五月五日

粽

この時期になると、きまって流れる『背くらべ』という歌が好きだ、と作家の山口瞳さんは、エッセイに書いた。
(どうか、歌を思い出していただきたい)
柱のきずは、という出だしが、意表を突いて、いい。おととしの、というのが、懐旧の情があって、いい。粽(ちまき)たべたべ、というあたりに、お兄さんのお人よしという人柄が出ていて、いい。羽織の紐のたけ、というのが、具体的で、かつ、誇張があって、いい。— というのである。
そして、この歌は、文章の規範である。意表を突く、具体的、誇張、快い感傷。すべからく、文章は、こうありたい。— というのである。
毎年、五月五日になると、私は、この歌を聞き、この山口さんのエッセイを思い出す。そして、山口さんの文章こそ、意表を突き、具体的、誇張、快い感傷がある。ブログの文章も、そうでありたい、と思うのだ。
ここに付ける写真を粽にしたいと、あちこち探した。柏餅に比べると意外に見かけない。うちの近くの和菓子屋にあった。三本束、1260円だった。