新連載「活字ここにあり」

中村活字

東京銀座、松屋の裏手といっていいのか、なにか懐かしいような横丁に「中村活字」はある。50年前、成瀬巳喜男監督の映画『秋立ちぬ』に、お店が登場したという。いま、映画を見ても、そのときとまったく変わっていませんから、と社長の中村明久さんは、言った。創業100年余、ずっと同じ場所で仕事を続けているのである。

作業場に案内された。たくさんの活字が棚に並んでいる。そのネズミ色の光を見たとき、胸が詰まった。かつては、原稿を見ながら、一字一字活字を拾い、組み、インテルという金属板で字間を調整し…… と、おそるべき手間で、雑誌も本も、つくられてきたのである。胸が詰まったのは、懐かしさではなく、なにかこう申し訳ないような気持ちだった。

 

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活版、活字を守り続けてきた「中村活字」の歴史をこの “ 広場 ”  の「話の名店街」で、ご紹介しています。ぜひ、ごらんください。

なお、『週刊朝日』来週発売号にも中村さんは登場するという。