続・サヨナラ ぬりえ美術館

ぬりえ美術館

 
ぬりえ作家・蔦谷きいちさんの話、つづきます。

〈……  私、自信があったのは、顔だけど、だれがみても、可愛いイヤミのない顔。結局、顔がキメテでしたかね。私の描くような顔の感じを出せる人が他にいなかったんじゃないかな。私の絵のは、目が大きく見えたんですよ。自分でいうのはおかしいけど、キレイな目を描いて、それで大きく見えたんですよ。それでも、昔の絵を見ると、あんまり大きくないんですよ。足が太いのは、バランスからきたんですよ。昔のは、もの凄く太いですね。お人形さんにしても。それも、時代の要求で、足も、ぜんぜん細くなりました。背も高くなってます。コツって ー  ぬりえじゃあなく、自分では一つの独立した絵じゃないかって、思う。それを、ただ、シロクロで描いてあるから、コドモがぬるという ー それを、ぬらせようと思って描いたこと、ないですねえ。
  振り返ってみるとね、あー、自分のやってきたことが、それほど価値のないことじゃなかった、よかったんだなあと、いま思うんですね。もっといい絵描きになりたかったし。たしかにねえ、自分自身、卑下したこともありましたけれど。周囲の人たちだって、絵描きらしい絵描きじゃないという、目だったようで……でも、ひとの気持ちの中に、少しでも残っていてくれれば……なにか、救われますねえ。〉