうか。私の気分もまた、楽しく、のびのびとしてくるのだった。

 


『チルチンびと』77号〈特集・庭仕事のある家〉は、発売中です。