貝原益軒の予防心得

貝原益軒『養生訓』(中公文庫)

 

外出は遠慮、となると、家で読書か。この時期に向いた本は貝原益軒『養生訓』(中公文庫)かな。本箱から引っ張り出して、読む。1712年の作といわれるこの著は、たくさんの項目があり、おもしろい。初めの方に「予防が大事」という項があった。これ、これ。こういう訓えです。

〈「聖人は未病を治す」というのは、病気がまだおこっていない時に、あらかじめ用心すれば病気にならないことである。…… 病気のない時に、あらかじめ養生をよくすれば病気はおこらず、目に見えない大きい幸福になる。孫子がいうのに「よく兵を用うる者は赫々の功なし」と。その意味は、兵を用いることの上手な人は、そとに見える手柄がないということだ。なぜなら、いくさのおこらぬさきに戦わずして勝つからである。また「古の善く勝つ者は勝ち易きに勝つ者なり」ともいう。養生の道もこのようにしなければならない。心のなかで、ただ一すじに心がけて病気のまだおこらないさきに、勝ちやすい欲に勝てば病気はおこらない。よい大将が戦わないで勝ちやすいものに勝つようなものだ。これが、上策である。……〉

おわかりかな。