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没後 50年『藤田嗣治』展

没後 50年『藤田嗣治』展

没後 50年『藤田嗣治』展

 

『藤田嗣治  本のしごと』展が、始まった。(目黒区美術館、6月10日まで)

「文字を装う絵の世界」というサブタイトルがついている。展覧会で観る画とは違う、出版物の小さな世界で出会う画には、また別のたのしさの発見がある。
横光利一の新聞連載小説『旅愁」の挿画がある。いろいろな単行本のしごとがある。雑誌のしごとがある。『婦人公論』の1947年新年号の表紙を、女の横顔が、飾っている。1947年 は、日本国憲法が施行された年である。当時の『婦人公論』編集長は、芦原英了氏だったという解説もついている。芦原氏は、バレエの評論家でもあった。
銅版画あり、木版画あり、フランスの出版物あり。うっかりしてサブタイトルを「文学を装う絵の世界」と、読み違えてしまった。

 


文学散歩・鈴木信太郎記念館

文学散歩・鈴木信太郎記念館

文学散歩・鈴木信太郎記念館

文学散歩・鈴木信太郎記念館

文学散歩・鈴木信太郎記念館

 

〈 先月末、小さいけれど、本好きにはたまらない文学館がひっそりと開館した。鈴木信太郎記念館(運営・東京都豊島区)。鈴木は東大で仏文学を講じ、渡辺一夫、小林秀雄、三好達治らを育てた。〉という書き出しの文章が、『東京新聞』4月9日夕刊「大波小波」欄に載った。それは、こんなふうに続いている。 

〈 メインは昭和三(一九二八)年製アールデコ風鉄筋コンクリ造の書斎書庫。鈴木自らデザインしたステンドグラス、資料を四方八方に広げられる特製大机。飴色の本棚にひしめく革製金箔押しの洋書…。気絶するほど美しい書斎である。〉

「本好きの新たな聖地」というタイトルだった。これを読んで、行ってみたいと思わない人は、いないだろう。
行ってきました。

 


貝人たち

『ニッポン貝人列伝 時代をつくった貝コレクション』展

『ニッポン貝人列伝 時代をつくった貝コレクション』展

 

『ニッポン貝人列伝 時代をつくった貝コレクション』展(LIXILギャラリー。5月26日まで)に行く。地下鉄・京橋駅から少し歩いたところにあるが、このあたり、すっかり変わってしまったことに驚く。

貝は、貝殻を持つ軟体動物であること。そのすみかは、川、海、田、畑、山林…… と、高山から深海まで。適応能力のある生き物であることなどを識る。
貝人たちの中に、櫻井欽一さんとそのコレクションが、老舗の鳥すき屋の主人にして鉱物学博士で、貝類コレクター…… と、紹介されている。
この鳥料理屋は神田の「ぼたん」で、行ったことがある。おいしかった鳥鍋を思い出した。貝人は鳥人でもあったのだ。

 


春は「猫」展 ブーム

浮世絵  ねこの世界展

浮世絵  ねこの世界展

 

『浮世絵  ねこの世界展』が、始まった。(八王子市夢美術館、5月13日まで)
国芳、広重、国貞、豊国、英泉…… といった浮世絵師たちが描いた猫たちが、会場のあちらこちらに顔をのぞかせている。
そういえば、静岡市美術館でも『いつだって猫展』(5月20日まで)が、始まった。いやいや、『猫たち  猪熊弦一郎展』も、いま、ひらかれている。(4月18日まで。Bunkamura  ザ・ミュージアム)。

叱られて目をつぶる猫春隣 久保田万太郎

という句が、好きだ。
春は、猫の季節。猫好きの方の季節。

 


ルドンと大きな花束

『ルドン』展

 

友人が定年を迎えた。3月最後の日。彼には不釣り合いの、後輩から贈られた大きな花束を抱えて電車に乗った。すると、前の席に座っていた若い男が、立ち上がり「お疲れさまでした」と言って、席を譲ってくれたという。

『ルドン』展(三菱一号館美術館で、5月20日まで)に行く。東京駅から美術館へ向かう途中、たくさんの、いかにも新入社員という感じの男女にすれ違った。

会場でルドンの大きな花束を見たときに、席を譲られた友人の話を思い出した。あれは、いい話だった。

 


