『名作誕生』熱中症

名作誕生

サクラが散ったあと、いまの上野は修学旅行生の花ざかり。石畳みに腰をおろした生徒に、先生が話している。「いいね。今日も30℃近くになるという話だ。みんな、水分補給だけは忘れないように」。そこを通り越してしばらく行ったら、ベンチに座っている女生徒に「大丈夫?  水を飲まないと、また具合わるくなるよ」と、先生らしい人が、言う。「ハイ」と言うか声が聞こえた。

『名作誕生』(東京国立博物館 平成館で、5月27日まで)に向かっているのである。
「…… この展覧会では、名作が、あれこれの格闘や闘争を経て生まれたということをダイナミックに感じ、見た方に美術史家の気分になっていただきたいのです」と、佐藤康宏・東京大学教授が『朝日新聞』の「展覧会記念号外」で、語っている。雪舟、若冲、宗達、仏像……に熱中し、人混みを抜けて外へ出るとき、水分の不足に気づき、鶴屋吉信の喫茶室に行き、アイスコーヒー(378円)を飲み、人ごこち。