漱石山房の行く年

漱石山房記念館

 

作家の家を訪れるのは、なんとなくだけれど、年の暮がふさわしいように思われる。
東西線の早稲田駅をでて、穴八幡へお参りの人出を右手に見ながら、「漱石山房記念館」に向かった。入ってすぐに、再現された書斎がある。あまり広くないその書斎は、作品の中に、登場する。こんなふうに。
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十月早稲田に移る。伽藍のような書斎にただ一人、片附けた顔を頬杖で支えていると、三重吉が来て、鳥を御飼いなさいという。飼ってもいいと答えた。しかし念のためだから、何を飼うのかねと聞いたら、文鳥ですという返事であった。(文鳥『夢十夜 他二篇』 夏目漱石作・岩波文庫)
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行く年や猫うづくまる膝の上        漱石