博物館は満開です

『博物館でお花見を』東京国立博物館

 

エア花見、インドア花見が、流行っていると、ニュースで伝えていた。花は楽しみたい。しかし、騒々しさはゴメンというのだろうか。ならば、「トーハクで叶う贅沢な春のお花見」に行ってみよう。(『博物館でお花見を』東京国立博物館、4月8日まで)

屏風、襖、陶磁器、浮世絵、衣装……などに描かれた桜が、満開だ。日本人の桜好きが、よくわかる。なにしろ、いまも、4月8日は、桜花賞ですよ。なにを狙いますか? というメールがきてるんですから。

 


角田侑右弐×星信郎2人展へのお誘い

角田侑右弐×星信郎2人展

この“ 広場 ”のコラム、「私のセツ物語」が、好評なのは、卒業生の方々の文と絵の楽しさによるものだけれど、それに加えて、星信郎先生のコメントに負うところが大きい。よく 、あんなことを覚えているなあ、と書かれた本人が驚くくらい、生徒一人ひとりのエピソードを、愛情をこめてコメントする。
その星先生と角田侑右弐さんの2人展が、開かれる。星先生にうかがうと、やはりいつものように、やさしく控えめに、こう語るのだ。
「2人展は、角田くんがメインです。彼のアトリエは、いつも、外。廃校舎とか火の見やぐらなどに、直接向き合って描いています。モチーフと作家のやりとりが見えて、彼の絵は息を潜めた生き物のようです。角田くんは、長身。いつも、ゆったり、のんびり。そして、親切。毎年やっている藤野での写生会も、彼の企画とお世話によるものですよ」


………
角田侑右弐 / 星信郎   『山の暮らし  風の暮らし』展 は、4月3日-4月8日。成城学園  カフェ ギャラリー  Quo  vadis  で。

「私のセツ物語」は、コチラからごらんいただけます。

 


神保町列伝 ー さよなら「きよし」

きよし

きよし

 

神保町のちょっと路地を入ったところ。日本料理「きよし」に、貼り紙。

3月30日(金)にて
閉店します
長い間  ありがとう
ございました。
お客様へ      店主

この間、「いもや」の閉店をお知らせしたばかり、だというのに。3月は、別れの時だといっても、つづきすぎる。少し離れた通りは、花見の客で賑わっている、というのに。

ゆく春や箸ですくひし酒の塵       久保田万太郎

あの、ステーキのような、鮭の塩焼き、わすれませぬ。

 


神保町列伝 ー さよなら「いもや」

いもや

いもや

まだ、11時過ぎ。お昼には間があるというのに、水道橋から神保町へ向かう通りの右側の、この行列はなんだ。右は天丼「いもや」から始まって路地を折れ曲がって約40人。年齢層もさまざま。左の列は「ランチ焼肉食べ放題  950円」の店からつづいて約80人。若者、学生風がほとんどだ。
いもやのガラス戸に貼り紙がある。

閉店のご挨拶
“ いもや  ” は昭和34年来の約60年に亘って、皆様にご愛顧ただきましたが、3月31日を持ちまして閉店することになりました。
これまでお客様には沢山のご来店やご支援を頂き心より感謝申し上げます。本当に長い間ありがとうございました。皆さまのご多幸をお祈り申し上げます。  いもや  店主

その横に
31日(土)19時まで
の文字。哀し。


和菓子の恩

金沢のお菓子

ラジオを聴いていたら、卒業式シーズンの話題になっていて、あおげばとうとし  わが師の恩  が流れた。その歌について語る人の発音が、どうしても、和菓子の恩、と聞こえてしまった。
金沢のお菓子を、またいただいた。千草ときんつばである。森八と中田屋というお店の名前も、食べ心地のよさも、すっかり覚えてしまった。

『加賀金沢  故郷を辞す』(室生犀星・講談社文芸文庫)に、
雨の降る日は植木屋も休んで来ないし、どこの友人にも知らしてないから、終日客なく振り込められる感じが深い。炉に茶を煮て金沢の菓子を賞味するのもこういう時であるが、菓子は昔から製造が老舗に伝統されていて、材料の正真なことは無比であろう。…… と、書かれている。

二つとも賞味した。ごちそうさまでした。