沈黙の秋

沈黙の秋

 

新聞を開いたら「古民家除染できず/豊かな里山暮らし奪われた/福島のレイチェル・カーソン/境野米子さんの告発/築170年かやぶきホットスポットに」という見出しが、目にとまった。(『東京新聞』10月9日) 境野さんは『チルチンびと』73号にも、原発事故後、一変した、福島暮らしを描いた。かやぶき屋根の古民家に住む。その、かやの汚染については、この新聞記事でも、こんなふうに、ふれている。

—–「立派なかやぶきですね」と褒められるたびに境野さんは「これが困りものなの」と話しだす。—- 事故後、境野さんは線量計を購入した。周りの地表面が毎時一・二~一・五マイクロシーベルトに対し、カヤ屋根は放射性物質が吸着しやすく二~三マイクロシーベルトと倍近い。庭の木を切ると線量が少し下がったが、現在でも囲炉裏近くや居間は〇・四マイクロシーベルト前後あり、トタン屋根の台所の線量は低い。「かやぶきがホットスポットなんです」—-境野さんは、困り果てて言う。「中間貯蔵施設ができないと、屋根替えもできない。自然に近い暮らしをしてきた人ほど打撃は大きい。うちの暮らしの魅力も九割減です」——

この記事からも、静かな悲しみと怒りが聞こえてきた。