続・ぜいたくな過去

荻窪アンティークマップ

粗末なサッシのガラス戸を通して中をのぞいても、ごたごたとした道具の形があいまいに見えるだけ、店の中の照明にも無頓着といったふうで道ゆく人に商売気をつたえようとするけはいがない。―というのは、前にもご紹介した、村松友視『時代屋の女房』の一節だ。

商売気をつたえようとするけはいがない―ウーン、これはたしかに、古道具屋さんに共通のカオのように思われる。あれは、なぜだろう。

吉祥寺は、ちょっとハデで、社交的な長女。荻窪は、しっかりものの長男。その間の西荻窪は、3人きょうだいの末っ子で、いちばんひかえめな存在だ。ここにアンティークショップがつぎつぎに育ったのは、そんなに不思議なことではない。そういう土壌があったのだ。

ひかえめに、ぜいたくな、過去を、売る。『チルチンびと』72号、特集「古き美を愛おしむ暮らし」の“西荻窪アンティーク散歩”でぜひ、初夏の小さな旅を。