小笠原のコーヒーノキ

小笠原からの手紙

 

秋。コーヒーのおいしい季節になってきた。
『チルチンびと』の連載コラム「小笠原からの手紙」は、毎回、独特の島の話題を書いてたのしいが、今月は島の コーピーノキの話。こんなふうに。
〈…… 小笠原は明治初期に日本の領有として認められ、明治政府による開拓が始まった。コーヒーは、当時の内務省勧農局が有用植物として選定した数少ない作物の一つであり、国内初の栽培が始まったという。この事業にかける資金や。導入規模の記録からみても、コーヒー栽培は国家の威信をかけた挑戦であったともいえるだろう。〉
ところが、収穫に至るまでの年月の長さや、それまでの苦難などから、この事業は殖産に値しないと縮小。六万本あったコーヒーノキの苗木のうち約九千本が島民に払い下げられた。そのコーヒーノキを、農園の片隅に植えた人がいた。そのキは、戦争を経て、戦後を過ごし、命を繋いできた。そして、いまも小笠原の地に存在する。この巡り合わせ。それを繋いできたひとびと。
小笠原とコーヒーノキの歴史は、一杯のコーヒーの中に、かなしくブレンドされて存在する。

……

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