山荘に時の流れる

『日本の美邸』8号「別荘」

 

近日発売『日本の美邸』8号の特集は「別荘」。
そのトップを飾るのは、「時の過ぎゆく中で」と題した建築家・益子義弘さんの文章と、ある別荘の写真。以前、益子さんが設計した明野の山荘を、再び訪ねるという趣向である。

〈……再訪は15年ぶりになる。夏の光まぶしい日になった。道筋をたどってその場所に向かう。遠くに記憶にある姿が見えた。正直に言おう、遠く稲田越しに見る建ち姿をひとつの風景として、いいなと思った。それは自作という関わりを超え、ただ客体としてそこにある姿としてである。佇まいを稲田越しに見ながら、しばらく設計の時のことを思い返す。その頃ぼくは設計の小論に「風景を解き、風景に返す」という一文を書いている。〉
〈浮足立つバブル経済の波が国土の各所を荒らしているときで、往々にして建築は環境を蝕む側に批評され、そのことに関わる自分たちの立ち位置を悩み考えていたときだった。人がいて順当な自然。里山を背にする集落が自然なように、環境を荒らすものでない建築の素朴な存在について、そのあり方の思いを巡らせていた。それがこの山荘の建ち方にも重なっている。……〉

山荘。周辺の風景。そこに住む人。変わったこと、変わらないこと。それは、一つの物語である。

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『日本の美邸』8号(風土社刊)は、12月2日発売です。お楽しみに。